33
『アラジン、ウーゴくんの笛を貸してくれ』
一通り、懐かしいメンツとの会話が終わった後に俺はアラジンに言った。
俺の突然の申し出にアラジンは驚きに丸い瞳を更に真ん丸にしたが、何も聞かずに「うん、いいよ」とそう言って俺に笛を渡した。
その様子をシンドバット王達が探るような視線を送っているが、なにぶん無視して行動した。
笛のウーゴくんのジンのマークを見てみる。
『・・・・・・・・・・・。』
印が前見たときと違って薄くなっている。
さっきの腹チラ少年との戦いの時のダメージが多いと見えた。
このままでは・・・・・・・。
「アリババくん?」
アラジンの呼ぶ声でハッとした。
心配そうに俺を見るアラジンの頭をグリグリと撫でた。
『心配すんな。』
そう言ってアラジンは子供らしい表情で「うん!」と大きく返事した。
俺はジンのマークの所を手で握り、そして目をつぶって集中した。
俺の行動に何人の目線が刺さってくるが、そんな事を気にしちゃ終わりだ。
そう思って集中した。
(まだ…お前にはやる事がある。アラジンの傍にもっといてやれ)
「・・・・・・・・・・・・・がとう」
その声が僅かに聞こえた瞬間、目を開けてアラジンに笛を渡した。
マークは元通りとはいかないが、濃くなりその存在を示していた
アラジンは何も聞かずに「ありがとう」と言って笑った。
それは異様な光景だった。
アリババと名乗った少年はアラジンのジンの笛を掴んだのだ。
残念ながらシンドバットの達の中には誰もルフを見える物は出来なく、それをただ見守るだけだった。
なにをしたんだ?
その疑問ばかりだった。
だけど、さっきまで薄くなっていたジンのマークを濃くしたのは何かしらの力を送ったと見える。
マギでもない目の前の少年がそんな事は出来るはずもない。
シンドバットは真意を聞くために口を開こうとした。
「君はいったい「動くなッ!!」
そんな瞬間だった。
アジトに一斉に何人もの衛兵が入って来たのであった。
突然の来訪者に回りは驚くばかりで、只一人アリババだけはそれを見てニヤリと笑った。
『 』
アリババが口から発した言葉は周りの声で聞こえなかったが、口の動きで何を言ったのかはシンドバットには分かった。
『思った以上に早いな』とそう言ったのだ。
これを予知していたのだろう、目の前の少年はとシンドバットは理解した。
衛兵の中のリーダー格的な男はアリババを見て怒鳴った。
「お前かッ!!畏れ多くも、アリババ王子の名を語った不届きものはッ!!貴様を逮捕する!処刑は免れない!!」
そう言った男の発言に回りは驚く中、只一人アリババは相変わらず笑っていた。
「アリババッ!!」
カシムがアリババの前に立って、彼を庇うように腰に差していた剣を抜こうと手を駆けた。
でもアリババがその手を抑え、カシムの耳元でつぶやくと自分から付いて行った。
『いいですよ。』
そう一言言って、アリババはつれてかれた。
「アリババ君ッ!!」
アラジンが叫び、アリババは笑った。
『待ってろ、アラジン。』
[*prev] [next#]