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人生最大の汚点が現時点でも実行中である。

目を開ければ、ニヤッと目だけで笑っているのがヒシヒシと分かる奴の目が見えた。

そしてディオは当然とばかりに舌を口に侵入してきたのである。

(人のファーストキスはおろか、舌まで入れるとはッ!!)

色気も何にもない事を考えている私は、その舌を歯で噛みちぎってくれようとした瞬間だった。

『んッ!!』

唾液の味の中に、違う味がした体が反応する。

口の中で広がる味に吐き気を覚えて、ペッと吐き出すようにディオを拒絶した。

ドンと重量感のある音を立てて、ディオの首は落ちた。

唇を手で拭えば、そこには赤色が広がった。

その色でさっきのが何か分かった私は嫌な予感がしたのである。

「フフ、アハハハハハ!!」

首だけで笑うなんてなんと奇怪で気色悪い事か・・・。

それでもディオは笑い続け、地面から私を見ていた。

「ジョジョ、お前に飲ませたのは俺様の血だ・・・知ってるか?ジョジョ。吸血鬼の血を吸った人間は俺様と同じ不老不死の存在になるのだ。」

『ッ!!!』

私が驚く顔を見て、更にディオは気をよくしたのか愉快そうに笑っていた。

「これでお前は死ぬことすらままならない、俺様と同じ石仮面に呪われた存在よッ!!」

『貴様ッ!!』

私がそう言った瞬間にディオは嬉しそうに笑うのだ。

「やっとお前の怒った顔が見れた・・・。」

そう言ったディオに私は心の底から悔しさと憎らしさがこみ上げる。

最後の最後に私は目の前の男に負けたのだ。

自分が負けたことのない自身と奢りによって、私は過ちを犯してしまったのだ。

『ディオ・・・私はお前を許すことなどこれから一生ないだろう。』

「それは嬉しい。お前は一生、俺様を忘れることがないのだからな・・・。」

心底、この目の前の男に憎悪しか覚えない。

『・・・・・・バット・ロマンス。』

静かにその名を呼べば、地面から現れたつたがディオの顔を覆っていく。

もう二度と顔も見たくない、その気持ちを悟ったのかバット・ロマンスはディオの首を覆って私から顔を見えないようにした。

『今度こそ、さようならだ。ディオ・・・体のないお前ではそれを解く事さえも不可能だ。』

「お前に触れられない体など、俺様にとって何の価値もない。」

だから自分の体から首を切り離したと言うのか・・・つくづく狂ってる。

もう一度だけ、ディオを見下ろして私は背を向けてその場から去ろうと一歩踏み出した。

「まぁ、気長に待つさ。俺たちには時間があるからな・・・ジョジョ」

そう笑っているだろうと容易に想像できた。

『じゃぁ、それまでに私はお前から全力で逃げようとしよう。』

そして私は今度こそ、歩き出した。

全てを捨て去るように、振り切るように、私は・・・・―――――。

「楽しみだ・・・。」

そうディオの呟きを私は聞こえないフリをした。





『・・・・・・・・・・。』

誰もが無言だった帰り道で、ふいにジョナサンが立ち止まった。

その事に気付いたスピードワゴンは振り返って、ジョナサンを呼んだ。

「ジョースターさん、どうしたんだ?」

そう言うスピードワゴンの質問も耳に入ってないのか、ジョナサンはどこか遠いところを見つめていた。

「ジョースターさん?」

様子が違う事に気付いたスピードワゴンは首を傾げていた。

『・・・・・・・・赤ん坊の泣き声が聞こえる』

そうポツリと零した言葉をスピードワゴンは聞き逃さなかった。

「赤ん坊の?」

その言葉に先に進んでいた、ツェペリ達も立ち黙った。

そして誰もが耳を澄ます。

出も何も聞こえない、ジョナサンの気のせいではないだろうか。

そうジョナサンに行っても、ジョナサンはその場から動かなかった。

『やっぱり、泣いている』

そう言って、ジョナサンは帰り道とは違う方へと一人で進んで行ってしまった。

スピードワゴンが後を追おうとした時に、ツェペリが止めた。

「大丈夫だ・・・それに今は一人の方がいいだろう」

そう言われてしまったら、スピードワゴンは何も言えなくなってしまった。

そして時間もたたずにジョナサンが戻ってきた。

その手には赤子を持ってきていた・・・。

本当にいたのだと驚いている面々の事など気にしていないジョナサンは子供をジッと眺めていた。

赤ん坊は愚図っていて、今にも泣きだしそうな雰囲気だ。

それを見かねたポコの姉が言った。

「ジョースターさん、私があやしますから・・・。」

だけでも、ジョナサンは首を縦に振らなかった。

『いい。このまま泣かしとこう・・・。』

そう言ったジョナサンの言葉に首を傾げるたが、ジョナサンは相変わらず赤ん坊を見たままだった。

『母親が殺されたんだ。こんな日に泣かないで何時泣くんだ?・・・無理に泣き止ますことはない。』

そう言ったジョナサンの言葉に何も言えなくなった周り、ジョナサンはフッと笑みを向けてまた歩き出した。













『ごめん・・・。』

「ッ!!」

すれ違いざまに聞こえたその声を、スピードワゴンは聞き逃すことなく振り返る。

そこにはジョナサンの細い背中がいつも通りにあった。

だけどスピードワゴンにはその背中が泣いているように見えた。

そして謝罪の言葉を聞いた赤ん坊は泣くのを止めたのだった。

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