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「あった。あれが『呼び柱』だよ」
 頭上を指差し、メルツが足を早める。
 忠告に従って猫の多い道を避け、閑散とした裏通りを進んでいた最中だった。幌馬車を挟んだ向かい側では客引きの声が鳴り響き、荷台を開放して売り買いをしている雑多な気配が伝わってくるが、こちらは喧騒から背を向け、御者台ばかりが並んでいる。すれ違う猫は皆何かの作業の途中のようで、器から汚れた水を捨てたり、馬具を取り外したりと忙しげに動き回っており、二人には目も留めない。子猫が走って遊んでいると思ったのか、一度ばかり煙草を吸っていた老猫に微笑みかけられた。猫よりも馬の方が多い。メルツが指し示す場所に向かい、真っ直ぐに進んでいく。
 すると、いきなり喧騒の真ん中に放り出された。裏道を抜けて猫の奔流に行き当たったのである。エリーザベトは中央広場の人ごみに揉まれながら、ぽかんとして立ち並ぶ列柱を見上げた。
 柱の数は十本前後。緩く円陣を組むように、堂々と聳え立っている。
 その形状は神殿と言うよりも、エリーザベトの故郷に生えている塔のような大樹を髣髴とさせた。ずどん、ずどん、と建ち並び、周りを圧倒させる。柱は太さも長さもまばらで、一番大きいものだと直径が五メートルほどだが、小さいものは子猫でも手を回せば抱きしめられるほどで、丈も低い。表面は粉を吹いたように白っぽく、細かな凹凸が付いていたが、その全面を覆うように何百もの紙片が貼り付けられていた。
 どうやって貼ったのか、そしてどうやって見るのか、かなり上の方に貼られているものまである。よく見れば紙の材質も様々で、草の葉を漉いた一般的なものから、皮製のもの、椿の葉のように滑らかでぺかぺか光るもの、布のように植物の繊維を編んだものと幅広い。そこに書かれている文字も目に留まりやすくする工夫なのか、自己主張の激しい筆跡が多く、眺めていると眩暈がしてきそうだ。
 猫たちは思い思いに柱の隙間を歩き、自分に必要な情報がないか素早く視線を走らせていた。虎視眈々と獲物を狙う彼らの殺気立った空気に、エリーザベトはすっかり気圧されてしまう。情報交換と言うからには同じ志の者が集うサロンのような場所を想像していたが、猫の縄張り意識がそうさせるのか、互いに場所を譲って柱の間を移動しながらも、どこか飢えたような空気が漂っていた。風雨に晒されて波打つ古い紙切れを剥がしに回っているのは、集会場を取り締まっている猫の一族だろうか。
 話に聞いた時は随分と大雑把な仕組みだと感じたが、常ならば群れる事のない猫たちが揃って上を見上げているのは少し異様だった。時折響く怒声は紙片を巡る争いの証しである。
「何だか怖いわ……」
 まるで柱が猫たちを操っているように見え、エリーザベトは後ずさった。人ごみに怯えていると思ったのかメルツが思案げに裏道で待っている方がいいかと尋ねたが、一人で残されるのも心細い。
 はぐれないよう、自然と手を繋ぐ。メルツの手はエリーザベトと同じくらいの大きさで、それに少し勇気付けられた。彼が道すがら語るところによれば『呼び柱』は数え足の遺跡ではなく、太古の樹が化石化したものいるらしい。
「ああ、やっぱり樹だったのね。何だか見た事がある気がしていたの」
「昔は鳥の里だけじゃなく、色んなところに大きな樹があったんだって。今も生えていたら良かったのにな」
 砂船の情報は探し回らずとも目に飛び込んできた。猫の世界でも大きな事件として取り上げられたようで『呼び柱』の一番目立つところに太字で貼られている。鳥と猫は同じ文字を使うが文法に若干の違いがあり、エリーザベトには張り紙を見ても大まかな部分しか分からなかったが、見物人が口々に話している噂からも情報が得られた。
