牡丹華


「ゴールデンウィークなのにどこにも行けなくてごめんね」

「気にしなくていいよ。それに私だってほとんど毎日塾だから」


午後からはまた部活がある。コウも夕方から塾らしい。去年までは長期休みといえばみんな楽しみにしていたのに、今年は夏休みも冬休みも、そんなに浮かれてなんかいられないんだろう。俺は夏も冬もきっと部活漬けだから、その他の時間で今よりももっと勉強もしなきゃいけなくなる。今でさえ時間があまりないと思っているのに、これから先どうなるんだろう。

彼女にあまり負担はかけたくない。なんて言ったら、負担だなんて言うなときっと怒るだろうな。


「なんか不安そう」

「そう見える?」

「マイナスなこと考えてない?」

「どうかな」

「赤葦くんのその性格、慎重って言えば聞こえはいいけど、自分を追い詰めるのはダメだよ」

「肝に銘じるよ」


考えすぎてネガティブな方向へと進みがちな俺と、よく考えることでポジティブな思考へとシフトしていくコウ。やっぱり俺たちの相性はいい。口には出さないけど、それはコウもきっと思ってることだろう。やっぱり好きだな。そう思える彼女と、これからもしっかり向き合っていきたい。


「大切にする」

「…………なにを?」

「コウを」

「……い、いきなりどうしたの?」


戸惑いながらも小さな声で「ありがとう」と呟いたコウの頬は、牡丹の花のように綺麗なピンク色に染まっていた。

牡丹華

(ぼたんはなさく)
牡丹の花が咲く
四月三十日〜五月四日

  

 
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