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そこでカシムは言葉を切って、笑った。

だけど顔は笑っているのに、その顔は悲しみに満ちていて不自然だとアラジンは思った。

そんなアラジンの心情を感じ取ったのか、カシムはアラジンを見てまた笑った。

「それから数日後の事さ・・・・。」



アリババの言葉で一旦は大人しくなったカシムであったが、まだ心の中ではその事が付いて回っていた。

だけどアリババに心配かけまいとカシムはその事を忘れるように毎日、必死に働いていた。

必死で働いて、働いて、働いていたらいろんな人がカシムに優しく接するようになった。

今までアリババが受けていた優しい笑みをカシムに向けてくれたのだ。

カシムは嬉しくなった。「アリババの言った通りだ」と思った。

それが嬉しくて、嬉しくて・・・それを誰よりも先に伝えたい人物の下へカシムは走って行った。

だけどそこにはカシムの拒絶する人物がいた。

「ッ!!(親父ッ!?)」

そこに居たのはカシムの父親がそこにいた。

そして彼の足元にはボロボロになったアリババの姿があった。

それを見て一瞬にしてカッと頭に血がのぼったカシムは父親に向かって走り出した。

「お前ぇええええええええええええええええええ!!」

近場に転がっていたナイフを手に持って父親に突っ込もうとした。

だけど・・・・。

「お前は親の俺に何を向けてんだぁ!!」

ドゴッ!!

子供のカシムがたとえナイフを持ったとしても、大の大人に勝てるのは到底無理な話であった。

殴られたカシムはそのまま吹っ飛んで、壁に叩きつけられた。

「グアッ!!」

そのまま近寄ってきた父親にカシムは何度も、何度も、何度も蹴られた。

「どうしてッ!お前らはッ!!そうッ!!昔からッ!!俺をッ!!馬鹿にするッ!!」

骨のきしむ音を聞きながら、カシムは激痛に悲鳴を上げた。

「グァアアアアアアアアア!!」

その叫び声にニィッと下劣な笑みを浮かべたカシムの父親は興奮した状態でカシムが持っていたナイフを持ってそして・・・・。

カシムに突きたてた。

バシッ!!

「グアッ!!」

だかど、痛みの声を上げたのはカシムではなく彼の父親だった。

クルクルとナイフが回転しながら宙を舞っているのをカシムは働かない頭でボーと見ていた。

そして落下していくナイフを空中で掴んだ手をカシムは見た。

「ア・・・・・アリババ」

そこにはアリババがカシムとカシムの父の間に立っていた。

さっきまで倒れていたにも関わらず、アリババは真っ直ぐにカシムの父親を見て、掴んだナイフをそのままカシムの父に付きつけた。

カシムはその姿を見て、何も言えなくなってしまった。

アリババの顔が今まで見たことのないくらい恐ろしい顔をしていたのだ。

これまで自分や仲間や母親に見せていたニコニコとしたほほ笑みじゃなくて、すべての表情が消えたその顔は逆にカシムを恐怖に陥れた。

『・・・・・消えろ。二度とカシムやマリアムに近づくな』

何時もやわらかな優しい声は今日はまるで凍えるように冷たく、鋭いものだった。

それを自分に対して言われている訳ではないのに、カシムはビクリと体が反応してしまった。

カシムは恐怖にガタガタと体が震えてしまった。

それを一心に受けていたカシムの父親も子供からあり得ないほどの殺気に震えあがった。

「バ・・・・・化け物ッ!!」

酒の酔いもあったのだろうか・・・カシムの父親はアリババに異常の恐怖心を持ってその場から逃げてった。

逃げるカシムの父の背中をボーと見ていたアリババは口を開いた。

『言っただろカシム・・・血なんて関係ないんだよ。』

そう言ってナイフを持つてをパッと離し、金属音が嫌に響いた。

そして振り返ることなく、アリババはカシムに背を向けながら言った。

『俺は・・・お前らのためなら簡単に人を殺せるんだ』

そういってハっと鼻で笑っているように聞こえたが、カシムにはその背中が誰よりも悲しんでいるように見えた。

『安心しろよカシム・・・汚いのはお前じゃない。俺「違うッ!!」

思わず、カシムはアリババの声を遮った。

それ以上言わしてはいけないと彼のどこか本能が告げていたからであった。

そんな言葉が返ってくるとは思ってなかったアリババはバッと振り返り驚いた顔をしてカシムを見た。

カシムはそんなアリババの目を見て、口を動かそうと奮闘してパクパクと音もなく何度か開けば閉じを繰り返してようやく言葉がでた。

「お前は汚くないッ!!汚れてなんかないじゃないか!!」

それを聞いたアリババはフッと苦笑いをしていった。

『見ただろう?さっきの出来事を・・・俺は「だから何だって言うんだ!!」

もうカシムは自分の意志では勝手に動く口を止める事は出来なかった。

「お前が昔から何かやる時は誰かの為だったッ!私利私欲のためにやった事なんて一度もないッ!!お前は誰よりも優しいんだ。アリババ!!」

ボロボロと流れる涙、それを唖然と見ていたアリババは数秒それを聞いて固まっていた。

「お前のどこが汚いんだ。お前は俺を守るためにやってくれたんだろ!!そんなお前を誰かが汚いなんて言ったらソイツを俺はぶっ飛ばしてやる!!」

『・・・・・・・・・・・・・ブハッ!!』

そう断言したカシムにアリババは驚いた顔をして、そして急に噴出した。

咄嗟に口を押えていたが、ブルブルと肩を震わせている姿は明らかに笑っていると分かった。

そんなアリババの態度に今度はカシムが唖然とする番だった。

そして今時分が言った恥ずかしい言葉に一瞬で赤面し、ズカズカとアリババに近寄って八つ当たりで殴った。

『痛いッ!!』

「うるせぇ!!テメェが何時までも笑っているからだ!!」

殴られて痛いと言いながらも未だにアリババの笑いは止まる事はなかった。

アリババが笑えば笑うほど、カシムの機嫌は急降下する。

それでもアリババは笑った。

だけどカシムはアリババを殴る事はなかったのである。

『アハハハハハハハハハ!!』













そしてアリババは泣きながら笑っていた。

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