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それは現実逃避と言う名の旅(といっても城から半径10キロ圏内)の最中の事だった

ヴェネチアで一人、優雅にアイスを食べていると

「おいッ!!お前」

随分と若い声が聞こえ、ジョナサンはあたりを見渡してみる。

辺りには誰もいなく、きっと自分を呼んだのだろうと思って振り返ってみた。

『あら、この前の少年じゃないかい?』

そこにはローマで出会った少年の姿があった。

ジョナサンの発言が気に入らなかったのか怒った様子で怒鳴られた。

「俺は少年じゃねぇッ!!おれはシーザー・ツェペリだ!!覚えとけ!!」

『うん。知っている』

ジョナサンの飄々とした返答に更にイラッとしたシーザーは拳をギュッと握りしめた。

あと少しで怒り爆発の雰囲気の中で、シーザーは怒りを抑えた。

「今日は父さんと一緒にここに来たんだ…」

『ほうほう、そらまたどのようなご用件で?』

興味なさそうにジョナサンはジェラートを一口食べてシーザーを見た。

「・・・・アイツを倒すためだ」

突拍子な発言に首を傾げた。

『アイツ?・・・・はて』

「お前も会っただろう。壁の男だ・・・・。」

壁の男・・・それは今のジョナサンにとって禁句であった。

今すぐ城の自分の部屋に逃げると言う禁断症状が出る所であったが、それより気になる事があった。

『・・・どうして』

目の前の自分より遥かに幼く、遥かに弱くて未熟な少年があの恐怖を味わってその言葉を発せるのか謎だった。

『どうして、少年は…あんなに恐ろしい奴の力を姿を空気を感じてなぜそんな事を言うの?』

それはジョナサンにとって“恐怖”より上回る“疑問”だった

「家族を守りたいからさ…それ以外に理由がいるか?」

『・・・・・家族』

一人、昔に思いを馳せていたジョナサンはシーザーの発言に驚いた。

「あんたにもいるんだろ」

『へ?』

「家族」






ジョナサン

母さん





『・・・・・・うん。いるよ。とても会いたい家族が』

そうほぼ初めて会う少年だったからだろうか?

今まで口にした事のない言葉が出た

心の底から思っていたけど、それは決して口からは出る事はなかった

それを聞いた私の城にいるの家族が傷つく事を知っているから

そう思って家族を思って笑っていたら、シーザーは言った

「俺は救いたいんだ。家族を・・・アイツらの恐怖から。それ以外に理由がいるか?」

それを聞いた私は驚きに目を見開いてしまった

『・・・・・・・・・・・・そうだね』

本当にそうだ

グチグチと昔のトラウマに囚われている場合じゃないのだ

私には守るべきものがあるのだから・・・・・・・。

ジョナサンは強い視線を未だに送る、誇り高い少年を見て優しくほほ笑んだ。

手を差しだした





『では…行こうか。』



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