14 貴方が好きなのです
あれから三年たった。
俺は君よりも大きくなっているだろうか?
俺は・・・―――。
少し遠い視線の先で母親の姿を見つけた。
何やら楽しげに誰かと話しているのが見える、だがその人物はここからだと店の看板でよく見えなかった。
黒い長い髪がチラッと見えたので、女だろうと推測した。
道端で母親に捕まるのはいろいろと面倒だと思って、ちょっと遠回りだが違う道に行こうと思って後ろに引き返そうとした時であった。
「――――ちゃん」
忘れるはずがないその名前が呼ばれたときバッと振り返る。
母は相変わらずの笑顔で隣の女と喋っている。
(まさか・・・・帰って来たのか?)
その考えが自分の頭に過った瞬間、どうも表現できない感情が溢れた。
ドキドキと胸が震えている・・・緊張しているのだろうか?
そんな事よりも本当に彼女なんだろうか?
確かめたいけど、確かめたくない自分がいる。
過度に期待しすぎて、もし違かった時の落胆が計り知れない。
そう思っていると目の前の母と視線が合った。
パァアと目を輝かせた、そして隣の女になにやら興奮気味に話しかけ俺を指差した。
「ホラっ承太郎よ!!」
そう言った母親の言葉に隣の女はバッと後ろを振り返って俺を見た。
そして振り向くことでやっと俺の目にも彼女の顔が見えることができた。
『アンジェ…。』
三年ぶりに言われるその呼び名に懐かしさを覚えつつ、間の前の女を見た。
(沙羅・・・・。)
三年ぶりに見る彼女は大人になっていた。
容姿は三年前と変わったが、灰色の意志の強いその瞳だけは変わらず俺を真っ直ぐに見つめている。
ビックリとした顔をした彼女がだんだんと頬を緩め、笑顔を作って笑った。
『お久しぶり』
見たときの第一印象は
「シュワルツ・ネッガー?」
私の予想の斜め上の成長をした承太郎。
彼は良くも悪くも母方の祖父に似たのだろう。
あの人もガタイが良かったからな…。
そう思いながら、目の前のアンジェを見つめた。
驚きに目を見開く姿に思わず、笑みが零れそうになる。
そして気づいた。
あれだけ夢見たディカプリオになってないのに、全然ガッカリしないなと。
だがその答えはすぐに出た。
まぁ、私はシュワちゃんよりもディカプリオよりも「アンジェ」が可愛くて仕方がないんだと思う。
いや・・・やっぱり顔がイケメンだからかもしれない。
こりゃ、周りの女の子がほっとかないなと思いながら私はほほ笑んで言った。
『アンジェ、お土産いっぱお買ってきたよ』
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