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スピードワゴンとストレイツォがメキシコで発見した大量の石仮面に囲まれた石造と言えなくもない人の姿に二人は絶句した。
「これは・・・この柱に掘られているこの男はいったい!!」
驚きを隠せないストレイツォの言葉にスピードワゴンは恐怖に染まった顔で首を横に振った。
「彫刻ではないッ!こいつにはアミノ酸がある。細胞がある。微量だが体温がある。脈拍がある。生きているんじゃッ!コイツは!!」
その言葉にストレイツォは身の毛もよだつ感覚がした。
その感覚はかつて彼らが50年前にディオと出会ったときに感じたあの感覚ととてもよく似ていた。
それを感じ取ったスピードワゴンは何よりも早く、この目の前の男を破壊したかった。
だから彼はストレイツォをわざわざチベットの奥地からメキシコへと呼んだのであった。
「・・・ジョナサン・ジョースターは?」
ポツリとストレイツォの口から懐かしい名前が出てきた。
「え?」
この状況でなぜジョナサンの名前が出たのか分からないスピードワゴンは思わず声をあげた。
それまで柱にいる男を見たいたストレイツォがゆっくりと振り返りスピードワゴンの目を見た。
「私より直接ディオと退治した。ジョナサン・ジョースターの方が適任だろう?・・・彼女はどうした?何処にいるんだ?」
スピードワゴンはそれを聞いて静かに首を横に振った。
「私はジョースターさんの場所を知らない。彼女は私に居場所を決して口にはしない。それに私は・・・もうジョースターさんには石仮面の事で関わらせるつもりはない。」
そう言ったスピードワゴンの言葉にストレイツォの眉根が寄ったのを誰も気づく事は出来なかった。
「50年前に私達が全てをディオの事を押し付けたせいで、ジョースターさんの幸せを奪ってしまった。彼女が一番大事にしていた家族を私達は奪ってしまった。もうこれ以上、彼女を関わらせるつもりはない」
「そうか・・・。」
そうストレイツォが呟いた瞬間、ストレイツォの背後にいた彼の弟子やスピードワゴンの部下達が一斉に血を流して倒れた。
「な、なにをッ!!」
突然起きた事にスピードワゴンは只々、驚きの声を上げるしかなかった。
「この者達は今、私が殺した」
自分の弟子を殺して平気でいる彼を信じられないとスピードワゴンは見た。
それでも彼、ストレイツォは50年前と何も変わらず無表情のままで喋り続けた。
「そして君が死んだら、当然ジョナサンの孫は悲しみ、怒り、この私に恨みを持つだろう」
「ス、ストレイツォ!!」とその言葉する前にスピードワゴンはストレイツォによって、倒されたのであった。
「ジョナサンの居場所を知らぬお前などに用はない・・・そして、居場所を知る唯一の手がかりであるジョナサンは私の元に自分から来るのだ。」
激しい痛みが襲う中、スピードワゴンは霞みかけた意識の中で聞こえたその言葉に一気に覚醒し最後の力を振り絞って声を上げた。
「ストレイツォ、血迷ったか・・・。」
石仮面へと足を進めていたストレイツォは足を止めた。
「いいや、いたって冷静だよ。スピードワゴン。私は肉体を鍛錬するために波紋法の道へ入った。だが、修行をすればするほど自分の肉体が老いていくのが分かる。なさけないほどにな。普通の人間よりほんのちょっぴり優れているだけなのだ。」
ストレイツォは上を見上げ、思い出すかのように語った。
「波紋法でさえ、この老いは止められん。私は50年前の戦いのとき、ひそかにディオに憧れた。あの強さに、美しさに、不老不死にッ!!・・・そして、その私の思いを一気に駆け上がらせたのはジョナサン・ジョースター。」
その名前にスピードワゴンは目を見張った。
「18年前に彼女と再会した時は驚いた。50年前と何も変わっていないッ!!・・・否、それどころか更に美しくなった。見たとき直感で思ったよ。私は彼女が欲しいと・・・彼女の妖艶さがさらに増したのを見たとき、ふと自分を見た。この姿では彼女には相応しくない。そう思った。私はッ!!吸血鬼となり、永遠にッ!!ジョナサン・ジョースターと共にいたいのだッ!!」
ドオオオオオオオオオオンと効果音付きそうなぐらいに大きく言ったストレイツォ、その様子を見てスピードワゴンはディオにも感じた寒気を彼にも感じたのであった。
「ねじ曲がったか・・・ストレイツォ!!」
『ぬおっ!!』
全身に走った悪寒で目覚めた、火中の人物ジョナサン・ジョースターはベットからガバッと飛び起きた。
『・・・・・・・・・。』
辺りを警戒して、部屋の周辺を確認しても何も変化はない。
いつも通り部屋であった。
「ジョナサン様?」
部屋の外からタルカスがジョナサンの様子を心配して声をかけた。
ジョナサンはハッとしてドアに向かって声をあげた。
『タルカス。悪いけど、お水を持ってきてくれないかな?』
『はぁー。悪夢を見た。』
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