11 Q,我慢できないときってあるでしょう?





井坂さんの恐怖の予言から数日経過して私はうっかり忘れ去ってしまった頃にやってきてしまいました。

その日は入稿の締切日で屍どもが転がるエメラルド編集部で起きた事件であった。

「なんだとッ!アシスタント全員が寝込んだ!?」

高野さんの大声が響いた。

今、高野さんが喋っているのは一之瀬絵梨花だ。彼女とは新人編集者と新人漫画家の新人コンビからの付き合いだ。

たしか今月の進み具合が押しているって聞いた。

私はハッとして時計を見た、時間は10時か正直危ないと思う。

そんな中、一人の邪魔な男がやってきた。

「高野ッ!!」

その声を聞いた瞬間、イライラはマックスになった。

どうしてこのくそ忙しい時にやってくるんだ!!

「今月の一押し作家が落ちるって本当か?」

どうして落ちる前提で話すんだアホが!!

手元に会った資料がグシャリと握りつぶされる。

それを見た木佐が「ヒィッ!!」と声を上げたが無視だ無視。

「まだギリギリ間に合う。」

そう言った高野さんに私のイライラは少しだけ緩和された。

おぉ、さすが高野さん。もっと言ってやれ。黙ってろとか重点的な感じで言ってやれ!!

横澤の野郎はその発言に眉間にシワを寄せた。

「今日は連休の最終日でどの道も渋滞している。原稿が間に合ったとしてもここまでに届かない。」

あぁ!!どうして、連休なんて私に意味のないものが世間にあるというのッ!!

つぶれろ、燃えろ、消えろ!!

そう頭の中で思っている私に一言だけが聞こえた。

「落とせ。」

その声が妙に良く聞こえた。

私はゆっくりと目線を編集長の席を見た。

「こういう事はサッサと決めないと、後でゴタゴタする。今回は落とせ。」

・・・・ちょっと待ってよ。その言い方ってまるで自分たちの都合でしょう?

アンタの言い分は分かる社員が会社を第一にするのは当たり前だ、だけど出版社は作家あっての物でしょう。

一つ一つの作家さんが神経すり減らして作ったもので私達はご飯を食べさせてもらっているのッ!

それを簡単に他の手も探さずに一言キッパリとまだ諦めていない先生が聞いている電話口でその言葉を言うっていうの!!

「ちょっと待ってください!」

私が口にする前に電話から声が聞こえた。

一之瀬の声だとすぐわかった。

「少しだけ待ってください、まだ間に合います・・・・そうだ。綾部を綾部に代わってください。彼女ならッ「無理だな、綾部は今はいない。アイツは休暇中だ。そもそも期日を守らないのが悪いだろう。高野、落とせ」

「・・・・・・・・・そうだな。」

珍しく必死な声の一之瀬の声を簡単に切った横沢に私の目が見開いた。

ガタッと椅子から立ち上がった。

回りにいた羽鳥、木佐、美濃はギョッとした顔をした。

そんなの気にしないでズンズンと編集長の席へと近づいていく。

私に気付いた横沢は眉間にシワを寄せて何かを喋る前に私は高野さんが喋る電話に手を伸ばし、スピーカーボタンを押した。

「お、おいッ。」

高野さんの声を無視して私は電話に顔を近づけて喋った。

『一之瀬、あと何枚?』

私がそう言えば、電話の向こうでため息が聞こえた。

「遅すぎよ・・・・・あと10枚。」

『その言葉、そのままお前に返す・・・・30分後にそっちに行く。原稿を渡した後の事なんてお前は何も心配すんな、私が絶対に間に合わせる。』

そう言って回りから避難の声が上がる前にすぐに電話を切った。

「バイトが自分のテリトリー抜け出して勝手な事言ってんじゃねぇ!!」

真横で聞こえたのは横沢の声だった。

反論するのも時間の無駄だと思ってすぐに携帯を手にとった。

電話相手は井坂さん。

『もしもし、い「聞いてんのかッ!!」

ガシッと手を掴まれて私の足が止まる。

プチンと何かが切れる音がしたのは仕方ないと思う。

『テリトリー抜け出してんのはどっちだ?』

想像以上に低い声が自分の口からでて、珍しく自分が切れたんだと思った。

「なんだと?」

『営業の人間のアンタが編集の事まで口に出してんのは、テリトリー抜けでてるって言うんじゃないですかね!!それともそんなに高野さんが心配なら営業なんてとっとと辞めて保護者として入社したらどうですか?』

「・・・・・・・・・・・お前ッ!もういっぺん行ってみろ!!」

向こうも向こうで怒ったらしい、胸倉を掴まれた。

慌てて高野さんが止めようとするが私の口が先に開いた。

『営業にも編集にも中途半端に首つっこんで迷惑だって言ってんだよ!!』

「ッ!!」

そう言った瞬間、奴の動きが止まった。

心当たりがあったらしい。

胸倉を掴む手をバッと振り落して電話を切った。

もう必要はない、なんせ向こうから態々来てくれたのだから。

『すみません井坂さん。どうやらあなたの言った通りになったようです。』

目の前に立っていた井坂さんに私は言った。

彼は今の状況がすごく楽しいようで、ニコニコと楽しげに笑ってた。

「だから言っただろう、綾部。お前にバイトのマネなんて無理だ。お前は根っからの編集者にもうなっちまったんだからな・・・。」

確かに、バイトならそのまま見過ごすのだろうが私は編集者だ。

黙って見てることは出来っこなかったのだ。

「綾部?」

私の名前に反応したのは高野さんだった。

私は井坂さんを見て行った。

『じゃ、井坂さん。後の説明よろしくです。』

「おま、そのために俺を呼んだのか!!」








『あたりまえです。だいたい私達が顔合わせできなかったの井坂さんの策略だって私、知っているんですから。』

A.うん、ある。でもその時にとって行動に後悔はしないと思う。

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