27 貴方の声で私は私に戻れる




『・・・・・・・あつ』

沙羅は目の前の人物が気絶したのを見て、一言だけ言った。

さすがにインドの太陽の日差しは日本から来た彼女にとっては辛いものだろう。

取りあえず、水でも飲もう。

そう思って沙羅は気絶するJ・ガイルを一度も視界に入れないでそこを立ち去ろうと背を向けた。

ズサッ

背後から音が聞こえ、沙羅は振り返った。

「くそアマぁああああああああああ!!」

そこにはもうJ・ガイルが沙羅の目の前に迫っていた。

沙羅は半歩引いて、戦闘態勢に入ろうとした時だった。

「チャリオォオオオオツ!!」

ヒュン、ヒュンと音を立てて、私の真横を何か通り過ぎた。

ドスドスドス

目の前のJ・ガイルの顔に穴が開いていくのを見て沙羅を目を見開いた。

そしてそのまま勢いで吹き飛ばされたJ・ガイルを唖然と見ていた私は後ろからの声に振り返った。

「おい、アンタッ!!」

そこには見知らない男達の姿があった。

ヨーロッパ系の外国人とアラビア系の外国人、それに混じった日本人と見られる学ランを来た少年がいた。

ヨーロッパ系の外国人・・・たぶんフランス人がどうやら私を呼んだらしい、ハァハァと息を上げながら信じられないような目で私を見ている。

「あ、あんたが・・・綾部沙羅か?」

その発言に眉根が寄った。

今日、私の名前を言い当てる男にろくな奴がいないからである。

またかと心で思っていた。

私が無言でも男はどうやら私だと認識したらしい。

一歩、私に近づいた。

「やっと。やっとアンタに会えた」

そう言いながら近づく男、私は後ずさった。

それを見た男は不思議そうな顔をした。

「オイ、なんで後ずさるんだ?もう敵はいないんだぜ・・・。」

『・・・・・・・・・・・・・。』

私が何も喋らないのを見て彼は何故か焦った。

「なぁ、おい。何か喋ってくれ」

『・・・・・・・・・・・・・。』

私は喋らない、口を聞く気はない。

というか水が飲みたいからどっかに行きたい。

そう思っていると日本人の男がフランス人に話しかけた。

「やめろポルナレフ、知らない奴に名前を言われて恐怖を覚えない人いないだろ。」

そう言った男の顔を見れば、日本人の少年だ。

私は目の前のフランス人からそそくさと逃げて、その少年の背に隠れた。

何かフランス人よりよっぽど信頼できそうだからである。

それを少年は驚いたが、私を拒むことはなかった。

「ほら見ろポルナレフ、お前を怖がってたんだよ」

そう言われたフランス人、ポルナレフはすっごく落ち込んでいる感じがした。

「マジかよ・・・落ち込むぜ。」

そう彼が言った瞬間、彼の背後からうめき声が聞こえた。

それはさっきまでの私を襲おうとしていた男のもので、すぐ表情を変えた彼はあの男をキッと睨み付けた。

「まだ生きてやがったのか・・・・。」

そう言って彼はさっきの男の方へと向かおうとした時、私は口を開いた。

『殺すの?何の理由があって?』 

私はそう聞いた。

女はこの場には私一人しかいないから、彼はすぐさま私を見た。

そして目が合って、彼は苦しそうな顔をした。

「コイツは生きてる限りアンタを追い回す・・・だから『だから私の為に殺すと言うの?』・・・・・・・・。」

そう言った私に彼は真っ直ぐと私を見た。

「あぁ。そうだ、コイツは今まで何人の女を苦しめたゲス野郎だ。だから・・・・」

『彼女たちのために殺すの?』

「…妹もコイツに襲われかけた。」

『妹さんが貴方にソイツを殺せって頼んだの?』

「・・・・・・・・・・・・・・。」

黙った彼、私はそんな彼をジッと見た。

そんな様子をみていた、アラビア系の男が私に言った。

「君は知らないだろうが、あの男は妹を救ってくれた君を守るためにあの男をここまで追って来たんだ。そんな言い方は・・・」

『そして私の為と言って人を殺すのでしょう?』

そう言ったらその人は黙った。

日本人の少年も口を開く。

「アイツは今まで何人の女を・・・ましてや君でさえも襲おうとした男だよ。」

『だから殺されても当然と言いたいのでしょう。それに関しては私も賛成するわ』

「それなら・・・・」

『でもね…たとえどんな悪党でもどれ程のクズ野郎だとしてもね殺したら「殺人者」になるのは彼よ』

「それは君のためで・・・」

『私はそこが気に入らないって言ってるの。』

「・・・・・・・・・・・・・。」

『彼の気が許さないと言うなら殺せばいいわ。妹さんを襲われかけたんだもの当然だわ・・・でもね』

私はまっすぐに彼を見た。

『私の為と言うのなら、やめてちょうだい。』

「なぜッ!!」

そう言って反論する彼に私は言った













『私を人殺しの動機にしないで。』

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