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アリババと紅玉が囚われた王達を見つけた時、シンドリアの方々が現れた。
証言者が一気に増えた、しかも国の重要人物が多いこれはバルバットの王族が煌帝国の銀行屋に囚われていた事が明白になったのであった。
「そ、そんな・・・これはいったい?」
突然の衝撃に紅玉も煌帝国側も慌てたようにしているところに、アリババが声をかけた。
『どうやら彼は我らバルバットと煌帝国との交流を邪魔しようと銀行屋と偽ったのでしょう。』
そう言ったのだ。
その言葉にシンドバットは驚いた顔をし、アリババを見つめた。
だがアリババはシンドバットの事など目に入っていないように言った。
「偽物・・・・そうですよ、姫!この者は我ら煌帝国とは何の関係もない人物なのです。」
紅玉の隣にいた夏黄文はそう言った。
それを聞いた紅玉も「偽物ですね・・・」とそう言うしかなかった。
『この者の処置はこちらで行ってもいいでしょうか?・・・煌帝国皇女、紅玉殿?』
そう優しく、だけど強く聞いたアリババに紅玉は頷くしかなかった。
彼女は決して、バルバットとの争いを起こすなと命じられていたからであった・・・・。
『では・・・そう言う事で。』
ニッコリとアリババは綺麗に笑い、その場を後にした。
「アリババくん!!」
その声に兄王達と歩いていた、アリババくんは立ち止まりシンドバットを見た。
兄王達もアリババに続くように止まり、三人一緒に頭を下げた。
『シンドバット王、ありがとうございます。我が国を思ってくださり・・・』
そう言ったアリババを見て、シンドバットは口を開いた。
「なぜ、あんなことを言った?」
『・・・・あんな事とは?』
しらを切るアリババを見つめ、シンドバットは言った。
「アイツが煌帝国となんら関係ないとも思っていないだろ・・・・。」
『・・・・・・・問い詰めてどうなるのです?』
アリババはその顔から笑顔を消して、シンドバットを見た。
「そ、それは…煌帝国の弱みを握りってアイツらを歴史の表舞台に引きずり出すんだ」
『・・・・・・・・・。』
「君にはそれが出来る力がある!!アリババ君、お願いだ!私の言う通りにしてくれないか?」
静かにシンドバットの言葉を聞いていたアリババは口にすることは一切ないと言うように、ただ首を横に振るばかりだった。
それは、口にしなくても分かるだろうと言った意思表示だとシンドバットは感じ取ったが…それでも彼には引けない理由があった。
それこそがシンドバットがこの国に現れた目的でもあったからである。
「君は気づいているだろう?アイツらはこの国だけではなく、世界中の国を陥れ反乱、革命など国民同士の殺し合いを測っているんだ!!」
『えぇ、知っています。』
奴らの行動を知ってもなお、飄々としているアリババにシンドバットは苛立ちを感じながら声をあらげた。
「ならなぜッ!!君は奴らを憎まない?倒そうとしない!?」
(その力も、術もなにもかも君は持っている筈だ!!)
その時、なぜかシンドバットはまだ知りもしない、会ってまだ数日もたってない少年にそう感じ始めていた。
だからシンドバットは許せなかったのだろう・・・。
アリババの行動は、言動はすべて彼の希望通りにはいかなかったからである。
そんなシンドバットを見ていたアリババは静かに息を吐いて、そして口にした。
『ではあなたの言う通りに俺が煌帝国の弱み握ったとして、バルバットの国はどうなりますか?』
「ッ!それは・・・」
『今回の事で紅玉姫を捉えて…それで手打ちって訳にはいかないでしょう?というかあなたはバルバットと煌帝国の戦争が目的だ。』
「俺は・・・・。」
『アイツらをおびき出す…と言うのはそう言った事ですよね?戦争でもしなくてはだめですよね?』
「そこはもちろん我々も力を『力を貸して頂いても結局は私の国民が傷つく…私達はそれは決して許さない。』
アリババは真っ直ぐな目でシンドバットを見た。
もうこれ以上、言う事はないと言った表情でシンドバットを見た。
その強い意志を込められた瞳を見て、シンドバットは何も言えなくなってしまったのである。
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