14




彼、シーザー・A・ツェペリは見ている事しかできなかった。

壁に吸い込まれる父親、その光景が父の死がすべて信じられない事ばかりであった。

「とうさんッ!!」

彼は父を呼ぶが、彼の言葉に返すのは静寂のみであった。

それが今起こったのは現実なんだと、彼に実感させたのであった。

『少年?』

だけど彼の言葉を返すものが現れた。

バッとそちらの方を向けば、そこには一人の若い女がいた。

シーザーはバッとその女のもとへと言った。

「お願いだッ!!父を、父さんを助けてッ!!」

目の前の女に助けを求めてもどうにもならない事は分かっている、だけど彼には冷静さはなく

もはや本能だけで動いていた。

そう…この人ならという本能が彼を動かしたのであった。

最初は驚いた女はシーザーの様子に事の重大が分かったのか、真剣な顔をしてシーザーに聞いた。

『彼は?』

そう聞かれて、シーザーは父が吸い込まれていった壁を指さしたのであった

それを見た女は壁にいる男達を見て、目を見開いたが何も言う事はなかった

逆に、シーザーを見て彼の頭を優しく撫でて躊躇することなく進んで行った。




マリオに呼び出された場所に向かったら、そこには昼間に出会った少年がいた。

私に気付いた少年がバッとこちらに向かってきた。

昼間の報復かッ!!と思ったら、なにやら様子が違った。

「お願いだッ!!父を、父さんを助けてッ!!」

そう言われて、予想がついた。

彼はマリオの息子、ツェペリさんの孫だと分かった。

それなら波紋が使えるのもうなずけた。

『彼は?』 と私が聞くと、少年は壁を指さした。

そこに居る男達の姿に息を飲んだ。

明かに人の形をもったナニカが壁と一体化している。石膏でも彫刻でもないのは一目で分かった。

それはどこか自分と・・・・いや、アイツに近いと感じた。

少年を後に、私はマリオが吸い込まれた跡の前に立ってそこに腕を突っ込んだ。

もちろん、私を取り込もうといろいろやろうとしてくるが、そこは波紋を使って封じる。

『バットロマンス』

名を呼べば、腕から伸びて行ったツタはマリオを掴んだ。

自分の手に届く位置についたら、その手を取って引きずり出した。

(ふぅ、楽勝だな。)

そう思っていると少年がマリオに飛びついた。

「父さん、父さん!!」

喜びの声を上げている少年をほほ笑みで見つめていると、急に寒気が走った。

あぁ、なんか結構前に感じる感覚だ。

「・・・・・お、まえ。」

地を這うような声が聞こえた、私の背後…つまり壁からだ。

ガシッと手を掴まれて、バッと振り向かされた。

バチッっと音が鳴るほど、目線があった・・・合ってしまった。

あ、なんかやばい気がする。と直感で思った。

『は、ハロー?』

なんとまぁ、その場に似合わない挨拶だと思う。

私がそう言えば、奴は笑った。

笑ったのだ。

アイツが私を見る同じ目で。

『ッ!!一生、眠ってろッ!!』

それは50年前のトラウマによる反射神経と言ってもいいだろう。

掴まれた腕を振りほどき、今度は私が奴の腕を掴んで壁に打ち付けた。

波紋入りで行えば、さっきと同じように壁と同化した。

そして、全力で波紋を込めてやれば石化は進んで元に戻って行った。

「・・・・・・・・お前を・・・・てにいれ・・・るぞ」





『あれ、なんかデジャビュ?』
(モテ期再来・・・ただし変態に限るパート2)

<後書き>
孫と祖母は似る。

[*prev] [next#]






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -