10
それは遠い昔の夢だった。
「なぜだ?アリババ!!」
目の前には唯一の親友の姿があった。
あぁ、これは俺が国を出ると言って日の事だと思いながら自分の意志とは違って自分の口は開く。
それはもう過去の出来事だから・・・。
『ごめん…俺は世界を見なくちゃいけない』
そう。俺は世界を見なくちゃいけないんだ。
「なぜ!?」
『それは・・・・・――――。』
「アリババ君!!」
名前を呼ばれて意識が覚醒する。
ハッと目を開ければ、そこにはニコヤカなアラジンの姿。
アラジンの顔を見た瞬間、俺はさっきまでの事を思い出した。
(そうだ、迷宮(ダンジョン)に入ったんだっけ・・・。)
体を起こしながら思い出しているとアラジンの笑顔がドアップで迫ってきた。
『ッ!!』
「アリババ君、アリババ君!!ここが迷宮(ダンジョン)だよね?」
興奮気味に喋るアラジンに俺は苦笑いを浮かべながら『そうだよ』と答えると、更に彼は興奮したようだ。
自分にとっては新鮮な表情は心洗われるようである。
(いや、別にアイツらが嫌いってわけじゃねぇよ。俺もアイツらも早く大人にならなくちゃいけなかったからだ・・・。)
そう思いながらも目の前のアラジンを見て俺は笑った。
『さぁ、行くか。冒険にでも』
そう言ってニヤリと笑ってやれば、アラジンは手を高々に挙げて「うん」と答えた。
・・・・・・・・・・・・。
言っていいかな?
誰か、助けてくださぁあああああああああああああい!!
「『ギャーーーーーーーーー』」
俺とアラジンは今、全速力で逃げています。(走ってるのはウーゴくんだが)
後ろには蟻の姿で足がムキムキマッチョの足というなんともキモい生物に追われているよ。
悲鳴物だよね。
(アレを出すしかないかな)
そう思いながら俺は自分の髪飾りをギュッと握ろうとした時だった。
「アリババ君、ちょっと離れて」
そう言って俺はウーゴ君から降ろされた。
アラジンは笛に力を入れているようで、チラッと鳥らしきものが飛んだのが見えた。
(あれは・・・。)
そう思っているうちにウーゴ君の手が赤く輝き、見事あのスライムを倒したのであった。
アラジンはかなり憔悴しきっている様子であった。
いつも通りに笑っているつもりだが引きつっている笑顔に申し訳ない気持ちが溢れる。
俺はアラジンにメシを与え、寝かしつけると自分たちが隠れられそうな所に即席だが寝られる場所を作り、そこに寝かしつけた。
(もっと早くに俺が行動しとけばよかったな・・・)
どうも今まで運び屋家業をしてたせいか、間隔が鈍ってしまったようだ。
(ごめんな、今度は俺が助けるからな)
『・・・・・・・・・・・・・・。』
遠くから、人の気配がして俺はランプの明かりを消した。
そのうちカツーン、カツーンと聞こえる音に耳を澄ませていれば現れる三人の姿。
二人の足からジャラジャラと聞こえる鎖の音に不快感を煽られながら、鋭い視線を先頭の男に向けた。
(・・・・・・あれが領主サマか)
今日見た夢の続きを思い出した。
世界を変えたいからだ
この世界を好きと思っても、それを上回るほど今の「世界」は嫌いだ。
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