17 自分の顔を見てください
「何時になったら俺を名前でよんでくれる?」
そう言った承太郎の言葉に目を見開いた沙羅。
承太郎はまっすぐに沙羅を見つめ、返事を待った。
驚いた表情の沙羅は突然、ニパッと笑って承太郎の体をバシバシと叩いた。
『本当、合わない間に生意気になったね。アンジェ。アンジェはアンジェだよ』
そう言って笑う、沙羅とは正反対に承太郎は表情を変えずに彼女を見ている。
そんな承太郎の様子に気づいていないのか、沙羅は相変わらず笑いながら言った。
『そうだ、アンジェ。今度、沖縄つれてっておげる』
やっぱり沖縄の魚は違うんだよーと笑って言う沙羅に「そうだな」と承太郎は答えた。
『そうだよ』と言ってまたバシバシと承太郎の体を叩いた。
そんな時、駅に電車が来るアナウンスが流れ沙羅はあわてる様子をする。
『あっ!!早くいかなくちゃ。じゃぁ、また明日ねアンジェ』
そう言って承太郎の返事を聞かないまま、改札口をくぐった沙羅に承太郎の言葉が口を開いた。
「言葉を変えようか・・・。」
ピタリと沙羅の動きがまるで、電池がなくなった玩具のように止まった。
「お前は何時、俺を見てくれるんだ?」
アンジェ(天使)なんかじゃなく、そう言った言葉が聞こえてきそうなほどの承太郎の言葉だった。
振り返った沙羅は相変わらずの笑顔で『何のこと?』とそう言って、承太郎の言葉を聞かずいつの間にか来た電車に乗って去って行った。
『本当に生意気』
電車の中で、もう可愛さのなくなった幼馴染からの言葉に必死に耐えていた名前が耳を真っ赤にさせながら言った。
何時の間にやらあんなタラシの言葉を吐く子になったんだか。
そう言いながらも、名前の顔は満更でもなさそうにほほ笑んでいる。
それを電車のまどの反射でみた名前はそんなはずはないと首を振って自分を落ち着かせていた。
そんなはずない、あの子は産まれた瞬間からしっている子だ。
それも精神年齢が大人の私からすれば、もう息子と言ってもいい年齢だ。
そんな子に私が・・・・・。
早く認めちまえよ
(作者の意見です)
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