5 ピカピカの!!


私、海野陽子は今日から小学校一年生です。




二度目の小学校なんて嫌なものだと思ったら久しぶりに見るピカピカのランドセルを見ると自然と顔は綻ぶものだ。

真っ赤なエナメルのランドセルを背中に背負って入学式に行く前に隣の空条家に見せに行こうと言った母と父と一緒に言った。

「まぁ、さらちゃん。可愛いわ!!」

聖子ちゃんが私の姿を視界に入れた瞬間に興奮気味に褒めてくれる。

可愛いと言われるとちょっとむず痒くなって照れ笑いするとガシッと抱き締めて頬ずりしてくれる。

4歳の息子がいる人の肌とは思えないスベスベ肌だぜ。

そう思っていると今日一日だけの入学式用のスーツのスカートがくいくいと引かれると気づいて視線を向けるとそこにはアンジェの姿が。

「さーちゃん。どうしたの?」

コテンと首を傾げるアンジェの姿に内心、鼻血ものだが必死に隠して笑顔を作る。

『アンジェ、今日から私は小学校に行くのよ』

そう言えば「小学校ってなに?」と聞いてくるアンジェに私は優しく教えようとした瞬間であった。

「沙羅ぉおおおおおお!!行かないでおくれよ!!」

『・・・・・・・・・父さん』

いきなり泣き出した我が父に母と同様に冷たい視線を送る。

いつもは、しっかりまっとうな父なのだが今日はどうやら親馬鹿モードらしい。

必死に泣いて私を止める父の姿に娘の私がひいている事に気付いてほしいのだが・・・。

(ちょ、やめろ!!聖子ちゃんのスベスベお肌と違っておっさんの髭ズラがどれだけ幼女の幼気なお肌に悪影響か分かってないだろう!!)

なんとか父親を引きはがそうと腕に力を込めるが、そこは子供と大人の差でびくともしない。

「僕は嫌だよ!!学校に行っちゃったら会える時間がすくなくなるじゃないか!!」

メソメソと泣きながら抱き締めてくる父親に正直言ってウザいと思うが、それは中学に行くまでとっとといてやろう。

そう思っていると視界の端にいたアンジェが固まっているのを見て、私はアンジェに話しかけた。

『どうしたの?』

そう言えば、アンジェは私を視界に入れる。

その瞳には不安が見えて私は首を傾げる。

「ようちゃん。僕も…さーちゃんが、学校に…」

そう言ってアンジェがヒックと言った瞬間、その場にいた私、私の母、聖子ちゃんはマズイと瞬時に悟った。

だが誰もアンジェの感情を制御することは出来ない。クシャリと歪んだ顔、目からホロリと涙が流れた瞬間。

「いっちゃいや〜〜〜〜〜〜〜!!」

『グエッ』

そう言って私にタックルかまして、大泣き。

そして私は泣き叫ぶ父親とアンジェによって見事に入学式に遅刻という、暗雲たちこめるスタートを切ったのだった。








イッチ年生!!

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