ここから見える残像とs3 | ナノ
BC

□ここから見える残像と
3ページ/6ページ






「ごめん」



風に乗せて、ぽつりとこぼした。




謝らずにはいられなかった。






「なんで?」




その問いに視線を上げると、彼は微かに笑って私を見ていて



その目は形だけは笑っているのに無表情で




でも、どこか悲しげで





目を合わせられるはずがない。







「気付かなかったから……」




逃げるように俯いて、




「私、自分のことしか見えてなかった……」



絞り出すように言葉を吐いた。





そんな私は、彼にはどう見えていたのだろう






自分の不甲斐なさに、腹が立つ。




自分のことしか考えないで



彼やみんなの存在に甘えて





キャリアが何、




大切な人も助けられず



仲間のことも考えられず






私に何ができた?






ただ自分の殻に閉じこもって




ただ自分の痛みに縋って







私は何をしていた?





私に何ができた?
















私は、






「シスネ」






いきなり、名前を呼ばれた。





顔を上げると、彼はその丘から、こちらに手を差し出していて






「え…?」





その延ばした手が何を意味するのか



訳がわからず動かないでいると、彼はすぐ側まで来て私の手を取った。





「言いたいことがあるんでしょう?」




そう言って、私の手を引いた。




突然のことで、彼が何をしようとしているのか理解できない


けれど、彼は私を丘へと引っ張っていて






「で、でも……っ」




その手に逆らい、丘の手前で踏み止まった。





まだ、


まだだ




まだいやだ







「どんな顔で立てばいいか─…」





そうだ、私なんかが立てるはずない。




助けられなかったのに、



救えなかったのに、




そこに立つ資格なんてあるはずがない。





私は頑としてそこから動かなかった。



動くことはできなかった。






そうやって頑なになっていると、彼は私の手を離した。




解放されたと思いきや、彼は私の後ろに回って、肩に手を載せた。




その手は支えようとしていたのか



それとも突き放そうとしていたのか






そして彼は、低く呟く。




まるで私の心を見透かすように。














「もう、充分なんじゃない?」









そしてそのまま、私を押し出す。






彼はそこで、数歩下がって






私は一人で、その丘の上に立たされた。









次へ
前へ
[戻る]
[TOPへ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -