■ 第十四章:悲しき記憶


 雨の降らない空


 晴のみを知る空


 そんな空は


 闇が続くのと同じこと








 高く跳躍し、解号を口にする。
「刈れ、風死!!」
 斬魄刀・風死が始解され、一対の鎖でつながれた鎌状に変化した。鎖を手で握り締め、風死を水の巨人目掛けて投じた。高速で回転しながら、風死は水の巨人の胸の辺りを一気に突き抜ける。しかし、手応えはなく、穴は空いたがすぐにまた閉じてしまった。そもそも水を斬ることなど、不可能なのだ。
「くそっ!!」
 鎖を引いて風死を手元に戻し、檜佐木は水の巨人を睨みつける。
 攻撃をされた、という自覚はあるらしく、巨人は檜佐木を見るなり、水の大刀を振り下ろした。すぐに檜佐木は防御するが、その攻撃は予想を絶し重い。
「ぐっ!!!」
 肩が震え、支えきれない。
 突如、下から火の玉が飛んできて、大刀にぶつけられた。水であるゆえ、あっという間に蒸発し、消滅する。
 檜佐木は何が起きたのだろうと、そちらに目を向けると、円閘扇の下に斬魄刀を構えた雛森の姿が見られた。どうやら、彼女は円閘扇と円閘扇の隙間から、あの火の玉を放ったらしい。
「大丈夫ですか!?」
 雛森の声に、「おー」と答えて、大丈夫だと手を挙げた。前に視線を戻すと、蒸発して消えたはずの、あの水の大刀が再び水蒸気を集めて元に戻り始めていることに気付く。
「っでりゃあああああああああっ!!!」
 水の巨人の足元を鬼灯丸で斬りつけながら、一角もまた飛び上がる。
「ちっ。手応えがねぇ。こんなん戦ってもつまんねーよ!!!」
「同感だね」
 どこから現れたのか、弓親も肩を竦めながら一角に並ぶ。
「斑目! 今、お前、ヤツの中を通って攻撃してきただろう!? 何か核みたいなものはなかったのか!?」
 檜佐木が尋ねるが、「んなもんあったら攻撃してるぜぇ!!!?」と当たり前の答えが返ってきてしまう。
 刹那、赤い刃が、もう一人の水の巨人を両断する。しかし、超速再生のように一瞬にしてその傷はふさがってしまう。
「ふぅ〜…なかなか厄介っすねぇ」
 浦原が帽子を被りなおしながら、ポツリと言った。
「やはり、雨蝉菩薩で操っている側を攻撃しないことには…きりがないかもしれないっすね…」


 互いの力がその瞬間ほぼ互角で、刃を交えたまま微動だにしない。恋次は何とかして押し切ろうと思考を巡らせたところで、左側から気配を感じた。
 とっさに両手で握っていた柄から左手を離し、構える。そして、その左腕が受けたのは、強い打撃だった。
「ぐあ!!!」
 吹っ飛ばされた恋次は、空座町を覆う円閘扇の上に落下する直前で、何とか霊子で足場をつくり、ぎりぎりのところで留まった。あまり勢いよく落下すると、下で張っている下級死神達にも悪影響だからだ。
 濤目による、あまりに強すぎる回し蹴りに太刀打ちできなかった。そのことに、恋次は苛立つ。
 顎にたまり始めている汗を、蛇尾丸を持っていない左手で拭おうとして、ハッとする。左腕が、上がらない。無理に動かそうとすると、激痛が彼を襲った。
「まじかよ……ちぃっ……!!!」
 独り言ちて、ブルブルと頭を振った。
 少しばかり足に力を込め、濤目のいる高さにまで再び飛び上がった。
 濤目は恋次をじっと見、その視線をダラリと下がっている彼の左腕に移す。
「……あーあ…。…もしかして、折れちゃった?」
「けっ! てめぇがやったんだろうが!!」
 利き手である右腕が無事であったのが、唯一の救いだ。
 恋次は、少しではあるものの、焦っていた。濤目の身体能力は尋常ではなかった。隊長格に匹敵するかといえば、それよりは一歩手前かとも思われる。しかし、自分自身よりはかなり強いというのは認めざるを得なかった。濤目はまだ、始解すらしていないのだ。
 それでも、思う。肝心なのは…力では、ない。
「まぁ、テメェなんぞ、右腕一本ありゃあ充分だけどな!」
 強がるねぇ、と濤目は呆れ顔で肩を竦める。
「強がりかどうかは…まだ分からねぇぜ!!!」
 蛇尾丸を構え、霊圧を上げる。
 濤目は、表情を構えず、それをただ見つめた。
 霊圧が限界にまで上昇したところで、恋次は力を一気に解放した。
「卍解っ!!!!」
 まばゆい光を放ち、その中で霊圧はさらに上がった。
 そしてそこから、白骨化したような大蛇が、雄叫びを上げつつ出現する。
「狒狒王蛇尾丸!!!!」


