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そして運命の馬車が現れる。
あれがシンデレラを乗せたカボチャの馬車だったらいいのになぁ。
なんてガラにもないメルヘン思考をしなければ自分を保てないほどにジョナサンは現実逃避をしていた。
その理由が彼の視線の先にある自分の屋敷にたどり着いた馬車。
馬車と言うか…中にいる人間が問題なのだが。
『(ついに来たか…。どうかアンパンマンフラグが立ちませんように。)』
頭の中で最大の懺悔ポーズをしているところにバンッと音を立てて馬車の扉が開いた。
『・・・・・。(ヒーーーー!!)』
ドサァ!
馬車から出てきたのは彼の物らしきバック。
シャン!
バックの後を追うように、一人の青年が跳ねるように出てきた。
スタッと彼にに着地する。
グゥウン
しゃがみ込んだ体を起こし。
バァーーーン!!
整った綺麗な顔をこちらに向けたのであった。
『・・・・・・・・。(どっから効果音が流れてるんだ)』
私が思わず、頭上を見てしまったのは仕方がない事だと思う。
つか、あのドヤ顔に笑わないだけでも褒めてもらいたいくらいだ。
まぁ。それは目の前の男にアンパンマンフラグを握られていると思うと笑顔なんて出ないんだけど…。
そう思っていると青年が私の存在に気づき、口を開いた。
「君がジョナサン・ジョースターだね」
そう言ってギラリと光った彼の眼光はまさに獲物を見つけた肉食獣の目をしている。
(おぉ、こわッ!!)
きっとその頭の中では顔に似合わないどす黒い考えが渦巻いてるんだろう。
私の視線はディオでなく、ダニーが来たそうでウズウズしているのを見てハラハラしている。
目の前の人間に気付かれないよう、私は静止の合図を送りながら必死で笑顔を張り付けた。
『きみがディオ・ブランドーだね。よろしく』
私は一応の建前で、ディオに手を差しだし握手を要求する。
別に握り返してくれるなんて期待はしてないし、むしろ望んでいない。
自分の手を突き飛ばして、険悪なムード全開でもよかった。
…そう、私は彼の第一印象で決めてしまったのだ。
ろくな会話をせず、この数秒の会話で私は・・・。
ディオも私の手を見て眉をしかめたが、握手をし返してくれる。
「よろしく」
私はディオ(コイツ)が心底、嫌いと思った。
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