13
『なんかついたな』
なぜか落ちた先に扉があってラッキーな俺たち。
きっとあの領主サマはアホそうだから一生つかないぞと思いながらアラジンとお互い喜び合いながら進んでいった。
中にはなにもない町が広がっていて、人は誰一人ともいないそんな寂しい空間。
風の吹かないその空間は何よりも寂しい所であった。
そんな所をアラジンがなんだか悲しそうに見つめているのを、横目で見ながら遠い思いにはせていた。
「アリババ」
『なに「 。」』
「お前は… 」
『ハハッ。そんな訳ないだろう。俺にはそんな器はない』
「俺が認めたお前にその器がないと思うのか?」
『・・・・・・・・・・・。』
「忘れるなよ、アリババ」
ヒュオッ
何かが中を切る音が聞こえる。
『ッ!・・・アラジンッ!!』
ハッとした俺は目の前にいるアラジンを自分の方に引き寄せようとした。
ドゴォ
紅い何かがアラジンを蹴り飛ばした。
次の瞬間に紅い何かはそのまま地面に着地して姿がハッキリと見えた。
『・・・・・・また君か』
さっきのファナリスの女の子、その目はとても鋭くて何も通じないだろうなと思う。
「よくやったよ、モルジアナ」
そう小さな声が響いた。
どっからだと探してみれば、案外モルジアナの隣に領主サマがいた。
何だそこに居たのか、影薄いなお前とか思っていたら何やら領主サマはブツブツと喋っている。
まぁ、そこは無視の方向で行こうと思って領主サマに話しかける。
『領主サマ、領主サマの持っている奴隷って全部でいくらで買えますかね?』
そう聞けば、領主サマは生気のない表情で俺を見た。
「奴隷?」
『そう、領主サマの奴隷たちをこの迷宮(ダンジョン)クリアでもらえる財宝で買いたいんですけど・・・いくらします?』
そう聞けば領主サマはピクリと反応を見せて興奮気味で話す。
「売る訳ないだろう!!奴隷は王になるために必要な事なんだ!!」
『王・・・・だって?』
数段、アリババの声域が低くなったのを領主は興奮で気づかない。
「そうだよ。王は人を使えなくちゃ行けない。だから奴隷が必要なんだ!!なんでも俺の言う事を聞く奴隷が・・・」
それを聞いたアリババはハッと笑った。
その鼻で笑うしぐさに領主の機嫌は急降下である。
それでもアリババは続けるのだ。
『王が人を使えるってのは、奴隷ってことじゃない。王は人を従えると言うのは、それほど王が信頼されている存在かを表している・・・そんな事も分からないのか。奴隷を動かしても金で人を買っても何をしてもお前じゃ、蟻一匹だって従えさせやしない。』
プチンと領主の中で何かが切れた。
領主は気づかない。空間に流れる空気逃れにも何も気づかない。
けど着実に流れは変わる、すべては・・・・・。
ビュオッと耳元で音が聞こえるので、領主は気づいた。
ここは迷宮(ダンジョン)の奥にある。
そんな所に風が吹くのか?
この窓がないこの空間に、果たして風は吹くのか?
風邪はアリババを中心に吹く、そこがまるで台風の目のように。
アリババの髪を巻き上げて吹いているその風は領主にとっては恐怖でしかない。
そして彼は口にする。
絶対的に助けてくれる一人の存在を…。
「モルジアナッ!!」
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