16
人であれざれない者…ジンは周りの人間を値踏みするように見て行った。
アラジンを見て、ペコリと頭を下げて挨拶をした後にアリババを見た。
「ッ!!なんと・・・」
そしてその目にアリババを見て彼は驚いたような顔をするが、すぐにニコリと笑った。
「これは、これは」
そう言って嬉しそうに、髭を撫でながらアリババをよく見ていた。
『?』
アリババが首を傾げる中、ジンはアリババにも頭を下げた。
「我が主よ、お久しぶりでございます。」
そう言って頭を下げたジンに周りはポカーンとした。
それはもちろん言われた本人でもあるアリババでもであった。
『久しぶりって・・・。』
会ったこともないっていうか、会ったらこんなインパクトの塊でしかないジンを見て忘れるわけがないと思いながらアリババは答えた。
その発言にジンは「あぁ。」と合点が言ったように一人で納得していた。
「申し訳ない、あなた様が知らない事でしたな・・・。」
そう言ってジンは嬉しそうに笑った。
アリババは頭を傾げるばかりであった。
それを見たジンは言った。
「主よ、また随分と可愛らしくなられておられる。」
そう言ったジンにアリババ反応して、ジンを恨めしく見つめた。
その視線を受けたジンはまたも嬉しそうに笑った。
アモンと名乗ったジンはアラジンと話している。
そんな姿を見たアリババは周りの金ぴかな財宝を持ち帰ろうとせっせと集めていた時であった。
ズドォオオオオン
巨大な地響きの音と共に、足元がグラリと揺れるのが分かった。
『ッ!!』
異変に気付いたアモンは何かを感じ取ったらしい。
「ぬ・・・誰かが道を閉じようとしている。」
そう言ったアモンは指先で魔法陣みたいなものを描き、アリババを見て言った。
「主よ、早くここから脱出いたせ。さもないともうすぐここは崩れ落ちるぞ!!」
そう言われたアリババはすぐさま行動に移った。
荷物を運んでいく、アラジンも急いでアリババを手伝った。
やっと準備が終わった時に、アモンが後ろを見て言った。
「どうした?お主らは帰らんと言うのか!!」
アモンの視線の先にはモルジアナと、領主サマとゴルタスの姿があった。
モルジアナは今までに教え込まれた行動に従って、領主を助けようと手を伸ばそうとした時であった。
ガバッ!!
モルジアナと領主サマの間にゴルタスが立ちはだかった。
驚いたモルジアナだったが、領主サマを助けようと言った。
「どいて、ゴルタス!!領主サマが・・・」
そう言ったモルジアナを見て、ゴルタスは自分の喉に手を当てた。
「こ・・・・・・・こんな男を外に出してはいけない」
そう言ったゴルタスにモルジアナは驚いた。
「ゴルタス、あなた喋れたの?」
二人の様子をアリババはただ静かに見ていた。
「お・・・おれも・・外へ出るべきではない・・・」
ゴルタスは領主サマの体を抱えた。
「モルジアナ…俺とお前は北と南と言えど・・・互いに少数部族の末裔・・・・だが俺は・・・一族の誇りを忘れ、奴僕に身をやつし、こんなバカの言いなり・・・人の命を・・・故郷(くに)に帰っても先祖に合わせる顔もない・・・。だがお前は違う。いつもギリギリの所でプライドを保っていた」
「・・・・・・・・・・・・。」
何も口にしない、モルジアナ。
それでもゴルタスは話を続けた。
「故郷(くに)に帰れ・・・モルジアナ。それがおれのさいごの・・・のぞみ」
そう言ってゴルタスは血だらけの体で、切っ先の無い剣を持ってモルジアナの鎖を壊した。
ガキィイインと音が響き、それを見ていたアリババは静かに言った。
『なぁ、アモン』
呼ばれたジンはすぐさまアリババに返事を返す。
「なんですか、主よ」
『お前、俺を主と呼ぶよな・・・。』
「いかにも」
『それなら今、俺の命令を聞いてくれるのか?』
そう聞かれたアモンはもちろんと言うばかりにアリババに頭を下げた。
アリババはそれを見て口を開いた。
『アモン、少しだけ時間を伸ばせ。』
そう言ったアリババにアモンが出す言葉を一つだけ。
「それを貴方が望むなら・・・。」
そうアモンが言った瞬間、アリババは地面を蹴った。
ゴルタスと領主の足場が崩れ落ちる。
ゴルタスはいずれ来るであろう衝撃に目をつむった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
だけどいつになってもその衝撃がこない。
謎に思ったゴルタスは目を開く。
なにやら自分の手が温かいと感じた彼は自分の手を見ようとした時だ。
「ッ!!・・・・おまえ」
『ふんぬっ!!』
ゴルタスの巨体を掴んでいたのはアリババであった。
明らかな体格差と言うのに、アリババはゴルタウスを両手で支えていた。
アリババはゴルタスと目があった瞬間に口を開いた。
『ふざけんなッ!!』
アリババの怒号にゴルタスは目を見開く。
『なにが先祖に見せる顔がないだ!!自殺する方が十分、恥さらしだこのやろう。』
「は、はなせ」
ゴルタスの言葉を無視してアリババは口を止める事はなかった。
『一生懸命に生きてなにが恥じなんだ!!お前はただ自分が生きるためにやってきただけだろう!
たしかに良い人生とは言えないけどな、自分のやってきた事から逃げて死ぬなんざ俺が決して許さない!!』
「・・・・・・・・俺はここから出ても生きる理由なんか・・・・ない。」
『知るかッ!!』
すかさずアリババは叫んだ。
『そんなの誰もが生まれてきてから持ってるもんじゃねぇんだよ。誰もがそれを模索しながら生きてんだ!!
人生の最後に自分はこの為に生きていたんだって思いながら死ねたら万々歳だよ。
それが人生ってもんだ!それが生きるってもんだ!
百人の命奪ってきたなら、百一人の命救って死んで行け!!
それがテメェのこれからの仕事だろうが!!』
ゴルタスは信じられない目でアリババを見つめた。
自分は今まで、大勢の人間を領主の命令と言えど殺してきた。
そんな俺が生きていても誰も喜ばないし、望まない。
だけどゴルタスの目の前の少年は違った。
彼はゴルタスに生きろと行った。
逃げずにこれから先、罪と向かい合って生きろと・・・。
そう言われたゴルタスは決心が弛む。
だが、ゴルタスはどうしても殺さなければならない男がいる事を思い出した。
そう言ってアリババはゴルタスの体を引き上げようと腕に力を込めた。
「やめろ・・・この男を外に出しては・・・」
『ソイツも俺は殺す気はないね・・・。』
そう言うアリババにゴルタスは信じられないと言う目でアリババを見た。
アリババはニヤッとアクドイ笑みを浮かべ言った。
『死なんて簡単に俺は終わらす気はない。』
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