11
あの人は笑っていた。
私を助けてくれた時も、
追われている時も、
そして・・・・。
今私があなたの後ろに立っていても。
まるでそこに居るのを最初から知っていたようにゆっくりと振り返ってまた綺麗に笑ったわ。
『やぁ、また会ったね』
そう言って笑った。
私は領主サマには逆らえないのに、
領主サマに命令されたら、私は・・・・。
少年は笑っていた。
この町で最も恐れられる領主を目の前にしてもにこやかに笑っている。
まるでその存在など気にしていないかのように・・・。
それがとても気に障る領主だったが、今が彼の目的であるマギを探すのが優先だと彼は口を開いた。
「ねぇ、君。子供と一緒にここに入っただろ?」
なるべく優しい声で彼は口を開く、心の底を見られないように。
少年は相変わらずの笑顔のまま領主を見ず、ただモルジアナを見て答えた。
『子供?・・・・・なんの事です?』
そう言った少年に領主はビキッと米神の血管が浮き出るのを感じる。
領主はそんな自分を落ち着かせようとして深呼吸をしてもう一回聞いた。
「とぼけてはいけないよ。一緒に入っただろう?子供と・・・。」
明らかに領主の声色が変わっているのに、少年は相変わらずの笑顔でいる。
それが更に領主の怒りを買っているのを彼はまるで知っててやっているように、愉快そうに笑って答えた。
『身に覚えがないですけど』
ビュオッ
何かが風を切った音が聞こえる
それを聞いても少年は相変わらず笑ったままだ。
目の前にある剣の切っ先を見ても、顔色一つ変えようとしない。
「ふざけるなよッ!!早く出せッ!!」
今までかぶっていた善人仮面を外して素に戻った領主に少年はおちょくるように笑った。
『出せって・・・・何を?』
ブチっ
領主のなにかが切れる音がして、剣を持つ手を挙げた。
切っ先はアリババに向かって振り下ろされる。
「死ねェえええええええええええ!!」
少年は笑ったままだった。
『じゃぁ、俺は忙しいんでさいなら』
そこに居たハズの少年はもうそこにはいなかった。
[*prev] [next#]