 それによると、夜盗の襲撃によって砂船の幾つかは倉庫から貴重な苗を持ち出され、若干名の死傷者が出た。しかし護衛の猫たちの活躍により、夜盗は撃退。襲撃時の混乱で無事に逃げおおせた船が過半数だったので、群れは当初の予定と変わらず南里に向かっている――。
「そうか……先に進んでいたんだね。僕たちは死んだと思われてるみたいだな」
 メルツが複雑そうに呟いた。『死傷者』と言う文字にエリーザベトは頭の芯が冷えるような心地がしたが、船の大方は逃げおおせた様子で、消せない希望に心がざわつく。周りの猫たちも気軽に「襲撃場所を探せば、船倉から落ちた薬草の一つや二つ拾えるかもしれないな」と軽口を叩いていた。
「……あの後、私の乗っていた船は無事だったのかしら。お母様もいたのに……」
 今まで避けていた話題が、閉じた唇を割るように零れる。メルツが振り向いた。
「……転覆しかかっていたけれど、船は崖から落ちなかったし、きっと大丈夫だよ。あの時、僕らの方でも君たちを逃がそうとしていたんだ。夜盗の狙いは倉庫だったんだし、歯向かわない限りは無駄に争ったりしないよ」
 励ましてくれたのだろうが、歯向かう、と言う単語を聞いてエリーザベトは兄を連想した。最後に彼が甲板で何か怒鳴っているのを聞いたが、夜盗を煽って、殺されたりしていないだろうか――。
「群れが予定通りに進んでいるなら、僕らも南に向かった方が良さそうだね。ここで買出しをしたら、すぐ後を追おうよ」
 明るく口調を切り変えたメルツが、柱から引き離すようにエリーザベトの手を引く。立ちふさがる成猫たちの間をすり抜けて広場から出ても、喧騒と共に膨れ上がった殺伐とした息苦しさは消えてくれなかった。砂船の消息が分かったのだから喜んでもいいはずなのに、エリーザベトは次第に心が重くなるのを感じる。
 ここから南里に向かうとなれば、どこくらい時間がかかるのだろう。船から落ちた自分は、とっくに死んでいると思われているのか。
 一族に置き去りにされた事実が、今更になってささくれのようにエリーザベトの胸を苦しめた。仕方ない、無事だと知らないのだからと自分を納得させようとしても、死体すら探さずに出立してしまったのだと考えると、指先から少しずつ凍えていきそうな気がする。
(……メルは、大丈夫なのかしら)
 彼の母はどうしたのだろう。やはり船と一緒に旅を続けているのだろうか。
「君のぶんの外套も買った方がいいかもしれないね。これからも羽根を隠さなきゃいけないし、そうでなくとも寒くなる時期だもの。馬も買えればいいんだけど、高いから無理かなぁ。徒歩で追いつける距離じゃないから、行商の馬車に乗せてもらえるといいな」 手を繋いだまま、彼はこちらを見ずにいう。
「エリーザベトは何か他に欲しいものはある?」
「……でも私、お金を持っていないわ」
「皆と合流した後に返してくれればいいよ。今のうちにちゃんと身支度しないと」
 彼の口調には鬱屈したところがなく、エリーザベトは悶々と苦い気持ちを押し殺した。あまり暗い顔をしてメルツにまで嫌な想いをさせてはいけない。だが、いつもピンと伸びている彼の尻尾に張りがなく、根元から折れたように垂れ下がっている事に気付くと、彼も空元気なのかもしれないと思い至る。
(そうよね。私だけ心細いんじゃないわ)
 気落ちしてばかりもいられない。エリーザベトは両手で自分の頬を叩きたい衝動を押さえると、代わりにメルツの手を握り返した。彼は振り向かなかったが、合図を受け止めたように軽く尾を揺らす。
