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銀行屋のマルッキオの目の前には三人の王族が立っていた。

二人は彼が今まで探していた王と副王で、そしてもう一人は彼らが捜していた王子の姿であった。

本当に助けてに来たと彼は思った。

マルッキオがまだこの国に来た最初の頃、まだ王と副王が居た頃

今までは上手くいっていたのだ・・・国を滅ぼすことなんて。

ここの王は傲慢で金に目がないと聞いた彼はこの国を落とすためにやってきた。

それが彼の・・・否、彼らの目的なのだから。

だが、彼の狙い通りにはいかなかった・・・。

それは噂と違い、この国は人は王は民はすべてを信頼し信じている。

そんなシナリオはなかった…そんなハズではなかった。

第三王子など恐るるに足らないはずだったのに・・・・目の前の男はなんだんだろう。
コイツは昔から我々の計画をすべて邪魔していた。

それも我々が気づかないように、少しずつ少しずつ変えて行った。

そして救った国を人を見て何の見返りも求めずにその場を去った

そんな人間がいてたまるか・・・。

お前の顔を憎悪に変え、我らの奴隷にしてくれる・・・・。

「アリババ!!」

そうだ・・・お前だ。お前を・・・。




ワァーーーーーーーーーーーーー!

国民の大歓声の中、アリババは手を振りながらその人影を見つめた。

『・・・・・・・・・・。』

「・・・・・・・・・・。」

随分と二人の距離は離れているのに…それでも二人は、カシムとアリババはお互いを認識していた。

アリババはニィッと子供らしい笑顔を見せ、カシムに向かってサムアップポーズをしたのであった。

それを見たカシムは一瞬、驚いたような顔をしたがすぐにニィッとアリババのように笑い同じポーズをした。

言葉なしで二人は今の現状に喜んだ様子であった。





『へ?』

それは突然だった

アリババの視界に入ったのは真っ黒なマント

そしてソレはカシムにドンとぶつかったのであった。

翻るマントが二人の姿を隠していたが、アリババには妙な胸騒ぎを覚えていた。

その手は自然と、腰布に差しある剣へと伸びギュッと掴んでいた。

マントからカシムの姿が見えたとき

『・・・・・・・カシムッ!』

真っ赤な色が嫌に遠目からでも分かり、黒いマントがカシムを覆った

ニィッと笑うシニカルな笑みと目が合った

『・・・・・・・・・・・・』

「さぁ!!始めようじゃないかッ!!アリババ王子!」

アリババはその男を目に焼き付けるように見た。

ギリギリと剣を持つ手に力が入り、血が出ようとアリババは一点だけを見ていた。

ビュー!!っと突風が吹き荒れる

誰もが目を閉じるその中で風の中心にいるアリババだけが視線を動かさないでいた。

突風と共に揺れる髪の髪飾りは一層、光輝いた。






「運命の逆流を!」


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