26 罪を見ろ
ドゴォ!!
「グっ!!」
見事に沙羅の蹴りがJ・ガイルに決まった。
極度の興奮状態の彼はとても隙が多く、しかも彼を守るスタンドは沙羅の手を掴むだけで、その攻撃に反応できなかった。
見事の蹴りが決まったJ・ガイルの顔は綺麗に沙羅の靴の跡がついて面白い顔になっている。
ポタッ、ポタッ
鼻を抑えるJ・ガイルの手の隙間から血が垂れていく。
それを見て沙羅は笑った。
『ごめんなさい、足が器用すぎて・・・・』
そう言った沙羅の言葉にJ・ガイルの中で何かがプツンと切れるのが分かった。
「こ、このっクソアマ!!」
彼は沙羅の首を絞めようと手を首にかけた瞬間だった。
バチッ!!
「ッ!!」
それはまるで静電気にかかった時のような痛みが彼の手に走った。
普通の人間なら痛みを感じて終わりだが、今まで殺しの駆け引きの中で生きている彼にとってその痛みは戦闘態勢になる引き金のようなものだった。
サッと一歩、沙羅から距離を取った。
(いったい、何が起きた?)
それはただの静電気なのだろうか?
こんな都合よく・・・・・。
そう思っている彼の耳にジリッと地面を踏みしめる音が聞こえてハッと前を見た。
『・・・・・・・・・・。』
そこにはしっかりと地面に足をつけた沙羅の姿が・・・。
「お、お前ッ!!」
J・ガイルが驚きで声を上げた、それを見た沙羅はニンマリと綺麗な笑顔を見せた。
おかしい、そんなはずはない。
だって彼女はさっきまで自分のスタンドよってに宙を浮いた状態でいたはずだ。
自分はスタンドを動かしていない、そのまま目の前の女を拘束していたはずだ。
なのに、なぜこの女は自由でいる!!
J・ガイルは焦っていた。
自分のスタンドの姿が一向に見られないと事に・・・・・・。
スタンド使いはスタンドがなければただの人。
絶対的な戦力を無くしては不利になりかねん。
J・ガイルは必至に当たりの反射しそうなものをみる。
何処にもいない、何処にも・・・・。
『フフ・・・』
普通の笑い声があまりにもこの場に合わなすぎて、それが逆に恐怖に変わる。
恐怖が背中から這い上がってくる間隔をJ・ガイルは覚えた。
彼は目の前の女を見た。
愉快そうに、楽しそうに女は笑っていた。
「な、何をしたッ!!」
『・・・・・・・・・・・。』
沙羅はニンマリと笑ったまま、J・ガイルの手を指さした。
それはさっき彼が沙羅を降れた手である。
バッとすぐさま見た彼の目には自分の手が山吹色に輝いているのが見えた。
それを見たJ・ガイルはサッと顔を青くした。
(そんなはずは・・・そんなはずまないッ!)
そう思っている彼の耳には彼の心中とは正反対の笑いが聞こえる。
『おしゃべりは身を危険にするって・・・今まで考えたこともなかった?』
そう、J・ガイルは自分で言ったのだ「波紋を使うからてっきりスタンドを知っている」と・・・。
その言葉はこの二つが密接な関係を持っていると考えるのは容易な事である。
そうと分かれば沙羅はJ・ガイルが自分に触れた所から波紋を流し込んで、流を変えたのだ。
案の定、沙羅の予想は的中してスタンドの姿は消えた。
再び、沙羅はニンマリと笑ってJ・ガイルへと近寄っていく。
それを本能的に彼は後ずさろうとする、そんな自分に気付いて彼は絶望を感じた。
今まで何人のも女を恐怖を植え付けてきた男がたった一人の女に恐怖を覚えた瞬間だった。
足がガクガクと震え、腰が抜けた彼はドサッと倒れる。
だけど、足は目の前の女から逃げるために必死に動かそうとしていた。
「や、やめろッ!!」
『・・・・・・・・・。』
「来るなッ!!」
『・・・・・・・・・。』
「頼むから・・・・」
『・・・・・・・・・。』
「殺さないでくれッ!」
ピタリと沙羅の足は止まる、それは別に彼の願を聞き入れたわけではない。
ただ、もうこれ以上進む必要がないだけだ。
J・ガイルの開かれた足の間で丁度ピタリと足を止めた。
沙羅は目の前の男を見下ろした。
笑顔もなにもなく無表情のままで。
それはまるで道端のゴミを見るような目だった。
J・ガイルは沙羅を見上げる。
鋭い視線が自分を突き刺している。
それは自分に重なるのは何故だろう?
自分が今まで襲ってきた女のようだと気づいたのはいつからだろう?
とてつもない恐怖心が自分の足を手を口をすべてを縛って動かしてはくれない。
これほどの恐怖心を今までの女は味わったのだろうか?
そう思っている彼の目に入ったのは沙羅の足だった。
それは確実に適格に彼の急所を目がけてくると悟った彼は逃げようとしたがもう遅かった。
グシャッと音を立てて踏みつけられ、激痛が襲う。
「グッ!!・・・・カハっ」
声も上げられない信じられない激痛を彼は襲う、それを見た沙羅は更に足に力を込めるのだ。
ニヤリと笑った彼女は言った。
『こんなの…もういらないよね?』
「や、やめっ!!」
目の前の女にそんな言葉を言っても絶対に止めないと知っていたのに、それでも言葉にしてしまう。
それは自分が今まで数多くの女たちにも同じようにやって来た事だ。
まるでそれを知ってるかのように、目の前の女は男の罪を次々と実演させて見せた。
見せつけるように、思い知らせるように。
底知れない恐怖と痛みから男の体は震えだす、今までの被害者の女たちのように。
それを見た女・・・もとい俺は笑う。
そして何時もの言葉を言うのだ・・・・・・・。
『「いい声で鳴いてくれ」』
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