 実際、消沈した気分も長くは続かなかった。広場を出て、先程は避けて通った中央通りに出ると、その賑わいに見とれてしまったのである。
 そこでは幌馬車の荷台を開放した猫たちが、木箱や樽を積み重ねて工夫した台の上に商品を並べ、即席の市場を作り上げていた。奥では見世物もやっているのか、どこからか歌や楽器の音も聞こえてくる。時折、店じまいした馬車が関所に向かって立ち去っていったが、その開いた空間も程なく次の馬車がやってきて、素早く開店の準備をしていた。まるで祭りでも開いているようだ。
「猫の市場って、とても慌しいのね!」
「そう?」
 エリーザベトが声を弾ませると、メルツも満更ではなさそうに歩く速度を緩めた。買出しも兼ねて、ゆっくりと見て回る。
 露天にはいろんなものが売られていた。広場から一番近い店には、『呼び柱』に張る為の紙片が強度や耐水性ごとに値段をつけられて売られている。風で飛ばないよう水晶の文鎮で押さえられた紙の手前には、これまたインクごとに値段の違う貸し出し用の羽根ペンが置かれ、客はそこで金を払うと、隣に設けられた大きな長テーブルの上で内容をしたためていた。
 その奥には蓮の花売りがおり、旅のおまじないか何かのようで、組紐と絡めた蓮の花を水槽に美しく浮かべている。
 その次は、二段になった木製の台にいくつも水瓶を並べている店だった。瓶の横には柄杓が置いてあり、客が注文すると、その場で小さな器にすくって渡している。飲み物屋らしく、旅の疲れで喉の渇いた猫たちが輪になって群がり、ひっきりなしに注文していた。一番売れているのは白い葉の模様がぐるりと描かれている大瓶のようだ。
「私もあれを飲んでみたいわ」
「だっ、駄目だよ!子供が飲んじゃいけないんだよ!」
 興味本位でエリーザベトが指差すと、珍しくメルツが血相を変えた。忙しく柄杓を動かして客の注文を聞き分けていた店主も、目ざとく二人の会話を聞きつけたのか、牙を出して笑い出す。
「そうだねぇ、お嬢さんには少し早いねぇ。もしかして集会場に来るのは初めてかい?」
「あっ……はい、そうです」
「だったら、こっちの果実水にしな。大冬が近付いて、もう果物も採れなくなるだろうしね。最後の贅沢だよ」
 店主はそう言って、売れ筋から外れているのか避けるように脇に置かれていた水瓶から紫色の果実水を汲み取った。自分が場違いな事を言ってしまったようだと気付き、困惑しながら器を受け取る。隣のメルツにこっそりと尋ねた。
「……もしかして、あれってお酒なの?」
「うん。またたび酒」
 メルツが苦笑いしながら答える。鳥が栽培しない植物の酒だったので、エリーザベトにはどんなものなのかよく分からない。メルツがあんなに反対するくらいだから、きっと驚くほど度数が高いのだろう。
 紫色の飲み物は山葡萄の一種のようだった。野生種なので酸味が強いが、牛の乳と混ぜているのか子供の舌にもよく合う。メルツも同じものを頼み、二人で喉を潤した後、空になった器を返して再び露天を見て回る。
 やはり集会場の土地柄なのか、一番多いのは薬草屋だった。天井に吊るした様々な香草の束、粉末を詰めた壜、練って固めた球体の香まで、様々な形状のものが並べられている。調合前の薬草を売っているのはごく一部で、大概は香炉に入れてそのまま炊くばかりのものが袋詰めされていた。袋ごとに説明書きがされており、「広葉樹林帯」「砂地・川原」「虫類の魔物」「葦の多い沼地」など、細かく分類されている。
