5 Q.幸せってなんですか
***キラキラキラ***
彼女、綾部沙羅は今日は一段と機嫌が良かった。
なぜか?
『じゃぁ、私は休暇だからあとはよろしくね。みんな☆』
「「「は〜〜〜〜〜〜〜〜〜い」」」
そう、彼女はやっと念願の10日連休は今日からなのだ。
久しぶりの連休に喜び、キラキラする彼女とは裏腹にエメラルド編集部に残される男3人は沈んでいた。
今まで彼らはノンストップで彼女にしごかれ、たった数週間で「使える編集者」に育てという扱きに耐えたからである。
「気絶できるなら気絶しているさ。」と後日、木佐はこの数週間を振り返り言うだろう。
そんな彼らの様子なんて気にも留めず彼女は編集長の席にある程度の資料や、大量の少女漫画本を置いて行った。
それを見た美濃が彼女に聞いた。
「それ、明日来る編集長のですか?」
『うん。引き継ぎ用の書類とか…本当は会って直接やった方がいいんだけど。予定がお互い合わなかったみたいだからさ』
本当は新編集長さんに会って、やる事があったんだが何分、忙しくてお会いできなかったのだ。
その変わり、井坂さんに頼んである程度必要な書類とかは送ってもらったので大丈夫であろう。
ついでに参考になる少女を数冊、ぐらいは送っておいた。(100は優に超えていたかもしれないが…)
『使う順通りに置いといたから、高野さんに教えておいて。』
「はい。」
そんな会話を美濃としているとバンッと机が叩かれる音がして、自然とそっちを見た。
そこには木佐が興奮気味に私を見ていた。
「綾部さんだけズルいッ!!俺も休暇が欲しい!!」
そう言った木佐に周りは顔を青くした。
(余計な事を言うんじゃない木佐!!)
とその場にいた者は誰もが思ったことだろう。
そんなみんなの心中を考えない木佐は更に続けた。
「俺も休暇が欲しい、欲しい、欲しい、ほshバァアアン!!
そんな木佐の顔面に見事、少女漫画数冊が命中した。
そのまま勢いで木佐は椅子ごと真後ろに倒れた。
パン、パン
少女漫画を投げた本人、綾部沙羅は周りの真っ青な反応と打って変わって笑顔でいた。
まぁ、外見だけだが・・・・。
『じゃ、後はよろしくね☆』
彼女は何のあとくされもなく、優雅にエメラルド編集部を後にした。
自宅に帰る途中、ふと本屋に寄ってみようと思った。
せっかくの休暇なのだ、たまには一読者として本を読もうと思って書店に入った。
適当に文芸本から見て言って、出版会社関係なく、気になる本を手に取ってはかごに入れていく。
文芸コーナーをあらかた見て、漫画コーナを除いてみた。
『スゴッ…』
ここの書店は漫画に力を入れているんだなと、ディスプレイを見たら一目瞭然であった。
最近、おススメの漫画に店員がコメントを書いてあるのは最近の定番だが、ここの店はそれももちろんだが、漫画のイメージにあった飾り付けなどをしている。
私以外のお客さんもその漫画コーナに目を取られて、本を手に取っていた。
私も思わず、手に取ってしまった。
『うちの本だ…。』
それはエメラルドの本だった。
うわー周りのキラキラに目を取られて気が付かなかった。
並べられた本の横に書いてある店員のコメントを見て、感心した。
よく読んでいいるなぁ、この人。
そう思いながら私は雪名と言う名前を目にした。
綺麗な名前だなぁ、今度のヒロインの名前に提案してみようかなぁ?
とボーっと考えていると後ろに人の気配を感じ、自分が邪魔になっていると思った自分はサッと横によけようとした瞬間だった。
「その本、おもしろいっすよ」
『へ?』
頭上からの声につられて顔を上に向け、声の主を見た。
(うわぁ・・・・)
*****きらきらきら*****
光り輝く青年が私を見下ろしていた。
(久しぶりにキラキラするイケメンを見た。)
そう思いながら私は彼を見つめた。
「すいません。驚かしちゃいました?」
私の反応に焦ったような青年に私はちゃんと体を彼に向けて答えた。
『ううん。勝手にこっちが見てただけ』
「?」
首を傾げる仕草な彼に普通の女子なら卒倒するが、あいにく彼女は違った。
(写真を取らせてもらって、今度の相手役のモデルにしようかなぁ…。)
完璧に職業病が発症していた。
マジマジとイケメンを観察して、構想を練っているとふと彼の胸にはってある名札に目が入った。
雪名皇
その名前にピンときて自然と口が開いた。
『もしかして、コレはあなたが書いたの』
そう言って私はディスプレイを指さした。
それを見た彼は照れ臭そうに笑った。
「そうです。おかしいですよね、男が少女漫画を読んでコメントしてるなんて…。」
そう言って笑う彼に私は言った。
『別にいいんじゃない?』
「え?」
彼は私の返答に驚いた顔をした。
『男が少女漫画呼んだっていいんじゃない?女だって少年漫画見て熱くなりたい時だってあるんだからさ、男だって少女漫画みて心を和ましてもいいんじゃん』
そう言いながら、私は内心彼に感謝した。
そうだ。折角、編集部に男がいるんだから少女だけではなく男子から見ても面白い少女漫画ってのは面白いんじゃないだろうか?
男が求める恋もあっていいんじゃないかと私は心の中で企画書を練っていれば。
グワシ
『は?』
「そうですよね!!」
いきなり手を掴まれて何事かと思えば、彼がキラキラとした笑顔で私に言った。
(まぶしッ)
光、三割増しな感じの笑顔はすさんだ自分の心によくしみた。
『ふぅ〜。やっと家に着いた』
途中、大幅な寄り道をしてしまったがやっと自宅へと打どり着いた。
あの青年はもうアイドルになれるんじゃないだろうかと思えるほど、キラキラと輝いていた。
癒されるっていうか・・・逆に疲れた。
「あ、あのッ!アドレス聞いていいっすか?」
イケメンが顔を真っ赤にして聞かれて、誰が断れようか・・・。
さぁ、早く寝ようと自分の部屋に向かって歩いていると
『引っ越しか?』
見覚えのあるつなぎ姿に引っ越し業社の人だと分かった。
どうやら私の部屋の隣に誰か、引っ越してきたらしい。
誰だろうなと頭の片隅で思いながら、私は部屋のドアを開けた。
A.丸二日寝られることかな
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