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オーストリアを出て数日、引き渡し場所はフランスとオーストリアの中立に位置しているライン河となっている。
馬車の窓から顔を出せばハルトの姿があって、目があった。
『ハルト、後何日でつきますか?』
「あと2日とゆう所です、姫様」
あと2日か、長いな。
そう思いながら外をボーと見ていれば馬車は今、崖沿いを走っていると分かる。
こんな旅ではきっとアントワネット様ではキツイ旅となるだる。
そう思っている自分がいて頭を振る。
何を考えている、陛下に会った時から私がアントワネットだろう!!
自分の頭を騙さなければ、他人など騙せない。
もしかしたら何かの拍子のバラしてしまうかもしれない。
私は頭から自分の存在お消し、マリー・アントワネットとなるために専念する。
さぁ、がんばるわよ私と意気込んでいると何処からか馬のひずめの音が聞こえる。
私も教養として馬術を習ったから分かるが、この走り方は鬼気迫ると言った感じだと思う。
「何者だッ!!」
ハルトの厳しい声が馬車の中まで聞こえるた。
「私どもはフランスの使いでございます。」
聞き覚えのない男の声に私はハッとする。オルレアン皇、その名前が脳に響いた。
さすがのハルトもフランスの使いと聞いて邪見にはできない、馬車を止められた。
オルレアンの手下がまさかオーストリア内に入る訳がないと思っていたがそうではないらしい。
私の読み違いがあったかっとギュッとドレスを力強く掴んだ。
「アントワネット様?」
私の前に座っていた使いの者が心配そうな顔をする。
私は安心させるようにニッコリと笑って口を開いた。
『後ろの馬車で来ている侯爵夫人に伝えてください。この馬車から離れ、すぐに違う経路に入れと・・・。』
私の様子から何かを悟ったのかすぐに彼は馬車から降りて、後ろの馬車へと向かう。
無事に後ろの馬車が進路を変えたのを見て、私はただ静かにそれが来るのを待っていた。
どうやら、私が馬車を逃がしているうちに揉めているらしい。
だが、それがあったから馬車を逃がせたと心の中でハルトに感謝した。
そして、剣が抜かれる音が聞こえる。
「オーストリア女は死ねぇえええええええええええ!!」
「姫様ッ!!」
ハルトの声が聞こえた途端、馬車が勢いよく走り出す。
あっ、やば!!まさか殺すつもりだったとは思ってなかった私。
馬車を崖から落すつもりか。
何処までも汚い男だオルレアン皇ッ!!
そう思っているまに馬車はどんどんスピードを上げていく。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
地響きのような揺れが馬車を襲い、恐怖感を一層煽る。
「姫様ッ!!」
馬車の窓から見れば、ハルトの焦った表情をしている。
彼のそんな切羽詰った表情を見たことがない、それほど今は緊急事態なんだとなぜか頭は冷静だった。
『ハルトッ!!』
私がそう叫んだと同時に馬車がガクンと下がるのが分かった。
あっと思ったがそれはもう遅い、落ちる。
私を乗せた馬車は崖の下へと落ちていく。
遠くなるハルトを見つめながら、届かないと分かっていてもその手を伸ばした。
「姫様ぁああああああああああああああああ!!」
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