19
「いや〜、旦那様!!今日もいい男前っぷりでございますなぁ!!」
『・・・・・・・。』
あれから三週間、アラジンは帰ってくる事はなかった。
これだけ待っても来ないのだから、きっと遠い所にでもいるんだろう。
・・・・・どうしようかなぁ。アラジンが此処に来るまで待つか。
まだ運送屋の社長に恩を返してないし、今まで通りの運び屋業でも続けるか。
そう思っていた俺に誰かが声をかけた。
「アリババ様、貴方様に会いたいと申している者がおりますが・・・。」
はて、俺に態々会いに来る人なんて知らない俺は首を傾げるが、このままでは仕方ないと思って返事をする。
『・・・・・分かった。』
その場で立ち上がって、この前のブドウ酒の旦那様が何か言っているが完全無視の方向で行こう。
ああいう人間が最も信用できないのだから…。
門の前に居たのは綺麗な真っ赤な髪の色だった。
『モルジアナ・・・。』
俺がその名前を呼べば彼女は真っ直ぐ俺を見た。
俺はニッコリと笑顔を浮かべた。
『鎖、取れてよかったな。元気か?』
そう聞けばモルジアナは顔をムスッとさせて「はい」と一言だけ答えた。
ん?何か怒らせることしただろうか・・・。
謎に思ったが、態々会いに来てくれた彼女をこのままここに立たせる訳もいかなく招き入れた。
『どう?最近の生活は?』
そう聞けばモルジアナはポツリポツリと喋ってくれた。
「新しい領主様はとてもいい人で、元奴隷達は身の振り方が決まるまで賃金を貰って働いています。」
そう聞いて俺は嬉しくなって笑った。
『そうか、それはいい事だ。』
モルジアナは俺の顔を見て、言葉をつづけた。
「奴隷達は貴方に感謝しています。たぶん・・・・私も」
『・・・・・・・・。』
「物心ついて以来、初めて…足首から枷が消えた時に・・・息を飲むような気持ちがこみ上げてきました。私も…感謝しているんだろうと思います。貴方と…あのご友人の少年に」
俺あグシャグシャとモルジアナの頭を撫でた。
モルジアナは固まっているが、俺は構わず頭を撫で続けた。
『モルジアナ、今後の身の振り方は考えいるのか?』
そう聞けばモルジアナはハッとした顔をして俺を見た。
「私は・・・・・・・・・」
『?』
何か思いつめた表情のモルジアナに俺は首を傾げた。
なんだ?
「私は・・・・・・・・・故郷に一度帰ろうと思います。ゴルタスに言われましたから」
『そうか。』
そう言って俺はまたモルジアナの頭を撫でた。
今度のモルジアナの顔は何とも言えない複雑そうな顔をしていた。
「本当にいいのか、アリババ」
『なんです?』
「お前、迷宮(ダンジョン)攻略したんだから、何もここで働かなくたって・・・。」
俺は今、運送屋に戻って社長にもう一回働かせてと頼んだのであった。
そしたらさっきの言葉をかけられたのである。
俺は首を横に振って答えた。
『俺は社長に命を助けても立ったんですから、こうするのは当たり前です・・・・あっ!なんならダンジョンのお宝がいいですか?』
そう言って懐から宝を出そうと思ったら社長は両手を突き出してブンブンと振った。
「俺は受け取らないぞ!それはお前が自分で取ってきた金だ。俺は貰う気はない。」
そう言った社長に俺は思わず笑ってしまう。
『俺、社長のそう言うところは尊敬します。』
そう言うと社長は照れ臭そうに笑った。
「あっ!そう言えばお前に伝える事があったんだ。」
そう言って社長は思い出し口を開く。
『なんです?』
社長は神妙そうな顔をして口を開いた。
「実は・・・・・・・・・・・・・。」
ガタっ!
「アリババ?」
社長が突然、立ち上がった俺に驚いているが俺はそんな事は構ってられない。
『その話、本当ですか?』
そう俺が聞けば、社長は悟ってくれたのか「あぁ」とすぐに答えてくれた。
『・・・・・・社長。』
「なんだ?」
『さっきの話、無かった事にしてもらえますか?』
そう俺が言えば、社長は驚いた表情をしたが二つ返事で了承をくれた。
『・・・・・・今まで、ありがとうございました。』
俺は深々と頭を下げた、この人には本当に感謝している。
俺が今間ここで生きているのはこの人のおかげなのだから。
バッ!!
頭を上げると同時に走り出した。
「アリババッ!!」
呼び止める声も何もかも全部無視して俺は走る。
市場に行って必要な物を買い込み、余った大量の金は新しい領主の人に渡しておいた。
彼ならこのお金を正しく使ってくれるだろう。
アラジンの言づけも頼んでおいた。
その後、市場に行って必要な物を買い集めた俺はそのまま馬車へと乗り込もうと手を伸ばそうとした時だった。
ヒョイッ
『ん?』
体が持ち上げられ、馬車に乗せられる。
俺は相手を見て目を見開いた。
『なんだ?お前も来るのか・・・・?』
相手が頷くのをみて俺はニィッと笑った。
『行くか。』
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