2 Q.甘い話には気をつけろ!!





彼女、綾部沙羅は死んでいた。

否、訂正しよう死んでるみたいだ。

やっと修羅場を乗り越えた彼女、途中で大物小説家の駄々が発生したが小説家を締め上げ決着。

大幅な締切を守らない作家ももちろん締め上げ、作家を脅して原稿を分捕り、印刷所騙して締切日を遅らせて今月号の本も無事(?)に完成した。

昨日、ホッとした途端、机に突っ伏して彼女は眠り日をまたいでしまった。

♪〜♪〜〜〜〜〜♪♪〜♪♪

どこからか携帯の着信音が鳴り響き、ムクリと彼女、司は追い出した。

まだ寝ぼけ眼の彼女はガサガサと携帯を取り出し、ボサボサの髪をかきあげながら電話に出た。

『はい。綾部です』

寝起きのせいか声が掠れていた。

『・・・・あぁ、今起きた。・・・・うん、大丈夫。・・・・分かった、そっち行く。・・・・・うん、じゃ』

さぁ、大先生のお呼び出しだと彼女は机から立ち上がり、シャワーと着替えのためロッカールームへと向かった。



数分後

彼女わシャワーを浴び、上機嫌だった。

昨日は寝てしまってはいれなかったし、修羅場中は入れない機会が多く入れたとしても5分しか時間がないのだ。

ホクホクと嬉しそうに歩いていた彼女を一人の男が呼び止めた。

「沙羅ちゃん

ピタッと彼女はその声に立ち止まり、ゆっくりと振り返った。

殺気つきで

『井坂さんは私を殺すつもりなんですね。』

「ん?」

殺気が出ているのにもかかわらず井坂はのんきな笑顔で答えた。

『漫画編集の仕事は私の仕事なんで喜んでしますけど、どうして文芸の編集までしなくちゃいけないんですか?』

そう言って彼女から魂がでそうなくらい気持ちのこもったため息が出た。

『ただえさえうちの編集部は編集長いないし。私以外の編集者の人の今月いっぱいで辞めちゃうし。それに加えて奴のお守なんて・・・相川先輩が兼任ってのは無理なんですか?』

そう深刻そうな顔で質問した彼女に井坂は笑顔一つで答えた。

「ん〜。無理!!」

ビシッ

彼女の頭には怒りマークが張り付いたことだろう。

「だってアイツどうしてもお前じゃないと、もう丸川書店(ウチ)で小説書くの辞めるって言ったんだぜ?それはウチにとっては大きな打撃になるんだ、たのむ綾部。」

そう言って井坂は彼女の肩に手を置いて、最大の決め顔で言った。

「我が数千人の社員をお前の肩に乗っているんだ」

『そんな事言っても無理なものはム♪〜♪♪〜〜〜

彼女の言葉を遮るように彼女の携帯から着信音が鳴る。

それを聞いた井坂は笑みを深めて言った。

「ほら、噂をすれば先生から最速の電話だよ。行っておいで・・・」

そう言うと彼女はまたため息を吐いて『はい』と渋々返事をして井坂に背を向けて進んだ。

その後ろ姿が漫画で表すならズーンとした文字が書いてありそうなほど、沙羅は落ち込んだ様子だった。

さすがにこのままの姿げアイツの元に行かすと怒られるの俺なんだよな。

そう思いながら井坂は内心笑っていた。

本当、アイツって沙羅には弱いよなぁ〜。そのわりには自分が困らせるのは好きなんだよな。

とそう思いながら、どうやったら彼女の機嫌を直せるか考え、思い出した事があった。

「あっ!そうだ」

後ろから聞こえる声に沙羅は足を止め、後ろを振り返った。

その目が死んでいて井坂は笑った。

『なんですか?』

「そんな沙羅たんにいいお知らせがあるんだ。」

『お知らせ?』

「来月から新しい編集長がやてきます。」

その言葉に沙羅の死んだ瞳が少しだけ輝いたのを井坂は見逃さなかった。

(よしっ)

「更に使える編集者が来ます。」

『え?』

声を出して反応するほど、彼女の目に光が戻った。

(最後に極め付け・・・)

「頑張ってくれた沙羅たんに来月から10日間休暇をあげます」

休暇をあげます(エコー)

休暇をあげます(エコー)

休暇をあげます(エコー)

ドーーーーン!!

(決まったと)と井坂は思った。

さすが落としの井坂と言われるだけがある。

『・・・きゅう・・か?』

「そう」

『本当に・・・休暇くれるの?』

「もちろん。」

『10日間も?』

コテンと子供みたいに首を傾げた沙羅に回りのものは驚いた。

もちろん井坂もその姿に笑みを作りながら言った。

「当然だろ。」

そう井坂が言った瞬間だった。

**キラキラキラ**

彼女の死んだ目は一瞬にしてどんな宝石よりも輝いていると言ってもいいぐらい光を取り戻していた。

それを見た井坂はバッと手を広げた。

それを見た主はそこにひきつけられるように小走りになった。

井坂さーーーーーーーーーーーん

沙羅たーーーーーーーん

二人のあつい抱擁まであと一歩って所で主は止まった。

『もちろん裏がありますよね。』

「うん。」

さっきまでのメルヘンな空間は一瞬でなくなり、眉間にシワがよる沙羅とそれを楽しそうに眺める井坂がいた。

『なんですか・・・。』

疑いの眼差し満載で見た沙羅に井坂はにこやかに笑って答えた。

「来週から3人送ってやるからさ、教育してあげてよ。」

それを聞いて沙羅は目を見開いて、そしてニッコリと笑って答えた。

『先ほど、使える編集者を入れるって言ったじゃないですか』

とそう言えば、井坂は軽やかに答えた。







『お前が使えるように育てるんだろうが』

ビシッ

沙羅の動きは綺麗に止まった。

(もちろん井坂はこの後電話で文句を言われるのであった。)



A.逃れられないものもあるのさ。

(秋彦、ひどいと思わない?井坂さん私を騙したのよ)

(へぇ、どんな)

(優秀な編集者をやるって言ったから期待したのに、お前が優秀に育てろって。これってもう詐欺よね詐欺!!)

(よしよし)

(10日間休暇もらえたって、それまで私が大丈夫かって話よ!!)

(10日も休日もらえるのか?)

(そう、久しぶりの長期休暇よ。)

(じゃぁ、うちにこい)

(なんで?)

(美咲がお前に会いたがってるし、どっか出かけよう)

(本当!?)

(あぁ、俺もそれまでに仕事おわすから)

(さすが秋彦!!井坂さんとは違ってあんたは私を裏切らないわ!!)

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