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何の抵抗もしないアリババはそのまま王宮へと連れ去られたのだった。

『・・・・・・・・・。』

アリババは無言のまま、数年ぶりに見る宮殿内を、見ていた。

顔見知りとすれ違えばソイツらと目が合った瞬間、信じられないような顔をするもんだから思わず笑ってしまうのは不謹慎だろうか?

と一人考えているアリババだった。

彼は元からこう言った性格なので、仕方がないと言えよう。

そして玉座のある謁見室へと連れ去られたアリババが最初に目に入れた人物は慣れ親しみのない男だった。

白い服に真っ黒な顔布を当てた大男…そいつはアリババを見ていた。

実際には顔布で男の顔は分からないのだが、雰囲気が視線がすべて物語っていたと言えよう。

アリババは男を見て、何も言わず何の反応も示さずにただ男を見上げるだけだった。

男は顔布を横にずらし、その顔をアリババに見せた。

「お前か…王族を名乗る不届きものは。」

そう言って重い声を出した男、アリババは無表情のまま男を見つめるだけだ。

そんなアリババの様子に男は苦虫をかみ砕いたみたいな苦い顔で、睨んだ。

「反論も何もなしか…お前は王族侮辱罪で」

『「死刑だ」って、言いたいんですよね。』

そこで初めて、アリババが口を開いた。

ニッコリと先ほどの表情とは打って変わった綺麗な笑顔で男を見ていた。

『たしかこの国って死刑には王の許可が必要なんだよね?バルカーク?』

アリババはその笑顔を男の後ろに控えていたバルカークに向けた。

「もちろんでございます。」

そう言って頭を下げたバルカーク。

キッと男に睨み付けられてもしれっとした表情をした。

だけど、男のその行動はアリババの声で終わった。

『アンタは?なんだい?』

優しげな声色の中にある鋭さに気付いた男はバッとアリババを見た。

「わ、私は王の相談役の者だッ!ご気分の優れない王の代わりに私がお前を裁くのだッ!!」

大声で宣言した男にアリババはただ一言、『ふ〜ん』とだけ言った。

『だってさ、バルカーク。俺を死刑にしろってさ』

「無理ですな」

そうキッパリといったバルカークを男は怒鳴りつけた。

「お前、私の言う事が聞けぬと言うのか!!」

バルカークはまるで不快なものを見るように、男を見て言った。

「私はこの方を殺すことはできません、王がご不在で弟君もいなくこの人が今この場で最も地位が上なのです。」

そう言ってバルカークはもう男を見る事は無くなった。

男はバルカークを無視して他の兵に言うつもりだった。

カランカラン

口を開こうとした瞬間、その音はなった。

男がハッとして見てみれば、床に転がった剣だった。

何事かと理解する前に、同じ音が一つ、二つ、三つと続いて行った。

『あーあ。誰も相談役様の言う事聞いてくれないのね』

そう言ったアリババの馬鹿にした口調が、彼を怒れさした。

それが兵の持つ剣だと気づいた、男は顔を真っ赤にし床に落ちた剣を拾った。

「役立たずな兵どもめッ、それなら俺がヤルまでだぁああああああああああ!!」

その剣をアリババに振り下ろそうとした









カランカランとまたその音が響く。

その場にいたのは立っているアリババと、蹲っている銀行屋であった。

アリババは銀行屋を見下すように、見つめた

『誰も、俺を殺してくれないなら行っていいかい?』

そう言ってアリバババいつの間にか拘束していた縄を外したのであった。

「これは一体どういう事?」

ちょうどよく現れた紅玉を見て、アリババはニッコリと笑った。

そして彼女の手を取って、歩き出す。

「ちょ、ちょっと!!」

驚いている紅玉を無視してアリババは進んで行った。

『今からご説明するんで、こっち来てください。』

そう言ってアリババは急にピタリと立ち止まり、背後にうずくまるマルッキオを見た、

無機質な目で・・・。

『バルカーク、銀行屋殿をお連れしろ。・・・・・・今の所は丁重に扱え』

「は。」


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