18 真っ白な君を横に立つのは…。
沙羅を最近、見かけない。
綾部沙羅に恋する少年(?)空条承太郎はここ一週間見かけない、幼馴染の行方が気になっていた。
隣である彼女の家に行ってみても帰ってきた形跡はないようだ。
「あの子、今は仕事中なのよ。」
そう言って苦笑い気味に笑った沙羅の母親の言葉が頭でリピートする。
仕事というの事はアメリカへと言ったのだろうか?
そんな考えが過ると一気に自分の気持ちが下がるのが分かった
どうやら自分は相当、キテルらしい…
クスッと笑って、承太郎は家への道へと足を進めたのであった。
家へついて母親が笑顔でさし出した物に「なんだ…。」と言葉を漏らしてまった。
そこには今日の晩御飯であろう食事がトレイに乗せられて母親が笑顔でそれを自分にさし出している。
意味がわかないといった表情で真っ直ぐに母親を見つめているといつも通りの腑抜けた笑みを漏らして行った。
「承太郎。このごはんを離れに持っててくれない?」
この馬鹿でかい家には更に離れがあって、母親と自分しかいないので人の出入りのない離れになぜ食事を持っていく必要があるんだと思っていると次の母親の爆弾発言に驚くことになる。
「沙羅ちゃんの晩御飯よ!!」
「・・・・・・・あいつ、家にいるのか?」
そう俺が数トーン声を低くして聞いても、キョトンとした顔でさも当たり前のように答えた。
「そうよ。言ってなかったっけ?沙羅ちゃんの仕事場、家の離れだって」
「・・・・・・・聞いてねぇ」
初耳だぞ、そんな話。
だがようやく彼女の居場所が知れた俺は謝る母親を無視して、トレイを奪って歩き出した。
「・・・・・・・・・。」
目の前に広がるのは真っ白な紙、紙、紙、紙。
二十畳と広い離れの床には服のデザインだろういろいろ書かれては部屋一面に広がって行った
そしてその中心にひときわ目立っている真っ白なドレスに承太郎は目を見張った。
キラキラと純白に輝く白いドレスがなんだか、彼には分かってしまった。
『あれ?アンジェ』
ヒョッコとドレスの陰から現れた目的の人物の姿を見た承太郎はハッとして手にあるトレイを沙羅にさし出した。
「飯だってよ」
そう言えばパァッと花咲くような笑顔になって『ありがとう』とほほ笑む沙羅に承太郎は顔をしかめた。
(所詮は17歳。まだまだ初心な年頃なのだ)
そんな承太郎の内心の葛藤など知らない沙羅はスッとトレイを受け取ってドレスから少し離れたところに座った。
『いただきます。』と手をパチンと合わせて食べ始めた沙羅を見て、自分も彼女の目の前に座って、ご飯にありつく彼女を見た。
「・・・・・・それが仕事か?」
そう言って承太郎は白いドレスを指さす。
『そう、今度にねスポンサーの御嬢さんが結婚するからさ。私たち一人ずつからドレスを送ろうって話になってね。くじ引きで白を頂きました』
そう言ってVサインをして勝ち誇った笑みをする名前に承太郎はただ見つめるだけだった。
そう彼女が作っていたのは真っ白なウェディングドレスだ。
真っ白な紙に敷き詰められた部屋にあったとしてもその存在感はまったく陰らない。
素人ながらにも彼女の才能を承太郎は垣間見たのであった。
その後、全部を一気に平らげた彼女は満足げにその場で眠ってしまった。
承太郎は「やれやれだぜ」と何時ものセリフを吐いて、タオルを持って彼女にかけてやった。
「・・・・・・・・・・・。」
彼女の才能に嬉しさも思うが、悔しさが大きいと承太郎は思った。
彼女はただでさえ2歳差の距離がどんどん広がっていくようで、それがとても悔しくて悲しくて空しくて…。
承太郎は口を開いた。
眠る彼女聞こえないだろうに、それでも繋ぎとめるような言葉を吐いた。
「それを着て、俺の横に立ってくれるか?」
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