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突如現れた黒いジンにバルバットの国民は驚愕の表情を浮かべた。
彼らは見てしまったのだ
自分たちの仲間が…あの青年が一人の男に刺された後に異形のモノへと変化する様を…。
信じられない光景と信じたくない事実に誰もが息を飲んだ。
「あ…あ…なんだこれは…!!?」
目を背けたくなるほどの醜く、恐ろしい化け物に皆が恐怖した。
「ばかな…まさかあれは!!」
その姿に見覚えのあるシンドバットの様子だけは周りとは少し違った様子でジンを見つめた。
(あれは…「魔装」!?いや、あれはジン「本物」だ!)
「フフフ・・・ハハハハ!!」
その場に似つかわしくない笑声にシンドバットは顔を向けた。
そこには一人の男の姿、黒いマントに白い布で顔を隠しているがそれが誰なのかは彼にはよく分かっていた。
「貴様ッ!」
シンドバットの怒りの視線を受けても男は楽しそうに、嬉しそうに、愉快そうに笑った。
「それはただのジンではないソイツはもはや『アモン、燃やせ』
普段なら聞き逃して仕舞いそうなその小さな声はその場には大きく響いた。
何もない所にボッ!と出来た火はまたたくマントの男を包んだ
「ギャ・・・・」
男が断末魔を上げる前にその体は真っ二つとなった。
ビュオッ!!
また吹き荒れた突風の中でシンドバットは見た光景に目を見開き、そして恐怖した。
彼は今まで見たことのない光景を見たからである。
突風の中心に立つ人をその視線の冷たさを・・・・その憎悪を
彼には元暗殺者のジャーファルや、剣闘士だったマスルールが傍にいるが…そんな彼らでさえそんな顔を目をした事はなかった。
その時、シンドバットはずっと感じていた目の前の少年に対する疑問が晴れたと確信した。
違和感の理由は彼の大人を演じているのだと思ったでも違う・・・。
今、この瞬間見た光景で彼は理解し…驚愕した。
演じているのではないと言う確信に彼はいたった。
目を見れば分かった、そしてそれがどういう経緯で今の彼になっているのか想像はつかなかったがそれは紛れもない真実だと感じたのであった。
(アラジンから迷宮(ダンジョン)攻略者だとは聞いていたが…ここまでとは)
そう思っているよそにアリババのそんな顔は一瞬で終わり、かつての友を見てフーッと深くため息を吐いた。
もう異形のモノに成り果てた友に焦る様子はなかったが、なにかやるだろうと確信はしていた。
『あとは・・・お前だけか』
そう言いながら、アリババは手を自分の後ろ髪へと持っていき髪飾りに手をかけた。
複数あった髪飾りを全部取り、風で髪が舞ってキラキラと輝いた。
ニィッと笑ったアリババ…そしてそれを見ていたシンドバットは異変に気付いた。
「影がッ・・・・あれも金属器なのか!?」
太陽の位置など変わっていないと言うのに、アリババの影はスルスルと伸びて行きジンの手前でピタリと止まった。
『縛れ』
そうアリババが言葉を発した瞬間、一つだった影が複数に分かれ実体化として現れ伸びジンを縛り上げた。
「なッ!」
周りの驚きなど知らない顔のアリババは得意げに笑った。
『待ってろ、カシム!!』
そう言って勢いよく駆けだした瞬間だそうとした瞬間だった。
シュル
『ん?』
足に変な感触を感じたアリババが見ればそこには影が足に巻きついていた。
『げ!』
そうアリババが声を上げた瞬間、ポーンとアリババは影に投げられたのであった。
『ぎゃあああああああああああああああ!!』
なんとも間抜けな声が響き、そして・・・・。
パクッ!
「あ・・・・・・・」
ジンの開いたお口に一直線でした★
「後書き」
マルッキオの出番は終了ですね笑
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