「うわぁ、濤目の方、卍解されちゃってるじゃない。…まぁ、必要ないとは思うけど…仕方ない。手伝いに…」
 ユリイが瞬歩で濤目の方へ向かおうとした、その瞬間。彼女の背後からも、強烈な霊圧を感じた。
「な、何っ!?」
 あわてて振り向き、無空を構える。

 ガッシャアアァ……ン……!!!
 目の前の巨大な氷柱が、粉々に砕けた。あまりの衝撃波に、ユリイは思わず目を閉じる。バラバラと氷の片鱗があちらこちらに落ちていき、白い冷気が空に満たされる。
 顔を上げて、ユリイはハッとした。
「卍・解」
 低い声。たちまちのうちに、冷気は竜巻を形成し、その場でひとりの存在を取り巻く。そして、中から大きな氷の翼が現れた瞬間、竜巻は空へ巻き上げられるようにして消えた。
 そこにいたのは、背後に氷の華を浮かべ、氷の竜を身に纏った、日番谷だった。
「大紅蓮氷輪丸!!!!」
「…なるほど…まだやるってわけね」
 ユリイが身構えたとき、一方で巻き上がっていた刃の渦が、突然異変を見せた。藍色一色であったはずなのに、そこから見る間に灰色に侵食されているのだ。
 いとも容易く、その渦から姿を現したのは、他でもない乱菊。驚いたことに、傷は思ったほど深く負っていなかった。
「悪いけど……灰猫の使い方は、私の方がよく知ってるわ」
「残念だったな。テメェはもう俺らを斃したと思ってたらしいが…」
 ユリイは歯噛みした。もう戦いたくないと、心のどこかで思った。
 そして、再び無空を掲げる。


