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「アリババ、どうか国民達にお前の顔を見せてやってくれ…そうすれば民も安心するだろう。」

兄が重々しく言った言葉の意味を知った俺は足を止め、二人を見た。

『兄上…私は最近までバルバットのスラムに潜入しているから知っているんです。』

「「?」」

二人の手を取って優しく伝えた。

『民は俺よりも貴方たちを心配していました。』

それは事実だ。

アリババは潜入した町で聞く言葉たちはだいたい、兄達を心配する声だ。

思ってだって民たちは心配は出来なかったが、その声はアリババには届いていた。

『兄上たち…民に愛される立派な王にならせられました。』

そう言って笑えば、二人は顔をクシャリと歪めて下を向いてしまった。

泣き虫なのは相変わらずとアリババは苦笑いをした。




国民が待つ広場へと向かっていたアリババを呼び止める人物が現れた。

「王よ・・・アリババ王よ」

その声、その呼び方に見覚えがあったアリババは振り返りその人物を見て笑った。

『モガメット…昔から言っているだろう?俺はお前らの王じゃないし、てかそんなものにお前ら縛る気はないと前から言っているだろう?』

そう言って向かい合った一人の老人を見てアリババは言った。

何処か威厳のある老人がアリババに敬意を払ったその様子は異様なような、どれでもとてもふさわしく感じるものだった。

顎に蓄えたひげをなでながら、彼は言った。

「これはこれは申し訳ありません。」

ニコニコと笑う彼だが、これで以外と人の話を聞いていないのである。

この会話はかれこれ100は超えただろう。

だが、彼のその笑顔に毎回アリババは怒るタイミングを逃してしまうのである。

さすが年の功と言った所であろう、一枚も二枚も彼の方が上手であった。

彼を見ていたアリババはふと言葉にした。

『ありがとう。モガメット』

「・・・・・・・・・・・。」

モガメットは急な言葉に少しだけ驚いたように目を見開いた。

『お前がこの国が倒れないように支えてくれていたのは知っている…ありがとう、モハメッド。本当にありがとう』

そう言って深々と頭を下げたアリババを見て、モガメットは無言のままアリババの手を取って頭を上げさせた。

「貴方のそのお言葉で十分でございます。王よ・・・その言葉だけで私は救われる。」

本当に嬉しそうに笑うモハメッドを見てアリババもほほ笑んだ。

そんな和やかな瞬間を・・・・。

『いいや。お前はもっと貪欲になるべきだ…モガメット!』

一気に潰したのは説教モードのアリババだった。

『ったく、お前のやり方は分かりにくいんだよ…まぁ、それがお前の優しさだって俺と民は理解してるけどさ。昔のクセが抜けないのかしれないがお前はもっと人生に貪欲になるべきだ。お前のお孫さんだってこの前結婚したんだろう?そう言うおめでたい事とかさぁ、なんで黙っておくかな?』

お前の弟子のマライヤーズからその話を聞いた時はさすがに俺でもショックを覚えたぞ!!

そう言ってプンプンと怒っているアリババは従者は呼びに来て、去りながらも怒っているアリババを見てモガメットは笑った。









「今も昔もこれからも…あなたは我々の王だ。」


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