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ニッと笑ったアリババはそのままモルジアナを立たせた。

「うわっ!!」

グイッとモルジアナの手を取って自分の元に引き寄せた。

モルジアナは体制を崩してアリババの胸へとダイブした。

『俺はアリババ、よろしくな。モルジアナ!!』

そう言って二パっと笑っったアリババの顔を見て、モルジアナは固まった。

アリババはそんな様子のモルジアナに気付かずに、アリババは笑ったままだ。

「きっさまぁあああああああ!!」

その怒号が響いた瞬間にモルジアナの体の震えは止まらなくなる。

ガクガクと震えるモルジアナの手はアリババの服を掴んで離さない。

それに気付いたモルジアナは(離さなくてはっ!!この人が汚れてしまう)と思い必死で手を吹くから外そうとするが、震えるばかりの手はアリババの服から離れることはない。

それでも何度も必至に外そうとするモルジアナの手を優しく掴んだ人がいた。

「えっ・・・」

『大丈夫だよ、モルジアナ』

それはアリババで優しくモルジアナに笑いかける。

モルジアナは只々。アリババの瞳を見つめ、黄金色に目を奪われていた。

『何を恐れるんだ?モルジアナ・・・俺がいるじゃないか』

そう言ってモルジアナの手を優しくキュッと握った。

優しくほほ笑むアリババを見ていたモルジアナの手はいつの間にか震えは止まっていた。

「ゴルタス、殺れ!!」

その声にモルジアナはハッとして前を見る。

「ゴルタスッ・・・・。」

そこには同じ奴隷仲間のゴルタスの姿、モルジアナの顔はサーッと青くなった。

彼は領主サマの命令は何でも聞く、それはもちろん殺しでさえも。

彼は誰よりも強靭で恐ろしい男だ。

そんな彼がもし、この人を傷つけてしまうような事があったら・・・。

そう思いながモルジアナはアリババを見た。

「ッ!!」

彼は目の前の自分よりは一回りも、二回りも大きいゴルタスを見ても笑っていた。

ゴルタスは何時も持っている剣でアリババを指した。

それは、もう殺すと言う合図であった。

でもアリババはまだ笑ったままで、ゴルタスではなくゴルタスの奥にいる領主サマを見てアリババは笑った。

『領主サマ。誰か忘れちゃいませんか?』

「なに?」

そう領主が言った瞬間であった。

ピカッと何かが光ったと思った瞬間、ゴルタスが持つ剣の刀身が無くなった。

折れたのではなく、無くなったのである。

それを見てアリババは笑った、真横を見た。

それに釣られて領主サマもそっちを向く。

「ッ!!」

そこにはアラジンが立っていた。

領主サマは焦った、モルジアナがもこうにわったってしまって形成は変わってしまった。

これではゴルタス一人では勝てないと領主サマは悟ったからである。

アラジンはただ領主サマを見つめ、手を差しだした。

「僕の笛、返してよ」

その言葉に領主サマはアラジンから笛を奪い取ったのを思い出して、安心した。

笛さえなければ目の前の少年はただの人であると、領主サマは知っていた・・・否、思っていた。

余裕の笑みを浮かべて、領主サマは口を開いた。

「やぁ、またお目覚めだね」

そう言う領主サマを無視してアラジンはさっきと同じ言葉を言った。

「僕の笛、返してよ」

その言葉に領主サマは首を横に振って答えた。

「いやいや返せないなァ・・・だって、君はその小汚い少年ばかりを気にするじゃないか。この僕を!!ゴールへ導いてくれたら返そうか。ねぇ」

アラジンは同じ言葉を繰り返すだけだ。

「僕の笛、返してよ」

「力ずくで奪ってみろよ、笛なしじゃ何もできないならこっちだって用が・・ッ!!」

領主サマがすべてを言い終わる前にアラジンは領主サマに何かしたようだった。