 瞬歩で間合いを取り、白哉は表情を変えずに亞丹を見つめた。白哉の身体は、傷だらけだ。対し亞丹の方は、傷がほとんどなかった。どちらが押されているのかなど、あまりに明白だった。
「弱すぎッスよ。なめてるわけじゃないっすよねー…?」
 ニヤ、と笑い、獣弄牙についた彼の血を見せつける。
 白哉は一瞬下に視線を落とし、千本桜を前へと差し出す。
「まだやるッスか?」
 すぐに動き出そうと、亞丹は前傾姿勢をとった。が、次にはぽかんと、口を開けた。
 白哉が、千本桜の柄から手を離したのだ。無論、千本桜ははるか下へと落下していく。
「ざ…斬魄刀を…捨てたんスか?」
「……」
「勝てないと…思って?」
「……」
 一切否定の言葉を述べない彼を見て、堪えられなくなったように亞丹は笑い出した。
「莫迦じゃねーッスか!!! 潔く負けを認めるのと、斬魄刀を捨てるのでは訳が違う!!! 正確には、斬魄刀を裏切ったんスよ! たったいま!! あんたは自分より先に、斬魄刀を殺したんス!! はははっ、あっははははっ!!!! さっすが!! さすが朽木緋真の夫!!!! 類は友を呼ぶって奴ッスね!!! あっはははははは!!!」
 狂ったように笑い続けている亞丹を前に、白哉はポソリと言った。
「卍解………」
 その、わずかな言葉を聞き逃さなかった。亞丹の笑いが、唐突に消える。
 彼の目の前に広がった色は、鮮やかなピンク。それも、通常とは比にならない量の刃である。それは、数億枚の刃になっていると言われても信じられるほどだ。
「千本桜景厳」 
 突如下から突きあがってきた刃は、あまりの不意打ちで、亞丹も存分な対応をとることができない。
 辛うじて獣弄牙で半分ほどを叩きおとし、逃れる。
「な…どうして…!!?」
「残念だが、私は捨てる為に斬魄刀を落としたのではない。我が斬魄刀の卍解を発動させるために、私は自ら斬魄刀から手を離したのだ」
 白哉の斬魄刀・千本桜の卍解の発動には、まず地面に千本桜を吸い込ませることが絶対条件である。しかし空中戦となると、それを発動させるのはなかなか厳しい。そして先ほど、彼は確かめたのだ。真下の円閘扇に、千本桜を落とすことの出来るだけの隙間があることを。
 正確には、ほぼ全員の死神達が、白哉に予め言われていたのだ。いつでも卍解を使えるように、彼の戦う近辺の円閘扇には、一部だけその間を作っておくこと、と。
「亞丹……貴様は…」
 亞丹は、目を見開く。
 白哉の目をみる。それだけで、心臓が騒いだ。
「ち………ち……!!」
 先ほどまでの、亞丹の様子とは違っていた。何より、余裕を失い、そして。
「違うッ!!!!!!」
 叫んで、白哉のもとへと突っ込んでいく。


 夜一は、わざと大きい動きで蟻泰丸を寄せ付ける。無論、撫子の視線もそちらに向いた。
「砕蜂! 今じゃ!!」
「はい!!!」
 瞬間、撫子の背後から、砕蜂は拳を突き出した。
 軽くかわそうとしたところで、撫子の顔つきが変わった。突然蹲るような姿になって、その拳骨を右の上膊に受けた。
「っう!!!」
「!?」
 すぐに彼女は素早く後ずさって逃げる。上膊を押さえながら、息を切らす。
 撫子がゆっくりと顔を上げた。静かな瞳。
「撫子……?」
 不審げに、夜一と砕蜂は眉を顰める。
「……なんや…情けないわ…ほんま………」
 ふっ、と…歪む。
「泣きそうや」
 その言葉を聞いて、砕蜂も、たった今目が覚めたばかりのように、一瞬動きを止めた。


