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「アリババくん!!」

アラジンは異変に気づき、アリババの元へと向かったがそこには動かなくなったジンだけとなっていた。

アラジンは近くにいたシンドバットに聞いた。

「シンドバットおじさんッ!アリババ君は?」

さきほどの予想外の出来事に驚いていたシンドバットはアラジンの声で正気を取り戻して答えた。

「あ、あの影にジンの口の中に放り込まれたんだ」

そう言ってシンドバットが射した先にいたものを見たアラジンは驚いた。

動かなくなった理由はここにあったのか・・・と一人納得していたのだった。

そしてアラジンは物怖じすることなくそれに近づいた。

「やぁ、君は誰だい?」

それは答えなかった。ただそこにあるだけだった・・・。

返事をしてくれないのを理解したアラジンはそれ以上、なにも言わずにいた。

「・・・・・・・・・・僕は駄目だな」

アラジンはひとり言のように喋り出した。

「アリババ君の助けになりたかったのに…僕には何もできない」

そうひとり呟いていると影は動きアラジンの目の前でフラフラと揺れた

アラジンはそれをジッと見つめ、そしてニッコリと笑った。

「僕も頑張らなきゃ」










「くるしい」

「くるしい、くるしい、くるしい」

どうして?

「嫌なんだ俺が・・・俺自身が俺の血が…アイツと一緒の血が嫌なんだ。拒絶したいんだ…」

どうして?

「アイツは最低のクズだ俺がアイツと一緒のクズだと思うとくるしくなる」

そうだね。

君は最低のクズだ

彼とは大違いの汚い血が入っている

「彼?」

ほら。君とは違う尊い血の彼だよ

「あぁ…アイツか」

そうそう、彼には優しい母親がいたし。

偉い王様が父親なんだよ

「そうだな」

お前のみたいにクズの親父はいないんだよ

「・・・・だから俺と違うんだな」

そうさ!アイツはお前と違う

全然ちがうお前をあざ笑っているんだよ・・・

「あざ笑う?」

そうさッ!!高貴な血のアイツが穢れたお前らを見て笑っているんだ

「・・・・・・・・がう」

え?なんか言った?

「・・・・・・・・・。」

無視か・・・まぁ、いいや。

とにかくアイツはお前と違うんだよ、お前には最低の父親の血が

アイツには高貴な王族の血が流れている

そりゃ、生き方だって違うから。

アイツは生まれてから何でも手に入れてた

(ちがう・・・アイツは失った。大好きな母親を誰よりも好いていた母親を)

そしてお前たちを見下していた

(ちがう・・・アイツが優しく笑った。自分も大変なくせに皆を助けて嬉しそうに笑っていた。)

お前らを見捨てて、とっとと城に入りやがったし

(ちがう・・・俺は知っている。アイツは妹に、スラム街に流行り病が迫っていたのを…俺らを助けるためにアイツは「父親」とではなく「王」と取引した。)

王宮に入って贅沢な暮らしをしていたんだ

「ちがう、ちがう、ちがう、ちがうッ!!!!!違うッ!!!」

あ?なんだよ声を荒げて・・・・あぁ、そうだったなアイツは違かったよなぁ

お前の親父の言うようにアイツは化け物だったなぁ・・・見たよな?アイツの目を

「違う」

あれはまさしく人殺しの目だよ

「黙れ」

あいつはまさしく本物の化けもn

「黙れぇええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

カシムは拳を振り上げ、空間を殴った。

バリンッ!!と音が鳴り、空間にヒビが入り砕け散って行く。

真っ黒な世界が徐々に色づいていく中、カシムは叫んだ。

「俺は言ったハズだぞ!!アイツをッ!アリババをッ!!そう言ったら俺がぶっ飛ばすと!!」

カシムは目の前を睨み付けた

そこにいたのはかつての…血の違いに苦しんでいた俺の姿を

「たとえそれが俺でもだッ!!」

カシムは手を振り上げ、拳を振り下ろした。



パシッ

たが、その手は相手に当たることなく止められた

『まぁ、まぁ。そんなに怒るなってカシムくんよ!』

妙に弾んだその声を聞いてカシムはすごく嫌な予感がしたのであった。

恐る恐るその手の先を見れば予想通りの姿があって、カシムはクワッと目を見開いた。

そこには嫌―な笑みを浮かべるアリババがいて、その顔は明らかに今までの自分の会話を聞かれていたのは明らかなワザとらしい顔であった。

『まさか、君がツンデレ属性なんて…思ってなかったよ。いやー俺はいいお兄さんをもった「うるせぇ!!」

恥ずかしさが最高潮に達した時、カシムはアリババを思いっきり殴ったのであった。







『なんで、俺!?』

(お前はそうやって過去の嫌な俺を何度も救ってくれるんだな・・・・・。)

(ありがとう、ありがとう・・・アリババ)


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