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『あにうえーー!!あにうえはおらせますか?』

その声が心底嫌いだった。




その声の持ち主である突然現れた弟は汚い姿をしていて、私はソイツを一気に嫌いになった。

私の弟は今日も相変わらずの臆病者で、自分より小さなクズを見てビクついているのだった。

『はじめまして、あにうえ!!』

そう言ってニパッと綺麗な笑みをしたクズが差し出した手を私は容赦なく無視をした。

「お前の手になど、誰が触るものか汚らわしい。」

だいたいこう言った言葉を言えば、小さな子供はすぐに泣きだす

それを知っていた私は、弟が泣くのを待った。

だが・・・・。

グワシッ!!

「ぬおッ!!」

無理やりクズは私の手を掴んで、ニパッとさっきの笑みを浮かべたのだ。

そして、この時に気付いたのだがコイツの笑顔は近距離で見たら作り笑いだとすぐ分かった。

なぜなら・・・・。

『はじめまして。』

その目が一切笑っていなかったからである。

そして握手をする手がギリギリとありえない音で軋みだしたのだ。

その日に大泣きしたのは私のほうだったのである・・・。




それからと言うもの、アイツは私達の前に急にパッと現れては恐怖を植え付けて行った。

それも私達が何か、悪さをしたら何処へでも急に現れたのだった。

一番最悪だったのは、王宮に迷い込んでいた犬をいじめていたらその日は足を紐にくくりつけられて屋根からつりさげられた時だ。

(あの日は漏らしたことは黙っておこう)

そんな恐怖を味わった私は、もうその頃は無駄にあった自信や傲慢は見事にアイツによって跡形もなく粉砕されたのだった。

弟に至ってはアイツの足音がしただけで泣きだす始末だった。

そして恐怖から逃れるために私達は隠れ家を作ったのであった。

もちろん、弟の前では無力だったと言っておこう。





『お?ここに居られましたか、兄上たち。』

ギィッと重々しい音と共に現れたのは久しぶりに見る弟の姿だった。

あぁ、随分背が伸びたものだ・・・そう思いながらも自分の口からは違う言葉が出た。

「遅いぞ、愚かもの」

これが我ら兄弟の挨拶なのだ。

弟は昔と変わらずの笑みを浮かべた。




なぜなら、弟は絶対に私達を見つけるからであった・・・・。







私達が諦めて、もう悪さをしなくなった頃からアイツは俺たちを見つけてはいつも外に連れ出しに来ていた。

アイツはなぜか、生まれた頃から王宮にいる私達よりも王宮の隠し通路をしっていた抜け出すのには何の問題もなかった。

アイツはいつも町にいっては何もせずにただ歩くだけで、時間になれば誰にも気づかれないうちに王宮へと帰るのだった。

最初はそれを、なんてめんどくさいんだろうと思っていた自分には重要な授業があると言うのに・・・そう思っては口に出さなかった。(アイツが怖かったからである)

でも何時も町の風景を見ていると、ふとそこに居る人々が目に入るようになった。

自分以外の人間なんて目にも留めなかったが彼らにも生活や、家族、暮らしがあった。

そして笑顔がたくさんある町を見て、私は思わず口を漏らしてしまった。

「いい所だな、ここは・・・」

今まで口にした事のないセリフを言ってしまって、私はすぐに口を押えた。

この言ったことが弟に聞かれてしまったら、きっとからかわれるに違いないと思ったからだ。

だけど、私の思った反応と弟の行動は全く違うものだった。

『これが、あなたの守るものです。貴方が…王が、命をかけて守るものです。』

そう弟も私と一緒にポツリとだけ言ったのだった。

「そうか・・・。」


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