 雨蝉菩薩を大きく振り上げ、ギロチンの刃のように勢いよく、ルキア目掛けて振り下ろす。
 ルキアは袖白雪でガードを試みるが、刀身を叩きつけられたと同時に、小さな身体は激しく下方へと飛ばされた。
「うぁ!!」
「ルキア!!!」
 一護は瞬歩で、ルキアを受け止めるべく、彼女の真下へと移動した。しかし、その力は予想以上に強く、
「うわっ!?」
 一護の身体に激突すると、そのまま二人は共に急降下した。受け止めることすら叶わないほど、鏡死の力が強力だったのだ。彼等はその勢いで、円閘扇を突き破ってしまうかと思われたが、突如巨大な物体が現れ、一護とルキアを受け止めた。
「これはっ…!」
 一護がルキアを起こしてやりながら、今自分が乗っているものを見て、ニッと笑った。
 その巨大な物体とは、白骨化した大蛇――――狒狒王蛇尾丸だったのである。
 ルキアもすぐに顔を上げて、叫ぶ。
「恋次!!」
「世話焼かすんじゃ…ねぇよっ!!」
 恋次が狒狒王蛇尾丸を操り、再び二人を鏡死の正面にまで送り届ける。そこまで来ると、一護とルキアは飛び降りて、鏡死と対峙した。
 鏡死は心底迷惑そうに濤目の方へと目をやる。
「すいませーん、今度はちゃんと邪魔しまーす」
「濤目……遊んでないでさっさと斃せよ」
「はーい」
 そして濤目は、恋次に斬りかかっていく。恋次も狒狒王蛇尾丸を駆使して、対抗していた。
 一護は斬月を、ルキアは袖白雪をそれぞれ構え、鏡死と睨み合う。
「やっぱてめぇが親玉か。何訊いてもだんまりで…敵に対してもちょっとは礼儀ってもんがあるんじゃねぇか?」
 鏡死は肩を竦めた。
「親玉か≠チて言われてもな。たしかに偽地獄蝶を指揮してるのは紛れも無くこの俺だが、親玉なのかどうかは正直分からねぇ。俺達はお前等死神と違って、平等にやってるからな」
 不平等である死神を憎んだから、彼等は今、ここにいる。
 先ほどより鏡死の霊圧が上昇したことに気付き、ルキアは身構えたまま静かに言った。
「油断するなよ、一護……」
「ああ」
 一護はゴクリと息を呑んだ。鏡死の上昇していく、異質な霊圧に、思わず後ずさりたくなる。
 彼は雨蝉菩薩を逆手に持って、鈴を鳴らす具合で小さく揺らした。
「霞の界=v
 唇がそう言葉を紡いだと同時に、青空から水滴が降ってきた。空に雲は見られないが、雨が降る。それは少しずつ、少しずつ、早く、強くなる。無数の雨粒を、二人は怪訝そうに見つめた。各場所で戦っている死神達も、不思議そうに天を仰ぐ。一護が、何かを感じて、釣られるようにして空を見上げた。一粒一粒の雨を、見つめる。そのうち一滴だけ、一護の目に当たった。
「いって!!」
「大丈夫か!?」
 突然片目を押さえて足元をふらつかせた一護を見、ルキアが慌てて声をかける。
「おー。雨が目に当たっただけだ」
 目を瞑ってはいるが、軽く手を挙げてみせ、片目を押さえたまま恐る恐る瞼を開く。
 そこで見えたのは、鏡死と、戦闘を繰り広げる死神達ではなく――――暗い、川原だった。
 ゆっくりと、片目を押さえる手を下ろし、両目で、その風景を見つめる。いくら目を凝らしても、やはりそこは川原だった。
「これは―――…!?」
 雨が、冷たい。
 増水した川が、見える。
 頭痛に似たものを感じながら、周囲を見渡す。そこで、ふと二人の親子が瞳に映った。声が、聞こえる。不思議と、はっきり。聞こえるというより、自分の脳内に直接響いてきているような気がした。
『だから、今日一本とったんだもん!!』
『へぇ、たつきちゃんに勝てるようになったのね。すごいじゃない!』
『あー! 母ちゃん、疑ってる! 本当だよ!!』
『あははっ、疑ってないってー』
 明るいオレンジ色の髪の少年と、綺麗な母親が、手を繋いで、並んで歩くのが見える。
(あれは……俺…!?)
 ドクリ、と心臓が、嫌な脈の打ち方をした。
 頭のどこかで、確信していた。これは、絶対に忘れてはいけない記憶で、最も思い出したくない記憶だ。
 ふと、少年が川の方に目をやった。その様子に、一護は少し身体を震わした。
 少年が見ているのは、少女。その少女は、川べりに、今にも飛び込みそうな感じで、傘もささず立っていた。
 今の∴鼬になら、分かる。――――グランドフィッシャーの、疑似餌だ。
 しかし、当時の一護にそんなことは、分かるはずもない。現に、一護は当時、分からなかった。死んだ者と、生きている者、そしてそれが人間なのか、人間でないのか。くっきりと見えすぎていて、区別がつかなかった。
 雨が、冷たい。 
『ちょっとまってて、母ちゃん』
『え? 一護!?』  
 少年は、傘を母親に預けると、ガードレールを越えて駆け出した。川べりに立っている少女に向かって。
 死覇装の今の∴鼬の前を、駆け抜ける。
 一護の身体が緊張して、動かない。目玉が飛び出さんばかりに、見開く。
 少年が、少女に向かって、腕を伸ばす。
『だめ! 一護!!』
 母親の声が、響いた。
 少女が、振り向いた。笑った気が、した。
「やめっ――――」
 次の瞬間。
 鮮やか過ぎる紅が、舞い上がる。冷たい雨に、混ざる。
「――――――!!!!!!」
 一護は何かを叫んだ。しかし、何を叫んだのか、分からなかった。
 少年が必死になって、母を揺り動かす。それだけ。
 一番護りたいものを、護れなかった。
 
