8 Q.この仕事で培った物はなんですか?
バイトとしてエメラルド編集部に見事、侵入した私。
仕事をこなしながらも新編集長の仕事ぶりを見ていた。
さすが前の会社でも評判通りによく働き、頭の回転が速く、できる人だった。
いい編集長もらったな、井坂さんには後で感謝しとこうと思っていた時だった。
「高野はいるか?」
「高野さんなら作家さんの所に行きましたよ」
新編集長の名前を呼びながら1人の男がエメラルド編集部にやって来た。
(誰だ?)
見覚えのないがここ最近よく見かける人間がやってきた。
私は横にいた羽鳥の聞いた。
『あれ、誰?』
「営業の横澤さんです。」
その言葉に私は眉を寄せて言った。
『営業?そんな奴がなんでわざわざこっちに来る?』
私の休暇前は営業の人間なんて忙しいからめったに来ないし、話すときは内線で話していたと言うのに。
私が休暇明けで戻ってきてからよく見る人物であった。
「なんでも高野さんの大学の同級生だったらしくて、前の会社からウチ(丸川)に引っ張ってきたのは彼なんですよ。」
心配なお友達をわざわざお忙しい身で来たってわけか。
なるほどねって…なる訳あるか?
暇か?奴は暇なのか?と口で言いそうになるけど、必死で胸の内で留めておく。
なぜならその本人様がすごい不機嫌そうな顔でこっちを見ているからである。
無視の方向で私は仕事をしようと、目の前の仕事に取り掛かる。
バイトの仕事ってのは楽なもんでもちろん、高野さんの目がない所では本来の業務を行ってい「おい!」
…空気読めや!!こっちがわざわざ関係ない話題持ち込んでお前がこっちに来ない流を作っているんだろうが。
死語で悪いがKYだ。それもMKY(マジで空気読めない)だ。
だがそんな事を顔に出さないで私は振り返り、笑顔で答えた。
『なんでしょうか?』
そう振り返れば案の定、横澤の暇野郎がいた。
「お前、誰だ?」
初対面の人間になんだその上から目線はよぉ。(イラッ)
周りの目がハラハラしながら私たちを見ていた。
大丈夫だ編集部諸君よ、さすがに私でも毒舌を吐いたりしないぜ。
『バイトの高橋です。』
「…そんな話は聞いてねぇ」
どうして編集部の話をお前(営業部)が知らなくちゃいけないんだよ。
『ハハハハ…私に言われましても』
「まぁ。いいが」
いいなら聞くんじゃねぇよ!!
「お前、男に色目つかってんじゃねぇよ」
『は?』
私がその発言に唖然としている間に言った張本人の横沢はとっとと帰って行った。
その場にいた全員が寒気に襲われる中、一人だけ綾部沙羅は無言で仕事をしていた。
手の速さは尋常ではなく早く、的確な仕事さばきは主事である。
だが誰もその姿に惚れ惚れするのではなく、怯えていた。
それは彼女が仕事が早いときはそれと比例して彼女の機嫌が悪いときだった。
プルルルルルルルル
デスクの電話が鳴り、沙羅は片手で受話器を取り、もう一方の手で作業をこなしていた。
『はい。丸川書店、エメラルド編集部ですが。』
「印刷所の者ですが、もちろんもう原稿は上がってますよね」
そう言われて沙羅は目線を上げ、机のカレンダーを見た。
おかしい。どう考えても早すぎの催促の電話に沙羅はクビを傾げ、隣の羽鳥に言った。
『羽鳥、もう印刷所から電話きたんだけど。どうゆう事?』
「どうやら、印刷所のほうに綾部さんが休日の情報が入ってしまって、融通が利かなくなりまして…」
『…あぁ。そう』
そう言って沙羅がアクドイ笑みをしたのを回りは不運で見てしまった。
そして綾部は受話器を取って言う。
『今までのより少し、早すぎませんか?』
「それはですね、前回の綾部っていう編集者が無理を言ったからそうなってるだけでして、ちゃんとした日は・・・・その声はまさか綾部さん?」
私はニッコリと答えた。
『はい、綾部です。おかげ様で休暇は終わりましたよ。今日から復帰なんでよろしくお願いしますね。』
そう言って沙羅は笑顔から数段、声を低くして喋った。
『今度、締切日変えたらお前の秘密彼女にバラすから覚悟しとけ』
「ちょ、待ってくださ・・ガチャ
A. 印刷所との交渉術かな(脅しです)
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