 服屋もあった。天井の骨組みに何枚も商品を掛け、触って品定めしても良いようにしている。エリーザベトはメルツに黄色味がかった枯葉色の外套を買ってもらった。冴えない色で、鳥の世界ならば失笑されるような代物だが、荒野を歩くには目立たない色の方が便利らしい。店主がすぐに着替えたいのなら場所を貸してくれると言うので、天幕用の荒布で仕切られた奥を借り、手早く着替えて表に戻った。メルツは待っている間に近くの店を巡り、肩掛け鞄を安く手に入れたようで、借りていた外套を返すと裏地の者入れから道具を小分けにして鞄にしまいこんだ
「そうだ。これ、君にもあげる」
 彼は小脇に抱えていた包み紙を剥き、三角に切り分けられた掌大のものを取り出した。受け取ってみると、ほんのりと暖かい。
「ありがとう。これ……パイ?」
「うん。向こうで買ったんだ」
 説明し終えてメルツがパイを頬張る。立ち食いは行儀が悪いと教えられたのに、彼がやると不思議と品がいい。扱いが丁寧で、食べ零しを出さないからかもしれない。果実水を飲んだ後なので食欲を刺激さていたせいもあり、エリーザベトも彼に倣った。
 さくっとした心地良い歯ごたえの後、予想以上に弾力のある生地が出迎える。中に入っているのは煮詰めた林檎だろうか。
 しかし舌先に広がったのは果物の甘酸っぱさではなく、弾力のある、濃い味付けがされた細切れの物体である。
「……?」
 食べた事のない味にエリーザベトは戸惑った。警戒するようにぶわりと大量の唾液が分泌される。租借しながら想像を巡らせたが、さっぱり正体が分からない。途中で何故だか怖くなり、よく味わわないまま喉の奥に押し込んだ。メルツがいるので美味しそうな素振りは見せたが、飲み込んだ後も胃の底がふわふわとして落ち着かず、エリーザベトはそっと腹の上に手を置く。
(……何かしら)
 その答えは新しい通りに入った途端、思いがけない形で現れた。店先に並んでいた品の色合いが、ある一線から赤と茶で染められる。何を売っているのだろうと目を細めたエリーザベトの足が、ぴたりと止まった。
「メル……あれ、何……?」
「何って、肉屋さんだよ」
 メルツが何でもなさそうに答える。邪気のないその顔と、向こう側に広がる異様な光景が噛み合わない。
 そこは狩猟から帰った猫たちが、各々の獲物を売り買いする場だった。
 何の獣か示す為だろう。羊、鹿、猪、豚、果ては魔物まで、ありとあらゆる獣の生首が目玉を濁らせて飾られている。胴体は毛皮と肉に切り分けられ、部位ごとに串刺しにされて並べられていた。筋肉の繊維まで剥き出しにされた四肢を無理やり広げられ、まるで磔にされているようだ。既に抜かれているのか血を滴らせているものはなかったが、初めて見る生肉の断面にエリーザベトは蒼白になる。
 生肉だけではない。焼き目が付くまで炙ったものや、芋と一緒に煮立てている店もあった。じゅうじゅうと油が跳ねるおぞましい音、大きな香草に包んで肉を蒸す不穏な蒸気。仲間と共に談笑しながら買ったその場で包みを開き、牙を使って筋肉をばらす猫もいる。とろとろになった肉汁が滴り、エリーザベトは自分まで噛みつかれたような気がして、思わず手で首筋を庇った。
 ――食べるのだ、彼らは。あんな、死体にしか見えないものを。
 声にならない悲鳴で喉が引き攣る。鳥に食肉の文化はない。穀物を主とし、植物から採れる花菜、根菜、果実を栄養源としている。猫が狩りをするとは知っていたが、切り分けた肉など忌まわしいものは見た事がない。目の前に広がる赤や茶の塊が何なのか、俄かには認識できなかった。まるで死体安置所か拷問部屋だ。魚や昆虫を売っている店もある。
「あれを……買うの?」
