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私とアヴドゥルさんは空港の椅子に座っていた。
その目の前には‥‥。

「おまえなぁ45のオバンのくせしてなにがもんだ」

「ああ!いったわね。くすぐってやる!」

ジョースターさんと娘のホリィさんがじゃれあっている。
言わずと知れたシーンを目の前にしてああ、私トリップしたんだなと実感する。

「仲の良い親子だな」

「そうですねぇ」

アヴドゥルさんとそんなたわいもないお話で笑い合う。
そう、私は彼らと行動を共にすることになった。ジョースターさんの私へのお願いというのはこのことだった。なんでもスタンド使いの仲間を探してるなか、私が現れもしや‥‥と話を聞いてみることになったらしい。
そして私はスタンドを見ることができた。もちろん行動を共にすることにNOとは言わなかった。むしろ嬉しかった。

しかし実を言うと、スタンドは見ることはできるのだけど自分がどんなスタンドを持っているか、ましてや本当にスタンドを使えるのかどうか全く自信がなかった。
なので、二人には落下したのが原因で過去の記憶がない。自分がスタンド使いかも。分かるのは名前と自分が日本人ということだけだという話をした。
もちろんこれは嘘だ、記憶はある。しかし、流石にトリップのことは言うわけにはいかないのでこれが一番良い方法だった。

「でも‥‥良いんですか、アヴドゥルさん」

「何がだ?」

「確かに私はスタンドが見えます。でも自分がスタンドを使えるかも分からないんです。今でも。そんな私を仲間にして‥‥」

「いやいいんだ。スタンドが見えることだけでも珍しい。それに私たちの側にいればDIOの手から君を守ることもできるからな」

「すみません、ありがとうございます。」

そう、DIO。私がこの二人と行動することになった理由はそこにある。
二人はDIOの情報を集めるため、スタンド使いを仲間にしているのだ。
しかも、DIO本人もスタンド使いを探し、仲間にしている。それを阻止するためもあった。

「スタンドが見える以上、君も狙われる可能性があるからな。」

「はい。」

そんな話をしていた時。
パチンッとジョースターさんが指を鳴らした。それを合図に私とアヴドゥルさんは立ち上がる。

「行くか。」

「はい」

そう、これから私は出会うのだ。
この物語の主人公に‥‥!



‥‥と思ったんだけど。

「刑務所の前でお留守番ですか‥‥。」

せっかく承太郎VSアヴドゥルさんのあの名勝負が見れると思ったのに‥。
確かにまだスタンド使えるかも分からない私があの場にいてもはぁ?って感じだけどさ。

「今頃檻前でどんちゃんやってるのかなー」

そんなことを考えながら歩き出す。少しくらいなら散歩もいいだろう。
歩き進むと足元にコロコロと転がる空き缶を発見。なんだかむしゃくしゃしていた私は

「はぁーどっせい!」

勢いよくその空き缶を蹴り上げた。
‥‥ら、思いのほか遠くへ行ってしまい‥‥。

バコンッ!!と誰かに当たったような音がした。
‥‥‥やばい。

「ああああああああああ」

私は急いで音のした方に走る。
やばいやばいやばい。
ああ、当たったよね、今絶対当たったよね。どうか怖い人じゃありませんように!
そして少し走ったところに‥‥。

「あ!」

蹴り上げた空き缶を見つけた。
しかし‥‥なにかがおかしかった。

「なにこれ‥‥」

空き缶が不自然に形にひしゃげていた。
もはや原型がない。私が蹴り上げただけでは絶対にこうはならない。

「一体何が‥‥」

「これを蹴ったのは君かい?」

びくり。突然後ろから声をかけられる。
ドキドキしながら振り向くとそこには‥‥。

「え‥‥」

緑色の長ランに前髪が特徴的な赤い髪。分からないはずはなかった。
私の目の前には花京院 典明が立っていた。
ああああああああああッ!本物だああああッ!

「あ、あ、」

「質問に答えてくれかいか。これを蹴ったのは君かい?」

「あ、は、はい‥‥。すみません!お怪我はありせんか!」

一瞬驚きで我を忘れてしまったがすぐに深くお辞儀して謝った。
あの花京院に空き缶を当ててしまうとは‥‥殺される‥‥間違いなく‥‥ファンに!

「いや、当たってはいないよ。振り払ったからね。」

「そ、そうですか」

きっとハイエロファントグリーンで瞬時にそうしたのだろう。直撃してなかったことに安心する。
だが、彼の左指を見ると少し血が滲んでいた。

「ゆ、指、血が‥‥」

「血‥‥。本当だ」

「ご、ごめんなさい!今絆創膏を!」

そう言って私は彼の指に軽く触れ、絆創膏を貼った。
細くて白いうえスベスベやんけ羨ましいとか思ったのは秘密。

「‥‥‥。」

「これで大丈夫です。本当すみません」

「ああ。」

「それでは、私はこれで‥‥」

花京院のジト目を横目にすすーっと歩き去る。今の花京院は間違いなくDIOの手下の花京院だ。今下手に関わると生命の危機に値する。
花京院も私には興味ないようで、無言で私が過ぎ去るのを見ていた‥‥。








ないこがいなくなったあと。
花京院はないこに貼られた絆創膏を見つめていた。

「ハイエロファントグリーンで空き缶を払ったときにハイエロファントの指にプルタブが擦れたか‥‥」

そう呟きながら絆創膏を剥がす。
だかしかし。

「‥‥!?」

絆創膏を剥がした花京院の指にあるはずの傷がなかった。血もでていない。

「これは一体‥‥。」

花京院はないこが去って行った方向を見すえる。
その目はこれから起きることを察したような目だった‥‥。







ないこが刑務所前に戻るとそこには既にジョースターさんやアヴドゥルさんが待ち構えていた。

「おーい、ないこどこ行っとったんじゃい!」

「ジョ、ジョースターさん!すみません、もう戻ってたんですか」

「ああ。これから例の話をするから場所を変える。お前さんも来い。」

「はい。‥‥で、ですね‥あの‥‥」

さっきから視線が痛い‥‥。
チラッとその視線の方を見ると、この物語の主人公空条承太郎に思い切り睨まれていた。こ、怖い。

「おお、そうだった!承太郎、彼女はワシとアヴドゥルの知り合いの名賀ないこじゃ。ないこ、これがワシの孫の空条承太郎。」

「よ、よろしくお願いします」

「おい、おじいちゃんよ。まさかこのチビにも悪霊がついてるとか言わねぇよなぁ?」

「チビ!?」

た、確かに承太郎よりは小さいけど!初対面の人にそれはないんじゃ!?

「ないこすまんな。こいつはちと意地っ張りでな」

「ああ?」

「ゴホンッ。その通りだ、承太郎。しかしまだないこは見えるだけでスタンドは発現していない。しかし我々と共に行動してもらう理由は十分にあるんじゃ」

それを今から話に行く。
そういうことだと承太郎も察したのか一度舌打ちをしたあと黙って車に乗り込んだ。

私、これからうまくやっていけるのだろうか‥‥。
少し心配になったがホリィさんの笑顔に免じ全て水に流すことにし、私も車に乗り込む。
何故か左指が少し痛んだ気がした‥‥。



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mae ato
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