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そんな事件がキッカケで俺たちは更に仲を深められたんだと思う。

俺はそれからよくアリババの様子を見るようになったからかもしれない。

一瞬だけ見せたアイツの弱さを見てアイツも俺と同じなんだって理解したからだ。

最初は気味悪がってたアリババだけどアイツも満更でもなさそうだったしな

そう言ってカシムはニコッと笑った。

だけど笑顔はすぐに無くなり、言った。

それからスラムに疫病が流行っている噂が流れた頃だった・・・アリババの所に一人の男が現れた。

「アンタのよく知る人物だ。シンドリアの王様」

そう言ってカシムはシンドバットを指さした。

「・・・・俺の良く知る人物?」

その発言に首を傾げるシンドバットだったが次の言葉い驚いた。

「ラシッド・サルージャ・・・。」

「ッ!!」

驚きに満ちたシンドバットの顔を見てカシムはニヤリと笑った。

「まだガキの俺たちじゃその名を聞いて誰だか分かりようはなかった・・・そりゃそうだ。ただのスラムの人間が国王の名前を知る筈がない」

カシムの言った国王と言う言葉にアラジンとモルジアナは目を見開いた。

驚きの声を上げる前にシンドバットが最初に口を開いたのであった。

「ちょっと、持ってくれ。どうして前バルバット王が?」

理解できていないシンドバットの姿にカシムは驚く事もなくタバコに火を付けて吸った。

「バルバット王はアリババの前に現れてたった一言、言った。「お前は私の息子だ」と」

その発言に回りの物は目を見開いた。

カシムは話を続けた。

その頃の王の息子たち・・・アブマド、サブマドの事だが、奴らは当時はとんでもない二人でな。

王は教育権を彼らの母親に与えたことを心の底から悔やんだそうだ。

そしてふとある事を思い出した。

昔、自分と恋仲にあった召使の女に子供はいなかっただろうかと・・・。

「それが・・・。」

シンドバットの神妙な声にカシムは頷いて見せた。

「そう。それがアリババ・・・否、アリババ・サルージャだったって話さ。」

そして王はその息子を王に育て上げようと目論んでいたのであった。

もちろんそれを聞いた俺らは反対した。

スラムを人とも思ってない奴らが住む宮殿にお前が行ってもツライ思いをするだけだって。

だけどアイツはすでに王宮に行く事を決めていたんだ。

フッとそこでカシムは笑った。

「アイツは知ってたんだろうな・・・俺の妹のマリアムが疫病になにかけているのを」

アイツが王に返事を返した後に王宮からの医師団が現れて、あっという間に疫病は沈静化した。

俺は察したよ、アイツは俺たちのために犠牲になったんだって。

だから俺はその日の夜に言ったんだ。




「どうして俺たちのためにお前が犠牲になろうとする?」

そう口火を切った。

アイツは以外そうな顔をして俺を見たよ。

『犠牲?』

「あぁ、そうさ。城にはスラム育ちのお前を蔑む奴らがいるんだ、得に時期王になるお前の兄はゴミを見る目でお前を見るに違いない。」

そう俺が言えばアイツは優しげに笑って言った。

『だから行くんだよ』

そうアイツは言った。

俺はそう言った意味が分からなかったから言ったんだ「どうして?」って

そしたらアイツどんな事言うかと思ったら。

胸張って堂々とこう言ったのさ

『そんな馬鹿どもに一発食らわすためさ!!』

ドーーーーーン

「はぁ?」

さすがのアイツの言動に慣れていた俺でもまさかのアイツの言葉に思わず呆気にとられたさ。

それでもアイツは俺を無視して話を続けた。

『俺は母さんが死んだから、働いて思ったわけよ。
どうしてこの国はこんんあに貧富の差があるわけよ?ってな
だって可笑しいだろう?小国とはいえ貿易の中心になっているこの国には私たちを養う金はあるはずだ。
だけどそれはないのはどうして?
それは独り占めしている奴がいるからさ。
それを許しているこの国は俺は許せなかった。
誰かこの状況を変えてくれる奴はいないかとずっと思っていた。
けどそれがどぉよ、状況は変わらず寧ろ悪化じゃね?
そう思っていた時にこの話があった。
そして気づいたんだよ。
「誰かじゃダメなんだ、それは自分なんだ」ってな』

そう言ったアイツの顔は今までよりも真っ直ぐで真剣でもう覚悟を決めたんだって思った。

アイツは昔から頑固だったから、一度決めたことは曲げない男だからさ。

『だから馬鹿共なぐってくるよ。』

でも根本的に天然って所があって思わず笑っちまったよ。

「お前ってやっぱすごい奴だな」

そう俺が言ったら驚いた顔をして、すぐにニィッと笑った言ったのさ。

『今頃気づいたのか?』

・・・・・・・・・・・・・・。

「『ブフッ!フフフ、アハハハハハ!!』」

笑いながら思ったよ。

俺はコイツのためになにかしようと。

コイツの理想のために俺も力を貸そうと。




そして次の日の朝。

アイツが王宮へと行く日がやってきて、俺たちは握手で分かれた。

「またな」

『あぁ、またな』

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