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02就職?しました


床を磨き、棚を何時間もかけて整理する。
種類別に(中にはよく分からないものもあったが)スィンドルの商品を陳列して、ルナはほっと一息ついた。

(お腹、すいたな……)

一人になれる時間と自由を与えられた事で、張り詰めていた気持ちが少しだけ和らぎ、忘れかけていた欲が頭を掠める。
だが、スィンドルの性格もよく知らず口に出す勇気はとても起きはしなかった。
穏やかそうに見えても彼はディセプティコンなのだ。


『どうですかぁ?終わりましたぁ?』


軽い様子で聞こえた声に、走る緊張。座り込んでいた佇いを正し、ルナはパタパタと扉へ近付く。
短い機械音を立てて開く扉。彼女が現れたスィンドルに一礼すると、彼は満足そうに少しだけ目を細めた。


「どう…、でしょうか?」
『初めてにしては上出来です。後は追々、また説明しましょう。』


胸元のポケットを開いて、彼は綺麗にしたばかりの床に新たな武器を撒き散らす。ルナが呆気に取られ呆然とそれを見ていると、彼は最後に白いボトルを取り出した。


『今回、仕入れた商品と…後、これはキミに。補給剤のご褒美です。』


指先で摘むよう、スィンドルは彼女にそれを手渡す。
驚いてルナが目を見開くと、彼は軽く肩を竦めて明るくウインクして見せた。
要求は何も伝えていない。それなのに。手渡されたボトルは見た目よりもずしりと重くて持つ手が少しだけ震えてしまった。


「あり、がとう…ございます。あの、」
『私は商人ですからね。ギブ&テイクは当たり前です。まだまだ働いてもらうつもりですしねぇ。』


大きな指が頭を撫でる。
ルナがそれに安心したよう思わずほっと笑って見せると、今度はスィンドルが目を丸くする番だった。
礼を言って、遠慮がちにドリンクを飲む人間に何とも云えないふわりとした気持ちが芽生える。
広大な宇宙を長く渡り歩いているが、ひ弱な生き物にこんな感情を抱いた事はなかった気がする。


世界が少しだけ優しく見えた日

(美味しい、です…)
(それは良かったですねぇ)
―――――――――
2012 02 04

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