 ――――おふくろが、大好きだった。

 雨が、冷たすぎる。そう、思った。



 雨で皮膚に髪がへばりついてくるのを鬱陶しく感じながら、息を吐き出してから言った。
「…一護。この雨、一体どのような効果があるのかは分からぬが、少なくともあの斬魄刀の能力であることは、間違いない。あまり浴びすぎないほうが安全だ。……お前は、円閘扇の下に……」
 そこまで言って、彼から一言も言葉が発せられていないことに気付く。不審げに隣りを見やって、言葉を失った。少し俯いている一護の瞳に、光が灯っていなかったのだ。
「一護…!? どうした、一護!!!?」
 呼びかけるが、少しの反応も見せない。
 口許に笑みを浮かべている鏡死に、ほとんど怒鳴るような形で叫んだ。
「貴様!!! 一体何をした!!」
「別に大したことはしてねぇ。ただ黒崎一護にとって、一番辛い記憶を無理矢理、改めて見せてやってるだけだ」
 一度、雨蝉菩薩に目を落とす。
「この霞の界≠ヘ、一時的にその場で雨を降らせる。その際には、普通の雨と大差ねぇさ。だが、使い手の俺が対象を決定すれば、その対象になった野郎にだけ、雨蝉菩薩のもつ高濃度の霊圧で形成された特殊な雨が降り注ぐ。あとはそれが、対象の目にあたれば、その雨粒の中で、さっき言ったみてーな…ようはそいつが思い出したくない記憶を映す。それだけのことだ」
 まぁ、元々眼鏡とかかけてるようなヤツには目にあてるとか無理だから、この能力は使えねぇけどな。
 そう言って、鏡死は雨を見つめた。
「思い出したくない――――…」
 
 ――――…記憶……?
 ルキアには、彼が思い出したくない記憶など知る由もないが、ふと、いつだかの彼が、脳裏をよぎった。

『虚でもなんでもねぇんだよ…! おふくろを殺したのは……俺なんだ……!!!』
『おふくろを殺したヤツが目の前にて……これが落ち着いてられるか!!!!』
『…まだだ……! あいつはまだ死んでねぇ…! 俺はまだ戦える…! まだ…』
『俺は強くなりたい。もっともっともっと。強くなって、虚から護るんだ。狙われてる奴等を。強くなって! 斃すんだ! あいつを! でなきゃ、おふくろに合わせる顔がねぇんだよ!』

 初めて、彼が大怪我をしたとき。
 初めて、彼が自分のために刃を振るったとき。
 死神の力を貰って、初めて、その力のあらんとする意味を、知ったとき。
 
 一護の思い出したくない記憶は…一つしかないように思った。
 それは、自分と海燕のときと同じように。今でも一護は、自分を責めているのだろうか。
「っ…! 貴様ぁ!!!」
「おっと。ほれ、よく見ろよ」
「!?」
 言われて、ルキアは一護を振り返った。霊圧が、歪み始めている。
「一護っ…!!!」
「思い出したくない記憶を見せつけられて…黒崎一護はどこまでもつんだろうな? この技は、死神を外側からでなく、内側から壊していくようなもんだからな」
「くっ…! 一護! 目を覚ませ!!! 一護!!!」
 ルキアは一護の肩をゆすった。
 しかし、答えはない。一護の精神はまだ、雨粒に覆われていた。



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