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「アイツが女だって?」
ずっと俺の頭の中で、その単語だけが何度も何度も繰り返された。
初めて会った瞬間から気に入らない奴だった。
ヘラヘラといつも笑っているくせに、その笑顔はまるで綺麗に作られた仮面のように1oも狂わずに何時も同じ笑顔だった。
怒りよりもまず先に恐ろしさが募った。
まるだアイツは俺の心の底をすべて見透かしているようなそんな態度を時々とる。
俺が何をやろうと決して怒ろうとはしない。
最初は何も言えない腰抜けなんだと思ったけど、違う。
奴は俺の行動を最初からよんでいて、何をするにも最初から奴の布石が敷いてあって奴の心を傷つけるような出来事にはならない
俺はアイツが嫌いだった・・・。
まだジョースター家に来て間もない頃に俺は奴を痛めつけてやろうと思って、ボクシングに誘った。
最初、乗り気ではない顔をしていたが俺が説得して渋々と言った形でやってきた。
その様子に心の中で笑みを作った。
様子からして俺は奴がそうゆう類が嫌いな分類なんだと思ったからだ・・・。
飛び入りで奴と対戦になって、試合準備する俺のまわりには人だかりができた。
(なんだ、コイツら?)と思っている事は顔には出さずにニッコリと笑みを作った。
「僕に何かようかい?」
人当たりのいい笑顔で聞くと、周りの奴らは心配そうに俺を見つめる。
なんなんだ?
「アイツと戦うときは絶対に反則技を使うなよ!!」
そう先頭の男が口火を切った次々とそのほかの男達も口をそろえて同じことを言った。
もちろん人に指図されるのが嫌いな俺はその言葉を無視して奴に反則技を使おうとした時だった。
ドゴォオ!!
それ以降の記憶が途切れた。
初めて屈辱を味わった、今までナンバーワンだった俺が初めて負けたのだ。
しかもこんな奴に・・・。
キッと殺気を込めて睨み付けても、相変わらず奴はヘラヘラと笑っていた。
その日の屈辱を晴らそうと犬を箱に入れて燃やしてやろうと目論んでいると、アイツは何か察知したように犬をつれてよく出かけるようになった。
知っているのだと確信した俺のやろうとする事はすべてコイツには筒抜けなんと・・・。
そのくせ俺に会ったら何もこもってない笑顔を俺に見せては言葉を交わしてその場から去っていく。
・・・アイツの顔から笑顔を消し去ってやりたいと思った。
そしてあの女を見つけた。
奴が随分入れ込んでいる女
アイツには友人はおろか恋人なんて心のありどころは作らせないと決めていた俺は女に近づいた。
そして傷つけた、最初のキスの相手を俺にしてやったそうすればこの女もアイツも傷つくに決まっている
これで奴の化けの皮が剥がせると思って思わず口が弛んだ。
そして俺の願望はかなった。
今までの笑顔をなくし、怒りの表情もなく、悲しみの表情もなく、ただ奴はすべての感情を無くして俺を真っ直ぐに見つめた。
『お前は女を見下す最低のクズ野郎だよ』
氷のように冷ややかな視線が俺を見つめ、背筋が凍った。
これほどの冷たい視線を俺は見たことがあるだろうか?
今までにない初めての経験に気が動転して、自分が暴いてほしくない事を他人に知られた事もあってか俺は力いっぱいに奴を殴りつけた。
奴は俺を殴り返さない、ただ同じような冷たい視線を俺から離すことはなかった
明らかに俺のほうが有利な立ち位置なのに、なぜだか俺は負けたような気分になっていた。
その奴の行動は俺にとって最も敗北感を与える、残酷な行動であった。
そして極めつけは奴が女と言う事であった。
俺は今まで、女に負けていたのだと絶望感に包まれる。
そして内心では納得していた。
どうして奴がそれほどにあの女に執着していたのかと・・・・。
アイツは憧れていたのだ普通の少女の生活にだからアイツは自分の出来ない事をあの女に重ねて見ていた。
だから奴は怒りに燃えたのだ、同じ女として同性が虐げられるのを奴は黙って見ていられない奴だったのだ。
次の日から奴は女の格好をするようになた。
回りの驚いた視線など気にすることもなく、アイツはただ自由に今ま出来なかった事をしているように見えた。
屋敷の廊下ですれ違っても、今までと変わりないように普通に俺にあいさつをして去っていく。
ただ違うのはその顔には笑顔など一つも無かった。
あいつはやっと俺の前で嘘で塗り固められた顔をとったのだった。
それから数日後、俺は呼び止められて立ち止まった。
そこには俺に取り付く男の一人のすがた、全身が傷だらけで酷いありさまだ。
そんな男を見ていると口を開いた。
「ディオ、お前も手伝ってくれよ」
「・・・・・・・・なにをだい?」
「ジョナサンの事だよ!!」
興奮気味に男はアイツの名を口にする。
その事がなぜか俺の機嫌を少しだけ悪くする。
「俺たちアイツに今までの仕返しをしようと思って」
そう言ってアイツは汚く笑った。
その笑みが更に俺を苛立たせる。
「ディオもアイツに腹立ってるんだろう?」
「・・・・・・・・。」
俺はあまりの苛立たしさに口が開かないのを、固定と受け取った馬鹿が更に続けた。
「いくらアイツでも男数人に囲まれたら、負けるだろう。今までの仮も返そうぜディオ・・・俺、女のからだに」
そこから奴の言葉は続かない。当たり前だ俺が今、奴の首を絞めているから。
「ディ・・・・オ?」
なんでって顔をする馬鹿に俺は声を低く言ってやる。
「いいか、アイツには手を出すな。アイツは・・・・・」
俺のモノだ・・・・。
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