光の玉が彼の持つ石の杖から発射され、それは見事に領主サマに的中。

彼は吹っ飛んだ。

それを見ていたゴルタスだが、アラジンには一切手を出すことはなかった。

領主サマを庇うわけでもなく、助けるでもなくただ見ていただけであった。

「すごいッ!!先生が言った通だ!!」

自分が吹っ飛ばされたと言うのに、領主サマは興奮気味でアラジンを見ていた。

その姿は一般人から逸脱した異常な光景でもあった。

「やっぱり君が創生の魔法使い、マギなんだね!!」

そう言われたアラジンは一歩、一歩と領主サマの元へと進んで行く。

それを見た領主サマは嬉しそうに、笑う。

だがその笑顔は次のアラジンの言葉で覆された。

「僕の笛、返してよ」

プチンの領主サマの中で何かが切れた。

「話が違うじゃないかッ!!」

怒鳴るような大声にアラジンはその場で動きをピタリと止め、領主サマを見た。

「僕を王にしてくれるんだろ!?僕は待っていた。ずっと待っていたんだ。君に選ばれる今日と言う日をッ・・・・」

「・・・・・・・。」

アラジンは何も言わず、ただ領主サマを見るだけであった。

「そのためには努力だってしたっ!!無能な親父の代わりに…人を使い、法を布き、商いを起こし、チーシャンの街を一大迷宮都市に栄えさせたのはこの僕だッッ!!」

調子に乗った領主サマはさらに言葉を続けていく。

「そうだ、僕はすごい。僕はえらい。僕は出来る男だ!!だから・・・。」

「だから僕を王様にっ!!」

そう言われた、やっとアラジンが反応を示した。

「王様・・・。」

アラジンは止めていた足を進めて一歩また一歩と領主サマに向かっていく。

「何のことだか分からないけど・・・。」

領主サマの元へたどり着いたアラジンは座り込んでいる領主サマを丁度、見下ろす形になった。

子供が大人を見下ろしているとゆう光景はなんと滑稽なことだろう。

アラジンは冷たい視線を領主サマに浴びせ、口を開いた。

「僕は・・・おじさんの事、そんなに大した人じゃないと思うよ。」

ガァアン・・・。

アラジンの言葉に領主サマはショックで蹲る。

そんな領主サマの事など気にしないアラジンは彼が持っている笛を取って、もう用はないと背を向けたのであった。

そしてさっきまでの冷たい笑顔など嘘のように、ニパッと笑った。

「アリババ君!!」

呼ばれたアリババはアラジンと同じようにニパット笑ってタッタッタと走っていく。

『大丈夫か?アラジン・・・。』

心配そうなアリババの顔を見てアラジンは嬉しそうに笑う。

「うん。大丈夫さ!!」

そう言って笑うアラジンの頭をワシャワシャとアリババは撫でた。

そんな暖かい空間が流れているとアラジンの持つ笛がピカッと輝きだした。

「笛が光ってる・・・。」

その光は一筋の光に変わって、倉庫内の一番奥に鎮座してある壺に向かって光っていた。

そしてその壺自身も光輝いているのを見て、二人は顔を見合わせてゆっくりと近づいて行った。

「・・・・・・・・。」

おそるおそる、アラジンがその壺にピトッと触った瞬間だった。

バァアアアアアアアアアアンンとあたり一帯が光に包まれる。

薄めを開けていたアリババは壺を中心に周りの石だった装飾品たちが一斉に光り輝く金になったのを見た。

そして、その光は塔にまで広がっていってバガァアアンと音を立てて、塔の天辺がが砕けた。

まるで中から誰かが現れたような・・・・。

『・・・・・・・・・・。』

アリババ達はただ絶句するしかなかった。

だって彼らの視線の先には・・・・・・。









「誰だ?王になるのは・・・?」

彼らを遥かに超えて大きくそびたった、人であらざる者がそこにいたのだから・・・。

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