20 それはある日の出来事です






『あ“づい”〜〜』

日本の夏はジメジメする。

今までフランスにいた私は日本のジメッとした夏に嫌気がさしていた。

こんなんじゃ、制作意欲がわかんと縁側でグテンと転がる事にした。

あぁ、聖子ちゃんがつけてくれた風鈴の音が涼しげに聞こえる…。

そう思っても暑いものは暑いく、もう溶けるんじゃないかと思っているとヒヤッと冷たさが額に広がった。

『うわっ』

ビックリして目を開けてみればアンジェのイケてるお顔のドアップが・・・。

えっ!どんな状況?・・・なんて思っても私の頭はいたって冷静である。

ニヒャリも笑顔を作って、防衛線を張る。

そうすれば頭はさめて動揺はいとも簡単に無くなるのだ。

『どうしたの?アンジェ』

「アイツがお前にアイスだってよ」

でも今日はそれだけではアンジェは許してくれなかった。

私をジッと見つめるのだ。

私の好きな緑色の瞳が私を見つめるのだ。

子供の頃から変わらない、アーモンド形の綺麗な眼を私に向けるのだ。

動揺するが決して表には見せない動きで私はアンジェの手からアイスを受け取った。

『ありがとう、アンジェ』

私が笑顔でお礼を言えば、アンジェは薄く笑うのだ。

その笑顔を見るたびに私の胸は何時だって締め付けられるのを彼は知らない。




気づかない訳がないじゃないか。

私は精神はもうとっくに大人なのだから、あの子の想いに気付かない訳がない。

あの子は子供の頃の約束を未だに忠実に守っているだけなのだから・・。

でも私は気づくふりなんてしない、あの子が私を諦めるまで・・・。

子供の頃の約束なんて、いつまでも綺麗に見えるものだから私を好きだと錯覚しているだけだ。

まだまだ子供なあの子、17歳なんて移り気な時期である。

すぐに私以外のいい人が見つかるに決まってる。

世界にはたくさんの私より可愛い女の人がいる。

アンジェもきっと視野が広がればきっと私なんて目に入らなくなる。

もしそうなったら私はどうするのだろう?

アンジェが紹介する可愛い彼女を私は笑顔で迎えられるだろうか?

アンジェの選ぶ彼女だからきっと超絶プリティなのだろうと思っても私はその子の前で笑えるだろうか?

今までのように・・・・。









私は心を隠して笑えるだろうか?


<あとがき>
でもね、主人公さん。
子供ってあなたが思っているほど子供じゃないんだよ。
承太郎くん
大人って君が思うほどそんなに大人じゃないんだ。
だから押せ押せはいいと思うよおばさんは。

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