30





誰よりも早くにアジトにたどり着いたカシムはアリババの姿を探した。

だけど、何処を見てもアリババの姿はない。

暗闇の中でわずかに動く影、カシムはその陰を睨んだ。

「誰だ?」

謎の人物に月明かりが差し込むのと、カシムの後を続いていた連中もたどり着くのは同時だった。

その謎の人物を見たモルジアナは声を上げた。

「ゴルタスッ!!」

その名前に反応したのはアラジンで彼を見てパァッと笑顔を作って喜んだ。

「わぁ、本当だ。迷宮で会ったお兄さんだ!!」

そんなアラジンの様子を見て、警戒を解いたカシムはアラジンに「知り合いなのか?」と聞いた。

聞かれたアラジンは笑顔で答えた。

「うん、彼もアリババくんに助けられた人なんだ・・・でも、なんでここに?」

首を傾げているアラジンの横にいたモルジアナは確信を持った表情で言った。

「ゴルタス、やはり貴方はアリババさんと一緒だったんですね・・・。」

モルジアナを真っ直ぐ見つめていたゴルタスはコクリと頷いた。

それを聞いたカシムはゴルタスの前に立って言った。

「じゃぁ、アンタならアリババの居場所を知ってるんだな?」

ゴルタスはコクリと頷いた。

「アイツはどこに行った?」

聞かれたゴルタスは自分の手を喉に当てて喋った。

「・・・・アリ、ババさんは先ほど「美女が俺に助けを求めている」とか言って出て行きました。」

ゴルタスの発言に回りは呆れるなか、だいたい予想していたカシムはハァーと大きなため息を吐いた。

「そんなこったろうと思ったよ・・・。」

そう言って肩の力を抜こうとした時だった。

「オーイ、シンドバット!!」

空からの来訪者が彼らの前に現れたのであった。




一方、その頃のアリババくんは。

『大丈夫かい?御嬢さん。』

「ハイっ!!ありがとうございます」

ゴルタスの言葉通りに美女を救った後の事であった。

「あのッ、できればお礼がしたいのですが・・・。」

『あぁ、お気持ちはありがたいんだけど。この後、約束あって・・ゴメンネ』 

しかも美女からのお誘いのオプション付である。

これを断るバカもいないだろうが、残念ながらアリババはその部類に入ってしまっている残念な方なのであった。

「い、いいえッ!!私が急に言い出したことなのですから、お気になさらず!!」

『ごめんね、じゃぁ!!』

罪作りな男、アリババはまたもや被害者を量産したのであった。

『やばッ、絶対にカシムにドヤされる!』

アリババは走りながら思った。

アイツは時間にルーズな自分をいつも怒っていた事に。

だっていつも俺の歩く先々では女の子が不幸な目にあってるんだぜ。

女の子が泣いてるのに、助けない理由なんてないじゃないか・・・。

と、まぁなんというかプレイボーイ発言というか・・・天然タラシというか。

(だれか一回でいいからこのタラシに痛い目合わせてくれないか?)

とまぁ、個人の一方的な感情はほっておいてアリババはようやく霧の団のアジトへとたどり着いたのであった。

アリババはフードを目深にかぶりなおして、一人でほくそえんだ。

皆の驚く顔を想像しながら一歩、アジトへと踏み入れてみればなにやら不穏な空気が流れていたのであった。

(へ?…何?)

皆の視線の先にはアリババがよく知る人物であるアラジンと、もう一人全く知らない黒い少年の姿だった。

自分より少し年上だろうかと思いながらアリババはその少年の目を真っ直ぐに見た。

真っ赤な瞳、でも赤だけではなくその奥の色をアリババは見つめていた。

そんな時にアラジンが声を上げた。

「アリババ君は情けなくなんかないッ!!」

そう言ったアラジンにアリババは首を傾げた。

え?なんで俺の話になってんの?

しかもアラジンは珍しく険悪ムードじゃないか、なんだ喧嘩か?

喧嘩はいけないよ、友達を作る段階でケンカは大事だけどさ明らか違う雰囲気だもんな。

はぁーと大きくため息を吐いたアリババは二人を止めるべく、二人に近づいて行ってアラジンの前にたった瞬間だった。

・・・・・・・・まぁ、なんというか。黒い少年・・・つまりジュダルがアリババに攻撃しようとした。

アリババ、アラジンの前に立った。

攻撃、アリババに当たる。

アリババ、吹っ飛ぶ。

アリババ、気絶する・・・・みたいな?

お望み通り、痛い目に合わしちゃった(テヘ)








どうして待ちに待った主人公が登場した先で吹っ飛ばされて気絶しなきゃいけねぇんだ。

意識を失う寸前にアリババがふて腐れたのは言うまでもない。

[*prev] [next#]







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -