22
シンドリア国の王、シンことシンドバットがこのバルバットに来たのは理由がある。
・・・・いや、別に葉っぱ一枚になる事が理由じゃなくて。
シンドバットの治める国、シンドリアとバルバッドの交易がつい先日にいきなり打ち切られたのだ。
それを知ったシンドバット王はバルバット王宮へと乗り込んだのであった。
「どういう事だ?王に会えないと言う事は・・・」
そうシンドバット王が現れたと言うのに、この国の王であるアブマドどころか弟のサブマドさえ顔を見せないのだ。
王が国の王の謁見を断るというのは一大事な行動である、これが引き金に戦争が起こっても仕方ないと言われてもおかしくない。
そんな行動だ。
それでも彼らの前にいるバルバッド王国軍右将軍バルカークは顔色一つ変えずに先ほどと同じことを言った。
「王達は本日、お加減がよろしくないのです・・・お引き取りください。」
その一点張りである。
シンドバットは彼を知っていた。
前バルバッド王が信頼を寄せる者の一人のこの男がまさか自分にそう言う日が来るとは思ってなかった。
シンドバッドは立ち上がって、バルカークに近づいた。
それを見たバルカークはクイッと眉を上げた。
「いいか、今すぐバルバッド王を呼んで来い。」
「・・・・・・・・・・。」
バルカークは何も言わない。
それどころか・・・。
ドンッ!!
他国の王を突き飛ばしたのだ。
それを後ろで見ていた二人の従者はすぐさま戦闘態勢に入った。
「シンドバッド王ッ!!・・・・貴様ッ」
そう言って攻撃を仕掛けようとした瞬間だった。
「やめろ」
シンドバットがその行動を止めるかのように腕を彼らの前に出した。
「俺たちは戦争しに来たんじゃない・・・帰るぞ」
そう言ってシンドバットはチラリとバルカークを見てその場を後にした。
従者が止める声を無視し彼はバルバット王宮を後にした。
「なぜ止めたのですか、シンッ!!」
シンドバットの傍にいた従者の一人であるジャファールは宿に帰ってそうそうそう叫んだ。
「これは明らかにバルバットとの国交にヒビが入る大問題なんですよ。」
そう興奮気味に話すジャファールをよそにシンドバッドはなんとも呑気で普通に部屋でくつろいでいる。
それが更に彼の怒りを煽る行動になっているのをシンドバットは知らないのであろう。
また叫ぼうとした彼の目の前にシンドバットはある者を突き出した。
「これを見ろ、ジャファール」
「・・・・・・・・なんですかこれ?」
それを見たジャファールは答えをシンドバッドに聞いた。
「紙だ」
「紙ですね」
シンドバットとマスルールの答えにずっこける。
「いや、それは見れば分かるんですが・・・」
そう言ったジャファールにシンドバットはその紙を開いた。
どうやら中に何やら書き込んでいるらしく、シンドバットはそれを熱心に読んでいた。
「これはバルカークが俺に渡したんだ」
その名前にジャファールは眉根を寄せた。
「何時です?」
「バルカークが俺を突き飛ばすときに俺に渡した。」
その言葉にジャファールを目を見張った。
そのような形で出すと言う事は・・・監視されていると言う事だ。
一体誰に・・・?
その答えが知りたくて、次のシンドバットの答えを待つ。
ガタっ
突然、シンドバットはその場に立ち上がった。
驚くジャファールとマスルールをよそに彼はそのまま部屋を出て行こうとする。
「どうしたんです?シン」
そう聞いたジャファールに紙を押し付けて、シンドバットはマスルールと一緒に部屋を出てった。
ジャファールは紙を見て、ハッとしてシンドバットを追いかけた。
最初に、このような形でしかお伝えできない事をお許しください。
シンドバット王がこの国に来た理由を知っております。
交易とそれと・・・この国の異変にお気づきになられてのでしょう。
それを前国王との縁とはいっても態々他国からのお越しに大変感謝しております。
なぜバルカークにこのような形で貴方様に手紙を送ったかと言いますと・・・。
大体の見当はついていると思います。
私たち二人は今、身動きが取れない状態なのです。
理由は詳しくは書けません・・・この問題をシンドリアに持ち込むのは大変心苦しいからであります。
まぁ、その話は置いといて…なぜバルバットの国が荒れたのかその事に際してお話しましょう。
ご安心ください、この騒動はすべて国全体で目論んだことなのです。
主にそう考えたのは国民だと思っています、なぜとあなたは仰られますでしょう。
ただ私たちは何としてでも呼び返さなければいけない者がおるのです・・・。
その者がこのバルバットの異変を収めてくれると私たち、そして国民は信じているのです。
その者を呼び戻すためなのです。
バルバット国王並びに副国王
アブマド・サルージャ サブマド・サルージャ
[*prev] [next#]