 助けを求めて横に視線をずらしたが、入ってくるのは似たような光景ばかり。数人が寄ってたかって切り分けている丸焼きの羊、大きな肉片が浮いた泥のようなスープの大鍋、馬車の梁から吊るされている腸詰の束。バケツに入れた大量の蛙の腹を生きたまま鋏で切り、丸ごと皮を剥いている老猫。『旅の携帯用』と書かれて売り出されているのは、板切れのように加工された干し肉――渡りの護衛たちが馬上でよく食べていたものの正体だった。
「うん、大冬の前だから店も多いね。冬は狩りの季節だけど、蓄えがあるに越したものはないものな」
 メルツが当然のように店先に近寄る。その何気ない様子に更に打ちのめされた気がした。
「ひどい、そんな……」
「え?」
「どうしてそんな、むごい事――」
 そこまで言ったところで、ぐうっと胃がせり上がり、何も言えなくなった。両手で口元を押さえ、必死に吐き気を抑える。直感的に先程食べたパイに何が入っているのか分かった。
(お肉……生き物、の)
 何度も読んだ本の表紙が脳裏に浮かぶ。ページがめくられ、猫にまつわる様々な場面と年譜がひらめき、同時に故郷で聞いた老若男女の声が脳裏で一斉に喚き出した。植えつけられた嫌悪感が鎌首をもたげる。
 野蛮な種族――おぞましい――食料を育てもせず、悪戯に狩るだけの怠惰な輩が――獣時代の名残を恥ずかしげもなく――下品で唾棄すべき――恐ろしく血肉に飢えた――二百年前は好き勝手に鳥の里を襲っていたと――。
 分かっていたはずだった。猫は肉を食べる。旅の間の食事が果物や植物性のものばかりで失念していたとは言え、小指なら齧ってもいいと出合い頭にメルツに提案したのは他ならぬエリーザベト自身だ。分かっているはずだった。
 けれど、まさか自分も口にしてしまうなんて。
「エリーザベト? どうしたの?」
 胸やけがする。助けを求めるように視線を動かしても、周りにあるのは猫と肉塊ばかり。じわりと目尻に涙が浮かんだ。
「……や、やだっ、触らないで!」
 肩に伸ばされたメルツの手を咄嗟に振り払う。肉入りパイが彼から手渡されたものだと言う事も混乱を強くしていた。嫌々するように後ずさる。
「ひどいわ、なんてもの食べさせるの、私、猫みたいに狩りなんて恐ろしい事、しないのに――!」
 他にも勝手に言葉が出てきたが、錯乱して、何を言っているのか自分でもよく分からなかった。「ひどい」とか「汚い」とか単純な言葉を繰り返し、文章にもならない事を喚いていた気がする。とにかく怖くて堪らなかった。口も喉も腹の中も、泥を詰め込まれたように汚く感じられて仕方ない。
「エリーザベト……」
 メルツはそこで初めて、鳥に肉食を忌避している事を悟ったようだった。怪訝に見開かれている彼の目に理解の色が宿り、続いて、聞き分けのない子供を見るような哀れみと、侮辱された事に対する怒りのようなものが微かに混ざり、苦い戸惑いの表情になる。
 言い過ぎた、と気付いた時には遅かった。メルツの顔を見ていられなくなると同時に胃の底が波打ち、異質なものを吐き出そうと不穏な動きを見せる。暴力的な嘔吐感になす術はなく、エリーザベトはしゃがみこんで胃の中の物を吐き出した。精神的な衝撃からくるものだと思ったが、どうやら本当に身体が受け付けないようで指先に力が入らない。
「おい、どうした、腹下しか?」
「道のど真ん中で汚ねぇなー、脇でやれよ」
 ざわざわと猫の声が降る。メルツが背を擦ってくれたが、往来で醜態を見せてしまった恥ずかしさで、エリーザベトは反射的に逃げ出してしまった。早くここから立ち去りたい一心で、呼び止めるメルツの声も耳に入らない。気持ちの悪い汗が全身から吹き出て、身体が熱を持ったように重かった。


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