25
目をパチリと開けば、殿下の顔が見えた。
『・・・・殿下?』
殿下は私と目が合うと、ほほ笑んだ。
「よかった、アントワネット。本当に良かった。」
そう言ってイケメンスマイルの殿下を見ながらボーっとしていた私はハッと気が付いて体を起こした。
『ここは?もうベルサイユに帰りましたか?』
そう言った私に殿下は苦笑いをなさった。
その顔が不思議で首を傾げれば、陛下は私に手を差しだした。
「さぁ、行こうか。アントワネット・・・。」
『・・・・・はいッ!!』
私はその手を笑顔でとった。
殿下と共にバルコニーに立った瞬間、言いようもないどよめきがたった。
ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人々の声と共に拍手の音が聞こえ私は見た。
国民が笑顔で私と陛下を見ていたのだ。
「アントワネット様!!」と国民が私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
これがフランス国民なのだ、私の・・・アントワネットのフランスなのだ。
それを見た瞬間、ゾワッと全身に鳥肌が立つ。
領主の時とは違う、国を背負うとゆうのはこういう事なんだと改めて実感させられた。
自然とドレスと掴む手に力が入る。
目に映る人々の顔のをちゃんと見る。
これを私は守るのだ、私はこの人々を・・・アントワネット様も殿下もすべて守るのだ。
『殿下・・・。』
静かな声は殿下に届くだろうか?
だけど殿下の耳にはちゃんと私の声が聞こえていて、殿下は「なんだい?」と聞き返した。
『私はここにこの日に、殿下に、そして国民に誓います。』
『絶対にこの国を豊かにします。』
そう言ってアントワネットは密かに決めた決心の中、国民に相変わらずの笑顔で手を振った。
そして何人かは気づいただろう、その瞳の奥に強い意志があったことに。
それを気づいたものはもう、何も言えなくなってしまった。
気高い姿の美しさを知った者は、アントワネットをただ見つめるしかなかった。
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