竹笋生
「受験の勉強に学校のテストに、どっちかにして欲しいよね」
コウが不満そうな声を出して大きく伸びをした。そのまま俺の方へと頭を倒し、上目遣いに見つめてくる。一旦休憩にしようか。そういう意味を込めて額に軽くキスを落とした。
「テストの日、学校早く終わるし部活もないから二人でゆっくりしよう」
「いいの?次の日もテストあるのに」
「コウなら前日に追い込まなくても今回の範囲なら大丈夫そうかなって思ったんだけど?」
「えー、あんまり持ち上げられても困るよ。でもこの辺りは実際平気」
気温が定まらないこの季節は、夏のように暑い日もあれば春の初めのように涼しい日もある。今日はいつもよりだいぶ空気が冷たくて、久しぶりにカーディガンを着た。コウはその触り心地が好きらしく絶えずどこかに触れてくる。猫みたいな手つきが愛らしい。
目の前の方程式から視線を外して、擦り寄ってくる彼女の肩を抱いた。嬉しそうにふふっと声をこぼして笑いながら、珍しく自らさらに抱きついてくる彼女にもう一度口付けを落とした。
こんな時間が、いつまでも続けばいいのに。
竹笋生
(たけのこしょうず)筍が生えて来る
五月十六日〜五月二十日