24 電話
それは突然の来訪者であった。
「あなたが綾部沙羅さん?」
町中を歩いている時に後ろからそんな声が聞こえ、私は振り返った。
そこには人当たりよさそうな笑顔で一人の男が立っていた。
『そうですけど・・・あなたは?』
そう聞けば男は思い出したような顔をして照れ臭そうに言った。
「申し訳ありません。私、SPW財団の虹村と申します。」
そう言われても私の頭で何も合致しない。
SPW財団と言えば全世界も股にかける大企業なはず。
そんな大企業の社員がわざわざ私に何用だろうと思いながら『虹村さん・・・。』と相手の名前を繰り返しただけであった。
相手は人当たりよさそうな笑みを浮かべて口を開いた。
「訳は言えませんが。実はジョセフ・ジョースターさんからあなたを保護するようにと申しでがありまして・・・。」
ジョセフ・ジョースターその名前は知っていた。
聖子ちゃんのお父さんであり、アンジェの祖父の人。
『保護…私をですか?』
まさかそんな事を言われるとは思ってなかった私は驚いてしまった。
「えぇ、急を要するので…私と一緒に来ていただけますか?」
そう言って一歩、私に迫った虹村さんは相変わらず笑顔のままであった。
『・・・分かりました。用意するんで待っていただけますか?』
「はい、ご一緒します。」
やんわりと待ての言葉を無視されながらも私はそのまま方向を変えて、自分の事務所兼店へと足を運ばせた。
部屋の中まで入りそうな虹村さんを押しのけて自分の事務所の荷物を整理する。
手を動かしながらも私は考え事をしていた。
(私を保護すると言う事はどういうことだろう?)
しかも頼んだのがアンジェのお爺さんと言うところがネックだ。
彼は今、アンジェと一緒に旅行をしている人だ。
なぜ?と聞かれれば結論は一つしかない。
何かが起こってるのだ。
私の知らない所で、それはアンジェにとってものすごく身近な所で何かが起こっている。
最後に会ったときの彼の目はそういう目であったから・・・。
プルルルルプルルルル
『ッ!!』
私の考えを遮るように、事務所の電話が鳴り響く。
私はビックと体が反応しながらも冷静さを取り戻して受話器を取った。
『はい、もしもし。』
「綾部沙羅さんですか?」
そう言われたのは今日で二回目、今日はよく名前を聞かれる日だ。
そう思いながら『はいそうです。』と答えた。
「私はSPW財団のものですが・・・本日、あなたを保護するようにと命令が下りまして。」
そう言われて私は頭を傾げながらも私は答える。
『あぁ、はい。今、そちらの社員さんが来てますけど・・・。』
「うちの者ですか…名前は名乗りましたか?」
電話向こうの相手のなにやら意味深な質問をされながら、私は答えようと口を開く。
『はい。にじ・・・・・・・・』
カシャァン!!
「もしもし?綾部さん?もしもし・・・もしもし!!」
そこにあるのは落ちた受話器だけだった。
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