04


 人を尋ね歩き、お姫様と大蛇はようやく魔法使いに出会います。それは鷲鼻で腰の曲がった、醜い小男でした。
 ボロボロのローブを纏った魔法使いは、意地悪な笑顔を浮かべます。大蛇の呪いを解く為に、
 お姫様は魔法使いの家の召使いになることになりました。

 陽が昇る前に起きて、埃だらけの家を掃除し、魔法使いの食事を作ります。
 冷たい水で汚い風呂を磨き、家の周りに生えるトゲだらけの草を引き抜きます。
 眩い程に美しかった髪は、埃に塗れてくすんでいき、冷たい水やトゲを触る手は、あかぎれや切り傷で、
 ボロボロになっていきました。騎士は傷によく効く薬草を集めては、お姫様の手を毎晩手当していました。

 ある時。一向に呪いを解こうとする気配の無い魔法使いに、お姫様が尋ねました。

「いつ、呪いを解いてくれるの?」

 すると、魔法使いは答えました。

「綺麗な髪を、手に入れたらね」

 その夜、お姫様は丹念に入念に髪を洗いました。けれども、幾ら洗っても髪はくすんだままです。
 お姫様は悲しくなってきて、泣きそうになりました。すると、騎士が白い花束を持ってきて言いました。

「この花の油を使って洗いなさい」

 言われた通り、花の油を使って髪を洗うと、くすんでいた髪は黄金に輝き、
 まるで金糸のような手触りになりました。
 翌朝、魔法使いはお姫様の髪を欲しがりました。お姫様は迷うことなく、ナイフで髪を切り落とし、
 魔法使いに渡します。魔法使いはたいそう喜びましたが、呪いを解いてはくれません。

「いつ、呪いを解いてくれるの?」

 お姫様が尋ねると、魔法使いは答えました。

「銀の髪飾りが手に入ったらね」

 そう言った魔法使いは、髪を売りに行く為に家を出ました。
 お姫様は銀色の髪飾りを探しに行こうとします。しかし、魔法使いに言いつけられた仕事が、
 たくさん残っていました。お姫様は大蛇に手伝ってもらいながら、大急ぎで仕事を片付けると、
 町中を走り回り、銀の髪飾りを探しました。けれども、何処を探しても銀の髪飾りは一つも見つかりません。
 悲しさで泣いてしまうお姫様に、大蛇が言いました。

「私に任せて、あなたは家にお帰りなさい。あなたがいないことが知られたら、
魔法使いが怒ってしまいます」

 大蛇に言われて、大急ぎで家に戻ったお姫様は、魔法使いの夕食を作りました。
 泣きつかれて眠ってしまったお姫様は、翌日の朝。枕元に、銀の髪飾りが置かれていることに気付きます。
 小さな部屋の隅で、見張りをするように立っていた大蛇に尋ねると、大蛇は黙って微笑みました。

 その日。お姫様が髪に付けていた銀の髪飾りを、魔法使いはたいそう欲しがりました。
 お姫様は髪飾りを外すと、魔法使いに渡します。魔法使いは大喜びしていましたが、呪いを解いてはくれません。

「いつ、呪いを解いてくれるの?」

 お姫様が尋ねると、魔法使いは答えました。

「碧い宝石が手に入ったらね」




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