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誰もが祈った。
神よ!!どうか勇気ある少年を救ってください!!
祈りとは裏腹にアリババは砂漠ヒアシンスの口へと一直線に運ばれていく。
だが当の本人のアリババは抵抗する様子もなくただ黙っている。
だが確実に変化は起きていた。
「ギィイイ」
砂漠ヒアシンスだけがアリババの様子の変化に気づいていた。
アリババの周りの空気の変化に彼に触れるからこそ気づいたのだ。
ビリビリと痛いほど感じる殺気を砂漠ヒアシンスは本能的に察知した。
『やめろ』
一言だった。
たったの一言だけだった。
砂漠ヒアシンスはピクリと反応してその動きを止め、フルフルと震えだした。
ただアリババは真っ直ぐに砂漠ヒアシンスを見ていた。
ゴオオオオオオオ
巻き上がる風の音と自分と砂漠ヒアシンスにかかる大きな影にアリババは上を見た。
『へ?』
先ほどのシリアスはどこに行ったのやらアリババは大変間抜けな声をあげた。
そこにはさらに浮かぶ絨毯と酒樽と一人の少年の姿。
『ア、 アラジン?』
そこには空飛ぶ絨毯に乗るアラジンの姿だった。
ニッコリと笑顔を浮かべいるアラジンにアリババは言った。
『な、なんで?』
そう言えばアラジンは更に笑みを深くし言った。
「お兄さんがいったじゃないか。『困っている奴を助けるのは普通だって』」
そう言うアラジンにアリババはただ唖然とするばかりだった。
「ねぇ、お兄さん。もっと僕に分からないことを教えてよ!」
そう言うアラジンにアリババは未だにポカーンとした顔をしていたが、『ハハッ!!』と笑った。
そして悪戯を考えているような笑みを浮かべ、アラジンに答えた。
『いいいぜ、もっとお前にいろんな事を教えてやるよ』
そう言えばアラジンはパァッと輝く笑顔を向けて言う。
「じゃぁ、約束だね」
『あぁ、約束だ』
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