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「ハッ!フフフ、ハハハハッ!!」
どうしようもない無言が続いた二人だったが、突然ジョセフが笑いだした。
エリナはその様子を咎めようとも、悲しもうともせずにただ黙ってジョセフを見ていた。
ジョセフは未だに笑い続ける、そしてその声は段々と小さくなってついに止まった。
「ハハハハハハ・・・・はぁ。」
大きくため息を吐いて、手で顔を覆ってまた無言になった。
「・・・・・・・・・・・・。」
エリナはなにも言わず、ただ自分の孫を見ていた。
そして何分かたったか分からないぐらいの沈黙が続いた後にジョセフはゆっくりと口を開いた。
「…父さんはいらない子だったのか?」
普段のジョセフなら考えられないほどのか細い声だったがエリナは聞き逃さず、そして答えた。
真実をエリナはゆっくりと語りだした。
「18年前…丁度、貴方が生まれてばかりの頃にジョージにも同じ質問をされたわ。」
そう言ったエリナの言葉にジョセフを顔を上げて、エリナ見て静かに聞いた。
「自分は要らない子供だったのかと・・・・。」
静かに自分を見つめるジョセフを真っ直ぐ見たエリナは言った。
「だから私はあの日と同じ答えを言うわ・・・」
「・・・・・・・・・・・・。」
エリナは首を振って言った。
「いいえ。」
そう静かにエリナが答えた瞬間、ジョセフは怒鳴るように言った。
「ならッ!!」
そう言って顔をクシャッと歪めて、また手で顔を覆った。
「・・・・・・・・・なんでッ!!」
今まで、決して弱音を吐かない孫の震える声を聞いてエリナは胸が張り裂けそうな想いだった。
でもエリナは孫の問いに答える事はできなかった。
本当は答えたかったッ!!
どれほど、ジョナサンが貴方たちを愛しているか・・・。
どれほど、自分を犠牲にして貴方たちを守っているか。
声を大にして言いたかった、でも言えない。
それは私の役目ではないから…。
エリナはギュッと自分のドレスを握る力を込めた。
「その理由を私に答える事は出来ません…それを言う資格は私にはない。それはジョナサン本人から聞きなさい。そして…」
そこでエリナは言葉を止めた。
鼻の奥がツンとなる感覚がして、エリナは必死に耐えた。
ここで泣いてはダメだ、それはもはやエリナの意地であった。
ジョナサンはこれ以上、辛いのよ。私は泣いてはいられない。
「そして…これだけは覚えときなさい。ジョナサンは」
「ジョナサンは決して恥じな生き方はしていない。あの人は何処までも真っ直ぐで、綺麗で、強い人よ。」
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