20





あの人は行ってしまった。

私たちを救ってくれたあの人、アリババさんがいないと知ったのは同じ元奴隷仲間から聞いた事だ。

私はそれを聞いた途端、あの人に追いつくために走った。

待って、待って、待って!!

私は貴方に伝えたい言葉があるのだから待って・・・。

『モルジアナ、今後の身の振り方は考えいるのか?』

「私は・・・。」

『?』

「私は・・・・・・・・・・・」

結局、私は自分の思いを伝えられずにアリババさんは旅立ってしまった。

だけど私は諦めきれなかった。

アリババさんの職場に聞いたら、バルバッドに向かったと聞いた。

バルバットは彼の…アリババさんの故郷らしい。

私もいつか故郷に帰らなくてはいけない。

これはゴルタスに言われたのもあるが、私も自分の故郷に帰りたいと思っている。
だけど・・・。

あの人は私の恩人だから

あの忌々しい鎖を断ち切ってくれた人だから・・・。

私は・・・・・・・。




「モルジアナ」

「モルジアナ」

もう聞く事はないと思ったあの人の声が聞こえる。

ハッと目を開ければ私の姿は小さい子供のままだ。

「モルジアナ」

またあの声が聞こえてハッと見れば、そこには領主サマの姿。

「・・・・・・・。」

一気に恐怖心が生まれ、私の足がガクガクと震える。

どうやら私の心も体と同じで幼くなったらしい。

涙が溢れてきて止まらない。

そんな私の顔を見て、領主サマは何時もと同じように満足げに笑う。

そして掲げられた剣に一気に何もできなくなる。

「ほら、言う事を聞け!」

やめて・・・。

「お前は僕の奴隷だ・・・・。」

やめて・・・。

「一生縛り続けてやる!」

やめてッ!!

いつの間にか何時もの姿に戻った私は走り出す。

何処まで走っても領主サマは私を追ってくる。

(いやだ、怖いッ!!誰か・・・・・)

誰か助けてッ!!

そう私が願った瞬間、私の目の前には光る鳥が横切った。

ハッとしてそれを目で追って行けば、そこに居る人に気付いた。

あの人は相変わらずの笑顔を向けて、私に手を差しだした。

私は無意識にその人へと足を進めた。

恐る恐ると近づいて、本物かどうか確かめようとした。

目から涙が流れて、それを見たあの人は笑った。

さっきの領主サマみたいな嫌な笑顔じゃなくて、まるで親が苦笑いするような表情だった。

『どうした?モルジアナ』

その声に笑顔に私の緊張は一気に解けたように。

私の涙は止まることなくポロポロと零れた。

『言ったじゃないかモルジアナ。お前を縛る恐怖心があるのなら・・・俺が守ってやるって』

あぁ、そうだ彼はそう言ってくれたのだ。

私は泣きながら何度もうなずく。

『何も怖い事なんてないだろう?…ほら』

そう言って彼は私の後ろを指差した。

そこにはきっと領主サマがいる、そう頭で理解しているはずなのに。

私は不思議と恐怖心はなく、後ろを振り返った。

「・・・・・・・・・・。」

そこは遠い記憶の彼方にある故郷の姿だった。

景色を懐かしんで見渡していると二つの人影の姿が・・・。

私は思わず足を進めようとするが、足が止まる。

それを見た彼は首を傾げた。

『どうした?モルジアナ、故郷に帰りたいんだろう』

そう言った彼に私は首を振った。

「私は・・・・・・・・・・・・」

たとえこれが夢だとしても、目の前の彼が本物じゃなくても私は伝えたかった。

まっすぐと彼を見て私は口を開いた。














「私は貴方と一緒に居たいんです・・・アリババさん。」

[*prev] [next#]






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -