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私は陛下に会ったその足で許しをもらい、マリー・アントワネット様の元へと向かった。
真っ白のベットに横たわる、蒼白な姫の姿に声をかけずににはいられなかった。
『姫ッ!!』
そう声をかければ、アントワネット様の目は開かれ私を捉えた瞬間に零れる涙。
「ごめんなさい、ごめんなさい。サラ…あなたを巻き込んでしまって。」
その言葉に私は咄嗟に反論した。
『何を仰います姫様、このアレクサンドラ、姫と国、民の為に訳に立てることを光栄に思っているのですよ。姫は私の事など心配せず、どうかご自分の体の事だけを考えてください。』
そう言うと、更に姫はポロポロと真珠みたいな綺麗な涙をこぼした。
「ありがとう、ありがとう。サラ」
そう言われて私はほほ笑んで、言った。
『そう言われるのは悪い気はしませんわ。姫様』
そう言えば、姫様はキョトンとした顔になり私とは違う花のような美し笑顔を見せてくださった。
(その笑顔を見れるなら、私は何よりの幸せと感じられるのです。)
さぁ、明日から忙しくなるぞ。
そう思いながら、私は意気込みながら歩く
「姫さま」
聞き覚えのある声に私は立ち止まった。
そこには綺麗に敬礼をしているハルトの姿。
彼は私の領地の騎士、剣の腕前はこの前の王室主催の大会で優勝したのだからすごいのだろう。
小さい頃よく私がハルトを泣かせていたので、強いという感覚をこの目の前の男には持てなかった。
顔もいい方だと思う、よく侍女達がキャーキャーと騒いでいるモノ。
だが私はやつを女っタラシとしか見ていないので特に何も思っていない。
仕事中だけは騎士モードが入るらしく、よく女に騒がられるが。
子供の頃なんてよく二人でイタズラをして遊んだものだ。
そんな男が今や立派なわが領地の騎士なのだから、立派な物だろうと思っていた。
「姫様、陛下はどんなごようで?」
そう聞かれながら、私は馬車に乗り込む。
馬車が走り出して、しばらくたって私は口を開いた。
『私に一週間後、フランスに嫁げと…。』
「ッ!!なぜです!?」
予想通りの反応に私は苦笑いをしながら答えた。
『アントワネット様が病気でお倒れになったのだ。姫様が回復するまで、私がアントワネット様としてフランスに行くのだ』
いわば影武者だなと笑って言えば相手は怒っている様子だ。
「なぜ姫様なのです!!他にも似ている人間はいるでしょう?」
『陛下は私にフランスを変えろと言われた。今やフランスは王族、貴族がふんぞり返り民を苦しめる存在として君臨しているのだ。そんな所にアントワネット様を送り込んでみたら、あの方は純粋な方がからきっと身を惑わされて取り返しのつかない事になりかねないのだ。』
だから、それをないよう私がアントワネット様回復までに変えなくては・・・。
『ハルト、陛下は私を信頼してくださってこの認を私にしたのだ、分かってくれハルト。これは王族のため国の為、ひいては私たちの領地のためにもなるんだ。』
そう言えば、ハルトは押し黙った。
私はそれ以上は何も言うつもりはなく、黙って馬車の窓からオーストリアの景色を焼き付けることにした。
もしかしたら、もう見ることはないかもしれないと言う気持ちを抱きながら・・・。
「それなら・・・」
聞き逃して仕舞いそうなほどな消えそうな言葉を拾ったのは領地にもうすぐ着くと言うところだった。
「それなら、俺もフランスに行きます。」
『・・・・・・・・・・・。』
「アントワネット様を守る騎士として、あなたの傍を離れません」
そう言ってまっすぐに私を見せるハルトに私は仕方ないと苦笑いをした。
『わかった。後で陛下に私が言っておく・・・お前も一週間後の出発に備えろ』
そう言うと「はい」と大きな返事が返ってきて私はまた笑った。
『私は立ち向かうのを決意した』
運命にも障害にも。
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